ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

消えた伝説のサル ベンツ  

消えた伝説のサル ベンツ
緑慎也



高崎山のサルといえば、先般シャーロット王女と同じ名前をサルに命名したことで話題となったものである。
結局はそのままの名前で行くことになったようだ。
命名も853通の応募のうち最多の59通だから、
話題となったのも多数の批判があったから、とのこと。
正直、その時々の、個々人の感性と主張、特に大声を出した方に振り回されているだけのような気がしたものである。

さて、そんなことはさておき、
本書の主役は「ベンツ」という猿である。貫禄十分だったからベンツと名付けられたという。
表紙には、凛とした表情でいるベンツの肖像画。ただ者ではない。

高崎山には、かつてA、B、C群の3群があった。
ベンツは、1987年、最年少の推定9歳で、生まれ育ったB群のボス猿(現在はαオスという。以下もその用語を用いる。)となった。
ところが、生まれ育ったB群では近親交配の可能性が高く、ぺアがあまり成立しない。
そこでベンツは、1990年2月、C群の雌ザルを追い、B群を離脱。
一転してB群の最下位となる。
ところが着々と実力を見せつけ、2000年にはナンバー2となる。
そして2011年2月、ついにC群の第9代αオスに就任する。
ただこの時点で、既に推定33歳、人間だと100歳以上だった。

その後、高齢となったベンツは失踪。誰もが死んだと思っとき、
約6kmも離れた市街地で発見・保護される。

もうαオスとしての復活は無理だろうと思われたが、
何とナンバー2だったゾロメが率先して服従し、見事αオスとして復活。
ベンツを記念して銅像が作られたが、それが披露される5日前に再び失踪。
そしてついに、死亡宣言がなされた。

最年少でαオスとなったベンツ。
初めて、異なる2つの群でαオスになったベンツ。
失踪後もαオスの返り咲いたベンツ。

その力強い生涯が、本書では多くの方のインタビュー、記録をもとに丹念に記録されている。
その中で明らかになっていくのは、人による餌付けの影響である。

群が分裂するほど個体数が増加したこと。
上位になるほど、自分の育った群では繁殖が困難になること。
また、分裂した群が維持できなくなり、争わなければならなくなったこと。

全てが人間の餌付けが起因となっている。

本書は、そうした人と野生動物の係わりに翻弄されつつ、
αオスとして生き続けた一匹のサルの、おそらく世界でも稀有な詳細な記録である。

本書により、餌付け問題、有害鳥獣駆除、野生動物の観光化等、様々な問題を考えることができるだろう。
そして、そうした問題を我々は考えなくてはならない。

だが、そうした問題はさておき、その環境の中で力強く生き抜き、
「高崎山最強」「名誉ボス」の称号を得たベンツの一生に、敬意を表したい。

嬉しいことに、YOUTUBEに、失踪後にαオスに復帰したことを確認した時のニュース映像があった。

ぜひ、一度ご覧いただきたい。


【目次】
序章 幻のサルを追って
1 高崎山のベンツ
2 最年少のボス就任
3 友情と裏切り
4 群れを守る
5 武闘派の台頭
6 出生の謎
7 失踪と捜索
終章 なぜベンツは人々を惹きつけるのか
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