ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

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昆布のこと、全て分かります。「昆布と日本人 (日経プレミアシリーズ)」お勧めの一冊!!  

昆布と日本人 (日経プレミアシリーズ)
奥井 隆



最初に記しておくが、本書はアタリである。何か良い本はないかなと探している方は、ぜひ。

昆布。
日本人には極めて馴染み深い食材である。出汁も取り、昆布巻きにし。
ちなみに我がうどん県では、昆布の天麩羅がトッピングにあるうどん店も少なくない。

だが、その昆布について何を知っているのか。
日本人にとって、昆布はいかなる食材だったのか。
そして、昆布の流通を支える商人は、いかなる人たちなのか。
さらに、昆布にはいかなる種類があり、どう調理すべきか。

こうした日本人が知るべき(そして知らない)事実を、創業140年を誇る昆布商の主人が自ら紹介してくれるのである。
これが面白くないわけがない。

本書大きく6章で構成される。

【目次】
第1章 昆布が礎となった日本の近代化
第2章 昆布商の140年
第3章 昆布とワインの意外な共通点
第4章 永平寺の御昆布司
第5章 母乳と同じ「うま味」がある
第6章 世界の美食の舞台へ

まず第1章。
「続日本紀」(797年)において、蝦夷地から朝廷に献上していることが記述されている昆布。
江戸時代初期にはまだ贅沢品、ハレの食物だったが、
北前船の発達により日常的な食材に変化する。

「北前船」は学校でも習うが、なぜ日本海側の福井県周辺で発達したのか?
その答えも紹介されている。

江戸時代、松前藩は米が作れないため、現金を得るために近江商人に漁場の権利を売り、金を得ていた。
(近江商人は全国に販売ネットワークを作り、蝦夷地にも進出していた。)
そして近江商人が、蝦夷地の海産物を運ぶために開発したのが北前船。
近江に港が無いため、隣国の若狭の小浜、敦賀港を活用した。
特に敦賀港は、大きく深い天然の良港であり、例えば1664年には、2670艘の船が出入りしたという。
また、品物筋(俵物、鉄、銅、材木等)と地域筋(津軽筋、秋田筋、薩摩筋等)など、90軒の問屋があり、全国に商圏をもっていた。

そして、そこから「昆布ロード」が生まれる。
昆布ロードとは、蝦夷地(北海道)で収穫された昆布が、日本海側から京都・大阪へ、それが薩摩・琉球を経て清(中国)まで届けられていたというルートのことだ。

実は薩摩藩が昆布を取り扱うようになったのも、密かな目論見があった。
当時中国内陸部では慢性的にヨウ素が不足し、甲状腺を患う人が多く、ヨード、カリウム、カルシウムに富む昆布の需要が高かった。
そこに眼をつけた薩摩藩は、昆布を密貿易することにする。
そこで眼をつめたのが、富山の薬売り。富山の薬売りは全国を22ブロックに分けて販売ネットワークを持っており、その内の「薩摩組」が薩摩藩内で営業する見返りとして、昆布の提供を要求した。
一方、富山の薬売りは、薩摩での密貿易により薬種を得ることができたので、Win-Winであったのだ。
こうして密貿易の主役は昆布となり(積み荷の80%以上が昆布だったという)、その収益が討幕の財源にもなったという。

第2章。では、その昆布とはどんな食材なのか。
昆布は14属45種、日本人が食用にしているのは10種程度である。
2年で成長するが、1年目は「水昆布」と呼ばれ、だしも出ないので収穫されない。
2年目の夏に収穫。8月の旧盆までに収穫するものが最もよく、「走り」と呼ぶ。
それ以降は「后採れ」(ごどれ)。厚く黒々としているので良さそうに見えるが、ぬめりが強く、アクが出やすい。

自然食材ゆえ、年、浜によって味が異なり、さながらワイン同様である。

乾燥は、浜に砂利を敷き詰めた「干場」に干す。2時間ごとに昆布を少しずつ移動させ、また裏返す。
昆布を収穫したその日に乾燥させる必要がある。
この大きな手間のために、最近は機械乾燥が多いらしい。

だが、天日乾燥すると昆布の中に適度な水分が残り、表面に白いもの(マンニット)が生じる。
これは糖分と海水の塩分が作用して生じるうま味の一つと言われているが、
機械乾燥だと黒々とするものの、マンニットは生じにくいそうだ。
そう言われると、店舗にある安い昆布は、黒いぞ。

しかも、熟成することにより、昆布は旨味を増す。
それを「蔵囲昆布」と言い、敦賀では、もともと蔵で熟成させる伝統があったという。
だが熟成(乾燥)により重さは減り、扱い方によってはカビが生えるため、商品価値を高めるためのリスクが多く、
近年は避けられている。
だが著者の店では1992年に復活させ、1989年から現在までの全てを残しているとのことだ。

ここまでで、本書の前半である。
後半には商人としての矜持の話、永平寺との関わり、旨味の話など、興味深い章が続いている。

古臭い食材と見がちだが、日本の食事からは欠かせない昆布。
もっと良く知るために、本書は必読である。中学生の課題図書にしても良いくらい。

なお、著者の店「奥井海生堂」のホームページはこちら。http://www.konbu.jp/
アドレスがkonbu.jpなんて、もう惚れ惚れするくらい潔い。
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