ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

「米子水鳥公園の生態系と野鳥図鑑」人は、野鳥の楽園を創ることができる。  

米子水鳥公園の生態系と野鳥図鑑
中海水鳥国際交流基金財団



夕闇が迫る頃、次々と暗い空を彼方から近づく数々の影。
コハクチョウだ。
大きな水音を立てながら、月明かりに照らされた水面に次々と舞い降りる群れ。
しきり鳴き声が聞こえてくるのは、仲間を確認しているのだろうか。

また、早朝。
コハクチョウとカモ類の鳴き声しか聴こえない場所。
陽がぼ昇れば、コハクチョウは採餌のために一時、水鳥公園を離れる。
それでも、園内にはまだ多数のコハクチョウやカモ類が残っていて、
穏やかな水面のあちこちに浮かんでいる。

米子水鳥公園は、中海の干拓事業を実施する過程に作られた彦名干拓の一部を米子市が買い取り、
水鳥のサンクチュアリとして残したものだ。
水鳥公園を作ろうという時、実際に建築する過程、そして現在の運営に至るまで、
米子市民の方々の熱意によって支えられてきた、まさに市民による水鳥公園。
園内の一部を野鳥の楽園として立ち入り禁止にしておく一方、
水鳥が過ごしやすく、また観察もしやすいというバランスを保つために、
園のスタッフの皆さん、そしてボランティアの方々が、毎年尽力されている。
そのおかげで、いつ訪ねても気持ちの良い空間が保たれている。

後述するとおり、僕も個人的にとても馴染みが深い場所なので、ぜひ本書を多くの方に手に取り、
この素晴らしい公園を知っていただきたい。

その水鳥公園が、先日、開園20周年を迎えた。
本書はそれにあわせて、水鳥公園で過去に記録された野鳥を紹介するとともに、水鳥公園の楽しみ方や歴史を紹介するガイドブック。
各種については全長や鳴き声などの図鑑的な記載もあるものの、詳細な識別は掲載されていない。
だが、それが難点というわけではなく、
それぞれに付された、「水鳥公園ではどんな存在か」という説明が、やはり有り難い。
水鳥公園で見られる時期や頻度、そして特筆すべき行動など、
これらの事実は、常に水鳥公園で野鳥を見ているスタッフの皆さんならではの記述。
おかげで、水鳥公園の20年の鳥史を追体験できるというものだ。

確かに、図鑑というよりむしろ記念誌的な内容のため、
万人に役立つというものではない。
だが、米子水鳥公園という誇るべき野鳥の楽園を創り、維持してきた人々にとって、
輝かしい通過点として本書は残るだろう。

ところで、僕は鳥類標識調査(バンディング)の修行のため、
一時期、2週間に1回くらいのペースで米子水鳥公園に通ったことがある。
そんなに高頻度でもなさそうだが、香川県から鳥取県まで通っていたので、
瀬戸大橋の通行料で使用済みのハイウェイカード(懐かしいですね)がトランプのように溜まっていた。
金曜日の深夜に出発し、2日間日の出とともにバンディングの手伝いを開始して、日曜の深夜に帰るというプランだった。
大変だったが、野鳥まみれの生活と、熱意溢れる米子の諸先輩方のお話が、今の自分の基礎になったと思う。
振り返ってみれば、もう20年(!)近く前の話であり、しかも、もう10年くらい米子に行けていない。
初心を振り返るために、また近いうちに行きたいものだが…。

米子水鳥公園ブログをみると、
今冬も、賑やかで、楽しい冬になりそうである。

高速道路が雪だらけにならないうちに、僕の代わりに、ぜひ、訪れていただきたい。


【目次】
春のおすすめ野鳥
夏のおすすめ野鳥
秋のおすすめ野鳥
冬のおすすめ野鳥
What is汽水湖?―淡水と海水が混ざるふしぎな湖
渡り鳥のナゾ―水鳥公園にやってくる鳥たちのヒミツ
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category: 野鳥

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2015/11/12 15:32 | edit

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