ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

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シーラカンスもいいけど、日本人ならカブトガニ。「カブトガニの謎: 2億年前から形を変えず生き続けたわけ」  

カブトガニの謎: 2億年前から形を変えず生き続けたわけ
惣路 紀通



「生きた化石」という言葉から連想するのは、シーラカンス、そしてカブトガニ。
特にカブトガニの生息域がある西日本では、何となく身近な存在である。
瀬戸内海では何といっても岡山県笠岡が有名で、カブトガニ博物館もある。

そこで37年間カブトガニを研究し、退職を迎える著者によるカブトガニ本。
面白くないはずがない。

本書では、カブトガニの進化史だけでなく、
何といっても「生物」としてのカブトガニが紹介されていることが有り難い。
生きた化石といっても、カブトガニも、スズメやミミズと同じ生物である。
当たり前だが繁殖もする。
その生態を知らなければ、保護もありえない。

とはいえ、まず進化史で驚いた点から紹介しよう。
カブトガニは生きた化石、三葉虫から進化したと言われている。
その基本的な体構造(前体・後体・尾剣という3部分)ができたのは石炭紀末期(3億5000万年前頃)。
ただこの時点は、後体が体節構造の「ハラフシカブトガニ」だった(現在は体節構造がなくなっている)。

というのが、これまでの見解。
ところがし2008年、カナダ・マニトバ州で、オルドビス紀後期(約4億5000万年前)の、
後体が体節構造でない現生のカブトガニそっくりの化石が発見された(ルナタスピス)。
今まで考えていたより1億年も遡る可能性が出たわけだ。

カブトガニの進化史が書き換えられつつあるということで、続報を待ちたい。

次に、雄・雌の体の違い。
同じように見えるが、上面の体の形も違うし、後面の脚の形も違う。
どこが違うかは、ぜひ本書をお読みいただきたい。この違いが、カブトガニの繁殖に密接に関わっている。
ちなみに、体は雌の方が大きい。

さらに、活動期間。
何とカブトガニは、1年のうち3ヶ月ほどしか活動せず、9カ月は休眠しているという。

そのため、肝臓が大きい(付随する栄養を蓄える細肝管も多い)
活動するのは海水温が18℃以上、だいたい6月中旬~9月末とのこと。
僕はこの大幅な休眠期間が、大規模な気候変動を乗り切った一因ではないかと思うが、どうなのだろうか。

なお、産卵は6月下旬~7、8月の大潮中心の頃。
大潮の時に砂浜の一番奥で産卵すれば、次の大潮まで流されずに温められるからのようで、
カブトガニの繁殖行動も上手くできているものだ。

また近年注目されているのは、その「青い血液」だ。
僕らのようにヘモグロビン(鉄)が酸素を運ぶのと違い、カブトガニは銅が酸素を運ぶ。
そのため、血液は青い。

そして、その血液中には血球(アメボサイト)が大量に含まれている。
これを精製したのがラル(LAL)だが、この成分は、
カブトガニの体内に入ってきた細菌を素早くゼリーのように固める働きがある。
特に、病原菌が出す極めて微量の内毒素にも敏感に反応し、
現在、カブトガニの血液を使った検出法では、100億分の1gの内毒素も検出できるという。

こうした働きも、カブトガニという魅力あふれる生物が存在し、
シーラカンスとは違い、まだそれなりに人間と身近に生息しているからこそだ。

本書の著者が退官することは惜しいが、本書を礎として、
カブトガニ研究と保護がさらに推進することを願う。

▼シーラカンスについても、本シリーズで取り上げられている。レビューはこちら


【目次】
序章 カブトガニを守る意味
1章 カブトガニの進化をさぐる
2章 カブトガニの体のひみつ
3章 カブトガニの産卵
4章 カブトガニの発生と成長
5章 謎多きカブトガニの生態
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