ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

分類群の違いを明瞭に説明してくれる、極めて価値の高い一冊。「昆虫の誕生―一千万種への進化と分化 」  

昆虫の誕生―一千万種への進化と分化 (中公新書)
石川 良輔



普通の生活をしていると、生物の分類-、門・綱・目・科・属・種といったレベルを意識することは、
ほとんどない。

だが、生物を相手にした趣味に手を出し、
少し真面目に見ようとすると、こうした分類を意識するようになる。
むしろ、分類を意識することが、様々な種の「違い」について、より早く、より的確に把握し、
その類縁性を知るこテクニックと言える。

ただ問題は、哺乳類や爬虫類といった生物群(おおむね綱のレベル)ごとに、
それ以下のレベルに内包される種数のスケール感が、大きく異なることだ。

例えば現生の鳥類は、約9,000種。
一方、いわゆる昆虫と言われるグルーブになると、記載種だけで約80~90万種という。
それらの種数が目以下のレベルに分類されるため、
鳥類で馴染んだ目や属のスケール感は、そのまま昆虫には通用しない。

ただ上記のとおり、目・科・属の違いを知ることが識別の礎になるとすれば、
自分が興味がある種の分類群を的確に知ることは、非常に重要だ。

本書は、その期待に応える一冊。
刊行時点にいわゆる昆虫と呼ばれる範囲の全ての目について、
昆虫の進化史を辿りながら、
それぞれの目を隔てる進化上の形質を解説し、その系統関係を全て説明していく。

そうすると難しそうだが、
精細な図版と、昆虫の進化史を踏まえた系統順に解説することで、
Aという目とBという目の近縁性と断絶があるかを、非常に分かりやすく解説してくれる。

もちろん図鑑ではないから、この一冊で特定の種が識別できるようになるものではない。

だが、地球史上、おそらく最も成功した生物群である昆虫という分類群について、
的確に把握するには非常に重要な一冊であり、
これほどの本が新書として出版されていることに、日本の出版文化の豊かさを感じる。
(だが一方で、既に本書は絶版らしい。出版文化の衰退も感じるところだ。)

なお、刊行が1996年のため、2002年に新しく―何とガロアムシ目以来88年ぶり― に記載された、
マントファスマ目(カカトアルキ目)は収録されていない。

本書に収録するとすれば、著者はどのような解説を付してくれるのか。
残念ながら改訂版は望むべくもないが、
それでも、ここまでの成果を残しておいてくれたことは、幸せである。

【目次】
1 エントマから昆虫へ
2 昆虫という生きもの
3 昆虫の多様化

なお、マントファスマ目(カカトアルキ目)については、残念ながら一般向けの本は極めて少ない。
だが、子ども向けながら、
カカトアルキのなぞ―世紀の発見88年ぶりの新昆虫 (ドキュメント 地球のなかまたち)」(レビューはこちら)が、とてもわかりやすく、また楽しく紹介している。
おそらく日本で唯一、一般人が読めるマントファスマ目に関する本である。


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