ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

21世紀の生物研究は、バイオロギングが切り開く。「野生動物は何を見ているのか―バイオロギング奮闘記 (キヤノン財団ライブラリー)」  

野生動物は何を見ているのか―バイオロギング奮闘記 (キヤノン財団ライブラリー)
佐藤 克文,青木 かがり,中村 乙水,渡辺 伸一



動物の移動・渡りは、大きな謎である。
それを解明するため、鳥類・魚類等では標識調査という手法が広まっている。
だが、標識調査は再捕獲を受動的に期待するものであり、装着した全個体の移動データがそのまま取得できるものではない。

そこで、ある程度の小型発信機を装着し、その電波を受信することで位置を特定するという手法が発展した。
大形動物(鳥類であればハクチョウ類やワシタカ類)では、GPSと人工衛星を用いた調査が行われており、
2012年にはハチクマ調査プロジェクト(http://hachi.sfc.keio.ac.jp/)で、リアルタイムの位置情報の共有までできた。
また、狭い範囲であれば、ラジオテレメトリーでの調査も可能である。

一方、携帯電話の発展に伴い、各種センサーとメモリの高性能化・小型化が進んだ。
カメラ、加速度センサーや明度センサー等は、今や誰もが知らないうちに活用している。

これを凝縮し、野生動物に装着して何とか回収すれば、装着中の行動データが入手できるのではないか。

こうした、現在の日進月歩の技術発展を背景に、
おそらく21世紀の動物調査の主流に成り得る調査方法が、バイオロギングである。

これまで本ブログでも、関連本をいくつか紹介してきた。
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いずれも劣らぬ楽しい本で、どこから読んでも新しい発見に満ちている。

だがしかし、前述のようにバイオロギングは日々進化しており、
対象動物も、そこから得た知見もどんどん蓄積・拡大を続けている。

本書はキャノン財団の支援を受けて実施した、様々なバイオロギング調査について、
その概要、成果、そして個々の研究者の苦労話等を紹介するもの。

先行書で記載されている話題もあるが、
よりコンパクトに整理されているし、もちろん、更に新しい話題も多い。
しかも本書では、ウミガメ、マンボウ、クジラ、オオミズナギドリ、チーターと、
様々な分類群・生活空間の動物を取り上げていることが大きな特徴だ。
おかげで、バイオロギングという手法が、単に海洋生物にしか用いることができないとか、
加速度しか記録できない等の誤解を避けることができる。

さらに、個々の研究者の苦労話-そして楽しい話は、
これから生物研究を目指したいと考える人々の良き指針となるだろう。

また、メディアミックスとして、本書収録テーマに関しては、
その成果である様々な映像がネット上で公開されている。
「野生動物は何を見ているのか」(YOUTUBE上のチャンネル)

例えば「オオミズナギドリがカタクチイワシを捕らえる瞬間」。

絶対に見るのが不可能だと思っていたアングルだ。

「カニを追いかけて食べるアカウミガメ」。

頑張れカメ、頑張れカニと手に汗握る攻防。

また、「ラスチックゴミを食べるアオウミガメ」。

環境保全でよく話題となるが、それを目の当たりにすると、つらい。
ただ本書で触れられているが、他の調査で、プラスチックゴミを喰うものの、
それが直接的に減少原因になっているわけではない、という。
(有害物質を吸収する可能性はもちろんあるが、ほとんど排泄されてしまう。)
むしろ、ゴミが減少原因と誤解することで、
真の減少原因を見過ごしかねないと指摘している。

さらに、深海で「クダクラゲ類を食べるマンボウ」。

クダクラゲという生物も知らなかったが、まして、それがマンボウにとって重要な餌となっているとは。

これらはほんの一端に過ぎず、
「見えないもの」を可視化するバイオロギングは、今後も大きな成果をもたらすことだろう。

本書を始め、継続して追いかけていきたい。

【目次】
1章 動物目線の理由
2章 浦島太郎の目線で調べるウミガメの生態
3章 冷たい深海でクラゲを食べるマンボウ
4章 樹に登らなくても飛べるオオミズナギドリ
5章 マッコウクジラの頭を狙え
6章 ブッシュに潜むチーターの狩り
7章 バイオロギングの未来

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category: 動物

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