ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている  

紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている
佐々 涼子



父は、本屋を営んでいた。僕が高校の頃には店を畳んだが、
その後は祖父が古本屋として開業した。
古本屋も祖父の死と共に畳み、もう店は更地になってしまっているが、
当時を思い出すと、本屋独特の臭い、重み、湿度を思い出す。
人生の初めから本があったし、
こうして読書ブログを書いているくらいだから、死ぬまで本は傍にあるだろう。

その本。電子書籍が主流になると言われて久しいが、
僕は、やはり紙ベースの本を好む。

様々な本ごとにある、表紙の手触り、見返しの色。それらに配慮された栞や花切れ(花布とも言う)など、
「本」というモノならではの美しさがある。

(装丁については、「西洋の書物工房 ロゼッタ・ストーンからモロッコ革の本まで (朝日選書)」(レビューはこちら)が詳しい。)

だが、本をモノとしての本たらしめているもの。
それは「紙」だ。
だが、伝統工芸として取り上げられやすい和紙と違い、
商業ベースの本の紙が、メディアに取り上げられることはなく、
僕も気にしたことは無かった。

だが、東日本大震災において被災した石巻の日本製紙石巻工場。
そここそが、日本の出版界-文庫も、ハードカバーも、新聞も-を支える紙工場だった。

本書は、「エンジェルフライト 国際霊柩送還士(レビューはこちら)」の著者による、
その石巻工場の被災から復興までを追う、ノンフィクション。

エンジェルフライト 国際霊柩送還士」では、その丁寧かつ細やかな取材により、全く知らない世界を教えてくれたが、
本書でもそのクォリティは保たれている。

巨大かつ複雑な製紙工場。それを襲う圧倒的な地震と津波の力。
なすすべもない中で、だが工場長は、「半年での再開」を宣言する。
それは企業活動であるとともに、今日を、そして明日を生きる目的でもあったのだろう。

これまで、僕は本に支えられて生きてきたが、
モノとしての本を支える紙、そしてそれを作り出す人々のことを初めて知った。
それは、とても有り難いことだった。

本書は刊行当時から話題となり、既に読了済みの方も多いと思うが、
未読の方は、ぜひ紙の本で、できれば何とかしてハードカバーでお読みいただきたい。
文庫がどうなのかは知らないが、ハードカバーでは、それに用いられている紙の種類、そして製造工場が記載されている。
そこに記された「日本製紙石巻工場゜8号抄紙機」という言葉の重みを、ぜひその手で実感していただきたい。

【目次】
プロローグ
第一章 石巻工場壊滅
第二章 生き延びた者たち
第三章 リーダーの決断
第四章 8号を回せ
第五章 たすきをつなぐ
第六章 野球部の運命
第七章 居酒屋店主の証言
第八章 紙つなげ!
第九章 おお、石巻
エピローグ
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category: 災害

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

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コメント

豆太郎さま

いつもありがとうございます<(_ _)>。
「紙の本」は汚れたり色褪せたりしますが、
そうした時の経過を一緒に体験するだけに、人生の特別な一部になるものと最近痛感しています。

そんな本を構成する「紙」を誰が、どのように作っているかを気にしたことがなかったのが、むしろおかしいくらいでした。

本書、とても素晴らしい一冊です。長くお楽しみいただければ幸いです。

BIRD READER #- | URL
2015/10/06 18:35 | edit

良い本の紹介ありがとうございます

「エンジェルフライト」と「紙つなげ」を購入しました。
「エンジェル」のほうは読み終わりました。とても面白く感動しました。
「紙つなげ」はこれから4章に入ります。これも面白くて、わくわくしています。

いつもありがとうございます。

豆太郎 #dtvZeFjQ | URL
2015/10/06 15:56 | edit

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