ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

道端のコケに、話しかけてみたい。「苔の話―小さな植物の知られざる生態」  

苔の話―小さな植物の知られざる生態
秋山 弘之



野鳥に慣れてくると、街中もフィールドとなる。
街路樹くらいしかない舗装路でも、季節によればカラ類が飛来しているし、歩道脇のセイヨウツゲなどには冬にウグイスが入っていることすらある。
見上げればトビ、カラス類も通過するし、場所によればサギ類・カワウなども通過するだろう。
そんな野鳥とともに、どこにでもある生物が、コケだ。

これまでも、「苔とあるく」(レビューはこちら)や「コケの謎―ゲッチョ先生、コケを食う」(レビューはこちら)などを紹介している。

これらの本の中で、コケに興味を持つ人への基本的な一冊として紹介されているのが、本書である。
コケ植物の基本的な分類から始まり、様々なコケが持つ環境への適応力、
そして分布の特異性、日本文学での扱われ方などが紹介される。
さらに巻末には図鑑活用術、代表的な苔20選、苔庭ガイド、参考文献など、
これからコケを見ていこうという人の参考になる情報が掲載されている。
なるほど一冊の新書ながら、これだけで非常に多岐にわたるコケ知識が得られるだろう。

例えば、コケ植物は高等植物と比べて、隔離分布や広域分布する種が多いという。
隔離分布については、本当にそうなっている場合と、そもそも研究者が少ないとか見つけにくいとかの理由で、実際には分布していても発見されていないだけ、ということも有り得る。
ただ、コケ植物は「根」が無く個体そのものが小さいこと、そして胞子はさらに小さく軽いことから、鳥類や風による長距離散布が起こりやすいようだ。

また鳥といえば、コケを巣材に用いる野鳥も多い。
オオルリやカワガラスなんて、巣材がほぼ全てコケである。
こういう渓流の野鳥が巣材に用いるのはまあ納得できるが、
カラ類の産座に、コケ類の特定の一部(名前はよく分からない)が使われているのも見た事がある(よくあることだ)。

しかし、コケ類の「特定の一部」だけを集めるなんて大変な労力だろうから、
相当積極的な意味があると思うのだが、その理由が長らく分からなかった。

それに対して、本書では2点の理由が示唆されている。
まず、そもそもコケ類の特定の一部(本書によると、胞子体や菌糸束とのことだ)は、それほど珍しくないということ。
特定の環境を好むコケならかなり密生するし、これらの部位そのものも何十本も群生するため、逆に集めやすいという。

また、コケは抗菌作用があるという点。確かに湿り気のある場所に多く生えるが、コケ自身にはカビが生えにくい。
カビ防止まで意識しているかはわからないが、結果的に産座の衛生確保には役立っているのだろう。

こうした点等について、本書では小海途銀次郎氏の鳥の巣コレクションを題材として語られている。
小海途氏のコレクションは非常に資料性が高く、より詳しく知りたい方には
日本鳥の巣図鑑―小海途銀次郎コレクション (大阪市立自然史博物館叢書)」をお勧めする。
本ブログ開始前に入手しているためレビューはしていないが、
写真と詳しい解説が満載の、野鳥の巣に関する資料としては一級の本である。
なお、もちろん野鳥・雛・卵を勝手に捕獲・殺傷することは違法行為なので注意されたいが、
フィールドで野鳥の古巣、羽根、卵のかけらを見つけることもあるだろう。
その際に使える図鑑については、こちらの記事に紹介しているので参考にされたい。

さて、この他本書では、焚火跡のみに発生するヒョウタンゴケや、高濃度の銅が含まれる土壌に発生するホンモンジゴケ、窒素分を好むヤワラゼニゴケなど、特定の環境のみに生息するコケなども紹介されており、
「見てみたい」と思わせる話題が満載である。

コケに興味があるが、そもそもコケって何?という方に対して、総括的な知識を提供してくれる一冊。
新書かくあるべしという本である。

【目次】
第1章 コケ学事始め
第2章 おそるべき環境適応能力
第3章 苔はこんなに役に立つ
第4章 苔に親しむ

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