ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

「昆虫はもっとすごい」踏み込んで見ることの面白さ。  

昆虫はもっとすごい (光文社新書)
丸山 宗利,養老 孟司,中瀬 悠太



昆虫はすごい 」(レビューはこちら)の著者である丸山氏、虫でお馴染み養老氏、そしてネジレバネという不可思議な生態をもつ虫の専門家である中瀬氏による鼎談。
昆虫はすごい」のように客観的な昆虫の生態紹介ではなく、「虫好き」による昆虫放談という趣であり、話題は昆虫そのものから虫屋の生態にまで展開する。そこが、面白い。

例えば寄生性昆虫。
共生は長らく注目されていたテーマだが、寄生はあまり盛り上がっていないという点について、
「寄生性の昆虫は食物連鎖のピラミッドのなかでの位置を定めにくい」という指摘がなされる。

また、アリやハチの幼虫には脚がないが(本書で指摘されるまで、僕は意識していなかった!)、
ハチは進化史において、まず寄生性のハチが進化。
その時に幼虫が昆虫の体内を食い荒らすようになり、幼虫は不要な足を失った(退化した)。
その後、寄生しないハチが進化したが、幼虫が足を取り戻すことはなかった。
そのため、現生のハチ、そこから進化したアリも、幼虫は足がないという話は、初めて知った。

バイオミメティクスに関連して。
ハネカクシは、何十回も細かく折り畳む必要があるが、ほかの昆虫より早く羽根を畳む。また、広げるのも早い。
普通の昆虫は左右の翅をそれぞれ畳むが、ハネカクシは両方を重ねて2枚同時に畳む。
ただ、昆虫は何十年も生きる前提の仕組みでないため、耐久性が課題である。

分布に関連して。
ヒゲボソゾウムシは、元々いた木から動かない。
鳥取の大山にはキュウシュウヒゲボソゾウムシがいるが、ある旅館の前のソメイヨシノにしかおらず、
これは九州の造園業者が持ち込んだものと思われる。
こうした樹木に移動に伴う昆虫の分布変化も多く、東京の野鳥公園には沖縄に生息するリュウキュウツヤハナムグリが大量にいるらしい。

虫屋に関連して。
虫好きだが標本作りをしたことがないという人が爆発的に増えている。
蝶屋はまんべんなく、どの年代にもいるイメージ。インターネットの影響をあまり受けず、増えもせず、減りもせず、いつの時代も常に同じ文化が流れている。
ヨーロッパでは、チェコとスロバキアが圧倒的に虫屋が多い。

など、他書で見ることがない話題が満載であった。
最近、40歳過ぎになった昆虫採集を真面目に始めたのだが、
昆虫標本用の針や台紙がチェコ製(Ento Sphinxという会社)で、なぜこの国なんだろうと不思議だったのが、氷解した。

最後に、養老氏の指摘として、

明治維新のとき、日本は「科学を日本語でやる」という前提をどんと置いたんだよね。この考え方は世界的に見てもちょっと変わっていて、アジア全体でも日本くらいなんじゃないかな。

という点は、初めて気づかされた点だった。

なるほど、解体新書に見られるように、西洋科学を日本語で行うという方法は、生まれながらの思考回路で科学技術を論じることができるという点で、日本の科学技術の発展に大きく寄与したと思う。

ただ、それが逆に、世界から孤立するという結果も招いている。
いかに日本的なサイエンスを維持しつつ、世界とのバランスをとっていくかは今後も大きな課題であり続けるだろう。

本書は、昆虫という範疇に収まらず、多岐にわたって思考を展開させてくれる、
刺激に満ちた一冊である。
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