ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

大地は、生物が創り上げた。「ヤマケイ新書 大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち」  

ヤマケイ新書 大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち
藤井 一至



過去から現在に至るまで、多種多様な生物が進化・絶滅してきた。
それらの生物は、大きく水棲・陸棲に区分できる。
そして、陸棲生物にとって、その最もベースとなるものは、文字通り「土」だ。
言うまでもなく、植物が生息しなければ、他の生物も生きていくことはできない。

だが、植物が生息可能な土とはどんなものであり、
そして植物が生息した結果、土がどのように変化するのか。
そうした観点で「土」を考えたことは、ほとんど無いと思う。

本書は、地球上に「土」という植物が生息することが可能な土が生成されてから現在に至るまで、
どのように土と植物が互いに影響しあって形成されてきたかを紐解くものだ。
さらに、「植物と土」という関係は、すなわち人類の農業にも直結する。

なかなか一般に語られることがない観点の話だけに、
一読することによって全貌を理解することは難しいかもしれない。
だが、酸性雨、熱帯雨林の伐採、アラル海の塩類集積、リンの欠乏など、
これからの人類を左右しかねない様々な「土」の問題について、
おそらく必須であるべき知識を提供してくれる一冊である。

本書の大きなポイントは、土の「酸性化」である。
酸性化が進んだ土壌では、もちろん植物が生育することは困難だ。
ところが、植物の生息そのものが、土壌の酸性化を進行させる。

自然状態-特に5億年という歴史において、植物による土の酸性化に対して、
植物自身がどう適応してきたか。
また、人類が「農業」という営みにおいて、いかに酸性化を回避してきたか。

例えば、
湿潤地では、水に恵まれるが、栄養分の流出等により土壌は酸性になる。
乾燥地は土が少ないものの、水によって栄養分が流出しないため、酸性化を避けられる。
これを踏まえて、乾燥地を選び酸性化を回避したのが灌漑農業であり、
湿潤地で行うのが焼畑農業や水田農業であった。
水と土の栄養分は両立せず、農業はそのトレードオフの関係の上に成立しているという本書の説明は、
人類史を理解するうえで、新たな(しかし必須の)視点と言えるだろう。

また、針葉樹や熱帯雨林で反映しているフタバガキの仲間は、
共生菌根菌により酸性土壌に適応していること(そのため、単なる植樹では森林伐採を回復することは困難である)。

また、石炭は、
3億年前に植物がリグニンを用いて強度を高め始めた時代、
リグニンを多く含む植物遺体を分解する微生物が進化するまで、
植物遺骸を分解できずに泥炭として蓄積していった結果であるということ。

そして、赤毛のアンの舞台であるプリンスエドワード島の土が赤い(アンも物語中で疑問に思っている)のは、
4億年前に南半球の赤道近くにあり、その頃生成された 「オキシソル」という土であること。

また、マツ林では、マツによる酸性物質によって生成された酸性の白い砂の漂泊層と、
同じく酸性物質によって溶けだしたアルミニウムや鉄が中和して集積した赤褐色の集積層により、
「ポドゾル土」が形成されること。

など、普通は意識することがない「土」の謎を知ることができる。

僕としては、
地球史の一時期だけ、石炭が蓄積される程に植物遺骸が堆積したのが不思議だったが、
本書によってその理由が理解できた。
また子供の頃、マツ林の下の土を掘っていたら白い粘土のようなものがあったが、
あれがもしかすると「ポドゾル土」の一部だったかもしれないと思い当たった。

そして同時に、いかに「土」に無頓着かを知らされた。

「土」には、まだまだ知るべきことが多い。
本書を手掛かりに、少しずつ広げてきたい。

【目次】
プロローグ 足元に広がる世界
第1章 土の来た道:逆境を乗り越えた植物たち
第2章 土が育む動物たち:微生物から恐竜まで
第3章 人と土の一万年
第4章 土の今とこれから:マーケットに揺れる土
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