ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

「ゼロからトースターを作ってみた」何でもやってみよう!!  

ゼロからトースターを作ってみた
トーマス・トウェイツ



ちょっと見回してみる。
目の前のPC、TV、iPhone。
電子機器以外だと、電子レンジや電気ケトルなど、日々の生活で利用する工業製品は、極めて多い。
妄想族としては、仮に文明が崩壊した場合、
残った人々で同じ文明レベルを復活させられるのか、つい考えてしまう。

おそらく、現在のような教育システムと、工業的な現場がなければ、ゼロから現在の文明を復活させることは難しいだろう。

そういう思考はたまに行うにしても、実際にチャレンジするかというと、別である。

著者は、大学院の学位取得のためのプロジェクトとして、全くのゼロからトースターを作ることに決めた。

トースターである。考えてみれば、電気でモノを焼くという極めてシンプルな工業製品だから、
何とかなるんじゃないかという気もしてくる。

その期待を胸に、著者が費やしたのは9ヶ月、3060kmの移動、約15万円。

まず、市販の最も安いトースターを分解してみたが、様々な金属・高分子化合物があり、
原材料をそのまま再現することは不可能だという事実に直面する。入り口で敗北。

そこで、市販品の再現ではなく、
最もシンプルなトースターを作ることを目標として、用いる材料を鉄、マイカ、プラスチック、銅に絞る。
たった4種類だ。
だが、これを得てトースターの部品にするために、恐ろしい難題が立ちはだかる。
鉄や銅は鉄鉱石、プラスチックは原油が必要。
また、精製に大がかりなプラントが必要。
そこを著者は様々な工夫(とちょっとした脱線)で、解決していく。
電子レンジを破壊したり、
ごく一般的な施設(駐車場や裏庭)で溶鉱炉を再現したりする。

中々考えさせられる話もある。
鉄の精製において、最も役だったのは16世紀の技術書、「デ・レ・メタリカ」。
人の手で精製しようとすると、ここまで遡る必要があるということだ。
すなわち、以降の技術革新は、一個人で再現できるものではない。

また、鉄や銅の鉱石についても、既に良質なものは採掘され尽していて、
人の手で精製することが可能なものはほとんど無いという。

振り返れば、高度に工業化された現在の科学文明の恩恵にどっぷり浸かっているが、
それは全て、僕個人の手で再現することはできない。
それほど複雑化された技術の先で生活しているというのは、考えてみれば、ものすごく危うい状況ではないだろうか。

そんな心配もあるが、それはさておき、
工業時代の心ときめくチャレンジとして、本書を純粋に楽しむこともできる。
カラー写真が満載だが、前述した駐車場での溶鉱炉(ちっちゃい)、
電子レンジの中で輝く溶けて鉄、
ボロボロになった植物性(元はジャガイモ)プラスチックなどなど、
多分二度と見られないファンキーな写真ばかり。
文庫化もされたようだが、大した差はないだろうし、
ぜひ元版でお楽しみいただきたい。

【目次】
まえがき
第1章 解体
第2章 鉄
第3章 マイカ
第4章 プラスチック
第5章 銅
第6章 ニッケル
第7章 組み立て
エピローグ 「ハロージャパン」
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