ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

オキノタユウの島で 無人島滞在“アホウドリ”調査日誌  

オキノタユウの島で 無人島滞在“アホウドリ”調査日誌
長谷川 博



(近々NHKスペシャルで、アホウドリが取り上げられる。
アホウドリ、大海原にはばたけ ~前代未聞の移住計画 8年間の記録~(仮)
総合2015年7月26日(日)午後9時00分~9時49分
興味がある方は、録画予約を。)


アホウドリ。著者は「オキノタユウ」という和名こそふさわしいと考え、本書はその呼称で統一されている。
その趣旨には賛同するものの、今のところアホウドリという名称が一般的なので、今回はアホウドリと呼称する。長谷川さんごめんなさい。

さて、野生動物の保護は、なかなか成果を出すことは難しい。
だが、本書に示されるアホウドリは、その数少ない成功事例である。

しかもそれが、国家や組織ではなく、ほぼ一人が主体となって成し得た結果と考えれば、アホウドリの回復は、世界的にも稀な物語といえるだろう。

著者の長谷川博氏は、アホウドリ保護と言えばこの人という程、
野鳥保護関係者では知られたキーパーソン。

鳥島での観察から始まり、営巣地の土地改良、デコイによる新コロニーの創設など、個体数回復の各段階において、効果的な策を進めてきた。

もちろん、その道のりは簡単なものではない。
例えば1977年、雛は15羽しか確認できなかったが、草の移植などで8年後の1985年には51羽に回復。
ところが、1987年には土石流が発生し、再び繁殖率が低下している。
そこで「従来のコロニー」を保全するとともに、「新コロニー」を形成しよう、と動き出す。
こうした適時・的確な対策を行うことで、アホウドリは復活していく。

本書は、その過程を振り返るとともに、鳥島に1ヶ月滞在した際の調査日誌を収録したものである。

これを読めば、いかに長谷川氏が先を見ていたか、また調査・保護において、細部の改良に努めてきていたかがよく分かる。
決して、幸運のなせるものではなく、長谷川氏という人がいたからこそ、
ここまで効率的に回復したのだろう。

また、本編や巻末には、調査によって得られた個体数・繁殖個体数・巣立ち成功率などの表や、今は調査がかなわない尖閣諸島のアホウドリの個体数調査結果や鳥島との遺伝的関係など、現時点で把握されてる諸データが満載である。

2013年が大学教員としての最終年度だったとのことであり、
本書は著者の公人としてのアホウドリ調査の集大成と思われる。

「謝辞」では、3年後の2018年5月までを、著者は自身の「責任期間」と考えていることが記載されている。
この言葉は、アホウドリ保護を次世代にバトンタッチするということだ。

長谷川氏が創った「新コロニー」は、当初デコイと音声で誘因をしていたが、
今はもう全て撤去され、代わりに本物のアホウドリ(成鳥・若鳥200羽、雛80羽程度)が暮らているという。

一方、今もアホウドリの雛から、ビニールやテグスなどの異物が吐き出されることがある。
餌と間違って給餌されたものだ。

長谷川氏が生涯を賭けたアホウドリ。
回復しつつあるが、それが永続的なものであるという保証はない。
まして、キーパーソンである長谷川氏に、いつまでも責を負ってもらうこともできない。
日本という国に生息するこの素晴らしい生き物を守り続けることができるかどうか。
行政・個人も含めて、日本全てが試される課題である。

また、本書では「壊滅的な結果になる可能性は少ない」とされながらも、
近年の火山活動の活発化は懸念されるところである。
特に鳥島は、日本で13ある活動度がAランクの火山の一つ。
今後の動向にも注意しておきたい。

ところで、冒頭にも掲載したが、
タイムリーなことにNHKスペシャルで、アホウドリが取り上げられる。
ぜひ、ご覧いただきたい。

アホウドリ、大海原にはばたけ ~前代未聞の移住計画 8年間の記録~(仮)
総合2015年7月26日(日)午後9時00分~9時49分

また、著者には、「50羽から5000羽へ―アホウドリの完全復活をめざして」など、アホウドリに関する著作が多数ある。
興味がある方は、Amazon等でチェックしていただきたい。

最後に、本書でもクマネズミによる捕食のため、オーストンウミツバメが激減していることなどが紹介されている。
アホウドリもさることながら、他の外洋性・島嶼繁殖の海鳥についても、積極的な保護策を講じる必要があるだろう。
ネズミによる被害については、「ねずみに支配された島」(レビューはこちら)に詳しい。

【目次】
プロローグ アホウドリからオキノタユウへ
第1章 鳥島での保護、長い道のり
第2章 鳥島滞在調査日誌
第3章 オキノタユウの未来
エピローグ オキノタユウよ、永遠に



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