ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

これほど美しい姿を知らなかったとは…。「トビウオの驚くべき世界」  

トビウオの驚くべき世界
スティーブ・N・G・ハウエル



トビウオと言うと、寿司ネタの「とびこ」とか、「あご」という別名が用いられる「あごだし」、「あごちくわ」など、
食材としての印象が強い(僕だけか?)。

このため、「透明で大きなヒレ(以降はあえて「羽」と呼びたい)をもった青魚」というイメージしかなかったのだが、
いや、これほど美しい生きものだったとは知らなかった。

本書は、バードウォッチング・ツアー会社の幹部が、海洋でのツアー中に出会ったトビウオを識別・記録したものかに始まった一冊である。
そのため、収録されている写真はほぼ全て生きた個体。大きな翼を広げ、海面を飛ぶ姿は魅力に溢れている。
生命に満ちた姿というか、本当のトビウオを全く知らなかったのだなと痛感した。

その美しさが、なぜ一般に知られていないのか。

トビウオは世界に60~70種程度、現在は7属に分類されている。
種によっては「スマーフ」と呼ばれる稚魚段階、未成魚、成魚の変化が大きく、同じ種とは思えない場合もある。
さらに、実はその羽には美しい模様やストライプがある。
つまり、種や齢によって、様々なバリエーションがあるのだ。
ところが死んでしまうとその色は失われ、さらに標本化の過程でも色素が失われる。
僕らは色褪せた個体しか見ていないし、また一般的図鑑も、こうした標本がベースとなっているため、
どうしてもその魅力は伝わらず、しかも種の識別は難しくなってしまう。

本書はその点は達観していて、実際に船上から見た特徴で呼称を決め(例えば羽がラズベリー色のは「ビッグ・ラズベリー」など)、この呼称で統一している。
そのため、帯にあるような「図鑑」という使い方は、一切できない。

だがその一方で、トビウオを「楽しむ」には、今のところこの方法がベストだろうと思う。
何しろ正式な図鑑の場合、色も形も(死ぬと羽の開き方も異なる)生きている時とは全く違うのだから、役に立たない。

さて、生きたトビウオについて初めて知ったのが、まず2枚羽と4枚羽があること(写真をいくつか見ていたはずなのに、意識していなかった)。

2枚羽は前羽(胸びれ)が発達、4枚羽は後羽(腹びれ)も大きい。
7種前後で、Exocoetus属(イダテントビウオ属)またはFodiator属に属している。
時速32~64kmで、15m以上の滑空が可能。滞空時間は2~3秒という。

一方、より飛行に適応したのが4枚羽だ。
4枚羽はHirundichtys属(ニノジトビウオ属)、Prognichthys属(ダルマトビウオ属)、Cheilopogon属(ツクシトビウオ属)、Cypselurus属(ハマトビウオ属)。
1回の飛行中、尾びれで水面を叩いて再滑翔するため、長く飛び続ける。
記録された最長飛距離(途中で再滑翔する)は600m。時速も70kmに達するという。
滞空時間の最長記録は、鹿児島沖合のフェリーで撮影されたもので、45秒とのこと。
まさに、「飛ぶ」という世界だ。

トビウオは陸地に近い沿岸部に多いというが、実際のところ、普通の生活をしていて飛翔に出会うのは有り得なさそうだ。
そうすると、僕らはいつまでも「あごだし」「とびこ」としてしか、この魅力あふれる生きものを知ることができない。

「何ともったいないことだ」と、そう思わせる魅力が、本書に詰まっている。

図鑑としては使えないけれども、実際のところ、図鑑が必要になるシチュエーションは、たぶんない。
だから、存分に本書で美しい姿を楽しんでほしい。

なお、本書でも紹介されているが、本書の元になったツアー時のトビウオ写真と照会が、ネット上で公開されている。
Offshore Wildlife
このうち、トビウオについては、このページA Working Guide to Flyingfish of the Western Pacific Odyssey.」に掲載されている。
(トップページ→articles→A Working Guide to Flyingfish of the Western Pacific Odyssey.のリンクは切れているため、辿れない。)

最下行のPDFが、写真資料。最初の1枚目の写真だけで、もうトビウオの美しさ全開である。
PacificOdysseySNGHetal..pdf

【目次】
01 トビウオはどんな生き物なのだろう?
02 トビウオに会える場所
03 トビウオの種類
04 トビウオの大きさ
05 トビウオはどうやって飛ぶのだろう?
06 トビウオはなぜ飛ぶのだろう?
07 トビウオの色
08 トビウオの見分け方
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category: 魚類

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