ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

「お皿の上の生物学」 目の前に、知識がある。  

お皿の上の生物学
小倉 明彦



「そう来たか!」というのが、書名を知った時の感想。
世の中に生物学関係の本は多く、また「楽しい」「身近」をウリとしたものも多い。
だが、「生物学」そのものを語るか、
フィールド体験から入るか、になりがちだ。

そこに、「お皿の上の」である。
目の前の料理、確かに動植物である。
ただ、そこから生物学に展開し、きちんとしたストーリーを作るとなると、かなり力技となるだろう。

本書は、大阪大学の新入生向けの「基礎セミナー」において、
実際に著者が行った講義をもとにしたもの。
全7講のうち、4講までが実際に行った講義録、
5~7講が予定稿を元に作成したもの。
実際には、実物(食品も含む)、写真、調理から試食のまでも含む講義とのことで、想像するだけで楽しそうである。
大学に入ってこんな講義に巡り会えば、「学問って身近で楽しいモノなんだ」と実感するだろう。羨ましい限りである。

さて、著者は神経生物学が専門とのことだが、各講義はその専門にとらわれず(基礎セミナーだし)、味覚・触覚・痛覚、臭いや味(旨み)、食材の色、調理による化学変化、食器の違い、そしてクリスマスケーキやお節料理など、多岐にわたる。
実際のところ、話が生物学の範疇にとどまる方が(たぶん)少なく、
研究史、発見史などの歴史や雑学・トリビアの域に入るものも少なくない。

しかし本来、「生物学」というカテゴリ自体が不自然なものだし、現在は特に学際的な視点が求められているわけだから、
むしろ学生に対しては、幅広い好奇心を刺激する方がいいだろう。
(と、高いトコロからの物言いになるが、僕ならそうしてほしい、ということである。)

細かくエピソードを紹介したいところだが、この本の場合、そうした蘊蓄展開こそが楽しみのツボなので、そんな野暮なことはしない。
ただ、様々なトピックについて、「生物学だから」と手を抜かず、
むしろ他書には見られない細かい情報が盛り込まれている。

また、講義の流れを途絶えさせないよう、重要な語句等には脚注があるし、別項に解説も立てられている。

さらに、最後の「科学論文の話」は、科学論文の書き方だけでなく、その受理・公表・評価を巡る諸問題、発表媒体や基礎研究費の実利・メジャー分野への偏向による弊害などを指摘しており、多くの方に読んでいただきたい。

著者には、「実況・料理生物学」という前著がある。
早速読みたい本リストに追加である。

【目次】
第1講 味の話
第2講 色の話
第3講 香りの話
第4講 温度の話
第5講 食器の話
第6講 宴会料理の話
第7講 季節の食品の話
第8講 論文の話
関連記事
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 動物

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://birdbookreading.blog.fc2.com/tb.php/604-24ec549e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

中の人

アクセス

RSSリンクの表示

最新記事

カレンダー

アクセスランキング

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム