ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

「古代道路の謎―-奈良時代の巨大国家プロジェクト」あなたの街にも、きっとある。  

古代道路の謎―-奈良時代の巨大国家プロジェクト(祥伝社新書316)
近江 俊秀



モノにしろ、システムにしろ、
自分が生きている時代こそ、最適化されたものだと思いがちである。

もう少し言葉を足すと、
人はつい、昔は不便・煩雑(はず)で、
それを最適化してきたのが人類の歴史であり、その結果が現代だという感覚である。

だが、実際はそんなに簡単ではない。
技術一つとっても、手作業でしかなしえない精緻な技法があり、
それが失われることは多々ある。それが最適化とは言えない。

むしろ、時代は、その時点に存在するシステム・技術・思想にあわせて最適化されているのに過ぎない。
その結果、一見、
最適化されたはずの現代では理解できない事象を残すことがある。
例えば、ピラミッド、マチュ・ピチュの石組みなどだ。
それに出会ったとき、僕たちは「あり得ない」と否定するか、
「古代の奇跡」として祭り上げる。

本書は、そうした日本における「古代の奇跡」、
しかもほとんど知られていない、奈良時代の古代道路を紹介する。

その規模は、おそらく総延長6300km、道幅9m。
自然の起伏や地面の状況を無視し、できるかぎり直線的に築かれたという。

もちろん当初、これほど巨大な道路網は有りえないと考えられていた。
江戸時代の五街道ですら幅3.6m、道は自然にあわせて屈曲する。
人間の技術とシステムは右肩上がりに向上しているという先入観とあわせて、
遥か古代の律令国家の時代に、江戸時代を超える規模の道路は必要なく、
またそのような道路を作ることも不可能だと考えれてきた。

だが、道の遺構は、確かにある。
この道の特徴は、「都と地方を結ぶ全国的な道路網であり、その路線計画にあたっては、直線性が強く志向されている」ことにある。

この道を、「駅路」という。律令国家が成立するにあたり、
都と地方を直結するシステムを確立するための道だった。

「延喜式」では、全国に402の駅家(中間地点において、使者の「駅使」が休憩・宿泊し、乗る馬「駅馬」を飼っていた)があった。
駅家は30里(約16km)ごとにおかれ、大路では馬20匹、中路では馬10匹、小路では馬5匹を飼っていた。

正式な駅使は「駅鈴」という鈴を持ち、この駅路を往来していたという。
(ちなみに「駅鈴」は、隠岐国造の末裔の隠岐家に2口現存している。)

これほどの施設を建造・維持するのには相当な「力」(権力及び労力)が必要だったはずだ。
それこそが、日本で初めて成立した律令国家の威信・力の凄さを示している。

だが、この道を作り、維持するのは地元住民の仕事だった。
また都への税を納める際にも、この果てしない道を歩み続けたという。
しかも、1日に最低約20kmは進むよう規定されていたのだ。

こうした過度の中央集権化は、都の求心力が強い時期には有効である。
だが、都の威信が低下し、各地方の有力者が力をつけるにつれて、徐々に駅路は縮小されていく。

この失われた道路は、日本における律令国家の興亡の証拠なのである。
本書18-19ページには、日本各地に張り巡られされた駅路が記されている。
九州から東北地方まで、どの県にも存在している。
ぜひ、自身の地での駅路を調べていただきたい。
(例えば広島県府中市には、その名も「駅家」という地名がある。)

【目次】
第一章 古代道路とは何か
第二章 なぜ、造られたのか
第三章 奈良時代の交通制度
第四章 古代道路の工法
第五章 地図から読む古代道路
第六章 現代によみがえった景観
第七章 古代道路の見つけかた
第八章 廃絶の謎

▼同著者による、律令国家による道路以外も含めた入門書(レビューはこちら)


▼葛城氏については、「謎の古代豪族 葛城氏(祥伝社新書326)」(レビューはこちら)に詳しく、これを踏まえて本章を読むと更に楽しめる。

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category: 歴史

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「信ずる道を心に決めたままに五十年」、
僕には未だ及ばない境地ですが、
少しずつでも歩み続けたいと思います。
今後もよろしくお願いいたします。

BIRD READER #- | URL
2015/12/14 20:48 | edit

こんにちは

はじめまして!あるブログを拝見していたら、このブログに出会いました。私もブログを開設しています。「鬼藤千春の小説・短歌」で検索できます。一度訪問してみて下さい。よろしくお願い致します。

鬼藤千春の小説・短歌 #g.qUwJtQ | URL
2015/12/14 08:20 | edit

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