ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

「白河天体観測所: 日本中に星の美しさを伝えた、藤井旭と星仲間たちの天文台」今夜は、星空を見上げよう。  

白河天体観測所: 日本中に星の美しさを伝えた、藤井旭と星仲間たちの天文台
藤井 旭



冬に星空を見上げるのが好きだ。
肌に感じる冷気に耐えながら、仰ぎ見る星々。
中学生の頃、夜にこっそり窓を開けて月と星を見ていた。
自分が 何者なのか、どんな人生を歩むのか。漠然とした不安と期待を抱きながら、
変わらない星空をただ見ていた。

あれから数十年(!)が経ってしまった。
結局個々の星の名前も位置も覚えられなかった。
反射望遠鏡も、結婚を機に捨ててしまった。
星座にまつわるギリシャ神話も忘れてしまった。

だが、それでも星空を見上げるのは、やはり好きだ。

本書は、その星に魅せられた人々(特に著者、藤井旭氏を中心とした人々)によって作られた、
私設の共同天文台、「白河天体観測所」の物語だ。

白河天体観測所は、1969年に星仲間によって作られた。
観測はもとより、この観測所に集った星仲間たち(という言葉がぴったりだと思う)は、
自ら星を楽しみ、そして日本中の人々に星の魅力を伝えた。
その中心にいたのは、同天文台の台長チロ。精悍な顔立ちのアイヌ犬だ。

人里離れた土地に、手作りの天文台。
皆で囲む鍋、夜空、様々な事件と笑い話。
隕石探し、日本中の星仲間が集うイベント、「星空の招待」などなど、
本書には、星を中心とした人々の喜びと夢が詰まっている。

全国の星仲間に愛された天文台長チロ。
幾葉も掲載された写真、スナップ写真も集合写真もあるけれど、
その中にはいつもチロの姿がある。

星に魅せられた人々が、自ら作り上げた私設天文台。
その所長、チロ。
まるで夢物語のような白河天体観測所の歴史は、しかし時の流れと、東日本大震災による幕を閉じることになった。

本書は、白河天体観測所とチロを誰よりも深く知る藤井氏による物語。
他の誰にも成し得ない、そして二度と得られない夢のような時代の物語が、この一冊に詰まっている。

星に興味がある人はもとより、
むしろ、星に何にも興味が無い人にこそ、本書を読んでいただきたい。
そして、夜空を見上げるきっかけになればと思う。
誰の心にも、僕の心にも「白河天体観測所」を建てることができる。

近年、殺伐とした本が多い中で、これほど爽やかな本は滅多にない。

なお、藤井旭氏といえば、星をかじったとも言えない程度の僕だが、
星雲・星団ガイドブック―小型カメラと小望遠鏡による星雲・星団の観測 (1971年)」という本を持っていた記憶がある。
星雲星団ガイドブック
もちろん白黒写真だし、画像も粗かった(なんせ1971年刊行ですから)けれども、「星雲」という存在の魅力を感じるのに十分な一冊だった。

あと、本書は「星になったチロ―犬の天文台長」をベースにしているものの、
児童向けだった同書に比べて、文章の細かさ、また新しいエピソードなども追加されている。
以前「星になったチロ―犬の天文台長 」を読んだ方も、ぜひ手に取っていただきたい。


なお、なかなか忙しくて夜空を見られない方は、ぜひこちらのブログ、「星と写真の部屋」をどうぞ。


【目次】
まずは、私ごとから少々…
白河天体観測所をつくる
犬の天文台長さん
観測所日誌から(冬)
観測所日誌から(春)
観測所日誌から(夏)
観測所日誌から(秋)
隕石さがし異聞
白河天体歓食所のお楽しみ「アストロ鍋」
真夜中の訪問者たち(三田誠広/星新一/津島佑子)
チロの星まつり星空への招待
チロ望遠鏡づくり
一九八六年のハレー彗星
日本ハレー協会同窓会
南十字輝くチロ天文台
チロ天文台長の宇宙遊泳
あゝ、東日本大震災
ああ、楽しかったの五十年

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