ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

アルピニズムと死 僕が登り続けてこられた理由   

アルピニズムと死 僕が登り続けてこられた理由 (ヤマケイ新書)
山野井 泰史



「登攀」という言葉には、陳腐な言い方だが、ロマンがある。
そこにあるのは高みへの欲求、岩と雪との闘い、
技術と精神力、そして静けさ。
単なる僕のイメージにすぎないが、「登山」とは一線を画したものがある。
「単独登攀」なら、なおさらだ。

山野井氏は、1988年(23歳)にバフィン島(カナダ)のトール山の西壁を単独初登攀したり、
1990年(25歳)には、フィッツ・ロイ(3,441m)を冬季単独初登するなど、
ソロ・クライマーとして名を馳せる。

ところが、2002年(37歳)、ヒマラヤのギャチュン・カン北壁下山時、
岸壁の途中で雪崩に遭遇。冷気により視力も喪失、素手で降りざるを得なくなる。
この時、山野井氏は重度の凍傷に罹り、両手の薬指と小指、右足の全ての指を切断する。
(ザイルパートナーだった山野井妙子氏もほとんどの指を切断。)

岩をホールドする指の切断、右足の指切断によるバランスの不安定さがあるが、
それでも現在も山を登っている。生粋のクライマーと言えるだろう。

もちろん、なぜそこまでして、とも思える。
しかし、誰にでも、無理してでもやりたいことがある。
それを実行し続けるかどうかは、人それぞれの判断に過ぎず、他人がどうこう言う筋合いでもない。

むしろ同時代に、自分にはできないこと、自分には生きられない世界に生きている人の姿を見られる方が、有り難い。

本書は、山野井氏が自身のクライマー人生を、死を軸にして振り返ったもの。
子ども時代の無茶な冒険、
ギャチュン・カンでの遭難、
様々な知人の死などが綴られている。

一般論とするには余りにも特殊だ。
だが、だからこそ、本書を読まなければ、限界に挑むクライマーの生き方・考え方に触れる機会なんて、
到底無い。

「山」という文明から隔絶された世界を「本」にするという文化は、考えればとても不思議な話なのだが、
そのおかげで結実した一冊である。

【目次】
第1章 「天国に一番近い男」と呼ばれて
第2章 パートナーが教えてくれたもの
第3章 敗退の連鎖
第4章 2000年以降の記録より
第5章 危機からの脱出
第6章 アンデスを目指して
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