ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

熱意は、伝わる。「ハーバード白熱日本史教室」  

ハーバード白熱日本史教室
北川 智子



「白熱◯◯教室」というのが流行りであり、正直そういうタイトルには二匹目のドジョウ狙いが多いので、
基本的に避けている。
ただ、本書は先に妻が読了し、薦められたもの。結論から言うと、一読の価値はあった。

著者は、実際にハーバード大学で日本史講座を開講している方。女性である。
そして本書は、高校で理数科を専攻していた著者が、なぜかカナダの大学院で日本史を専攻することになり、
そしてハーバード大学で講座を持ち、
マイナー分野だった日本史講座を、200人を超える(本書時点)人気講座にまでした日々の記録だ。

本書は、主に三つの軸から読む価値がある。

まず1つ。当然ながら、一介の高校生が、ハーバード大学で教えるに至るまでのストーリー。
もちろん誰でもなれるものでもない。
本書でも、「博士号取得候補生」になるための大学院時代のカリキュラム、試験が紹介されているが、
恐ろしいばかりである。
これを実践するには、知力もさることながら、相当な体力が必要だろう。
アメリカ等の博士や教授が無暗にエネルギッシュだと感じていたが、そうでなければ、そもそも生き残っていないのだろう。

2つめ。著者が提起する、「レディ・サムライ」という日本史上の視点。
武士、サムライといった存在は、暗黙の裡に男性となっているが、
では、女性は妻、母という存在でしかなかったのか。
いや、実は当時の女性の中には、「レディ・サムライ」というべき、公的な役割と影響力があつたのだというのが、
著者の講座の視点である(と、僕は解した。また上記紹介もあまりにも簡単なので、ポイントがずれている可能性もある)。

逆説の日本史」も話題となったが、歴史は単なる事実の積み上がりではなく、全て意味と繋がりがある。
そして、うまく歴史を貫く視点-例えば「逆説の日本史」における「怨霊」とか、本書のような「レディ・サムライ」など-を得れば、その視点から歴史を「理解する」ことが可能になる。
それが歴史に学ぶということだと、僕は思う。

3つめ。ハーバード大学の受講システムや講義・教師評価システムと、著者の講座の工夫。
日本の大学ではたぶんまだ導入されていない(だろう)が。
アメリカの大学では、学期末に学生が教師を評価する。
5段階評価。ハーバード大学では、総合的な評価、使われた資料の適正さ、宿題、教師や助手からのフィードバック、講義以外の対応の5分野。そして、他人に薦めるかどうか。
この評価を集計し、公表することで、次年度の学生が講義を選ぶかが決まる。
つまるところ、くだらない講義だと学生は減っていくのである。
良いシステムだ。
だから、日本もかくあるべしと言いたいところだが、ちょっとそうは言えない。
このシステムは、「学ぶ意欲のある学生」が評価するところがミソであって、「楽をしたい大学生」が多いと意味がなくなる。
日本の学生が、きちんとこの評価を行う責任に向き合えるかというと、疑問である。

こうしたシステムでも高評価を得るのは、著者の様々な講義の工夫による。
短い時間で日本史を全て理解するは無理としたうえで、
なぜ日本史を学ぶのか、そして学ぶ過程でどうなスキルを得るのか、そうした視点から、
かなりアクティブな講義となっている。
日本史とテーマを絞ったプレゼン、ラジオ製作、TV製作と、知識と技術を学ぶカリキュラム。
これが実践できるのはハーバードだからという声もありそうだが、
日本でも工夫のしようはあるだろう。

新書サイズながら、知らない世界(ハーバード大学での講義)を具体的に伝えてくれる、学びの多い一冊である。

なお、TED×Sendaiで、著者の講演がアップされていた。
興味がある方は、どうぞ。
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