ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

ヤマケイ新書 山岳遭難の教訓 --実例に学ぶ生還の条件-  

ヤマケイ新書 山岳遭難の教訓 --実例に学ぶ生還の条件-
羽根田 治



トムラウシ山遭難を機に、ツアー登山に対する批判が噴出した。
ただその過程で、一般的には「今回の旅行会社であるアミューズトラベルが特にずさんだった」という結論で終わってしまった感がある。
それに対して、「トムラウシ」というケーススタディを元に、ツアー登山の在り方や、ツアー参加者側の問題を分析したのが「トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか (ヤマケイ文庫)」(レビューはこちら)であった。

ただ、それでも登山における遭難ニュースは、後を絶たない。
僕自身は、登山にほぼ関わっていない無責任な立場から「山とはそういうもの」と思っているのだが、
山屋さん自身は、どう分析しているのか。
それが知りたくて手に取ったのが、本書である。

まず、目次をご覧いただきたい。

【目次】
高体温疾患の恐怖―沖縄・西表島
春の爆弾低気圧―八ヶ岳、谷川岳
10月のブリザード―北アルプス・白馬岳
吹雪にかき消えたルート―北アルプス・白馬乗鞍岳
スキーツアー中の雪崩事故―八甲田山・前嶽
冬山登山基地を襲った雪崩―北アルプス・槍平
ゴールデンウィークの低体温症―北アルプス・白馬岳、爺ヶ岳、穂高岳
被雷のち骨折―大峰山系・行者還岳、弥山
幻覚に翻弄された山中彷徨―大峰山系・釈迦ヶ岳
明暗を分けた分岐点―奥秩父・和名倉山
単独で山中を彷徨した8日間―奥秩父・飛龍山

トムラウシで顕著な問題となった低体温症だけでなく、雪崩、ルートの喪失、幻覚、高体温症等々、
様々なケースが取り上げられている。
基本、まずそのケースが綴られ、後半に「何が問題だったか、対策はどうあるべきか」を論じている。
1章ごとが専門誌に連載されたものであるため、読みやすい。

本書を読んで感じたことのうち、2点だけ綴っておきたい。

まず、山岳遭難は雪山のみではない、ということ。
いくつか本書でも取り上げられているが、有名な山であっても、その人にとっては初(もしくは季節が違う、何年も歩いていない)などの場合、ルート喪失の懸念はある。
その際、どう対応できるか。本書では運よく生還した人の体験談が収録されているが、
残念ながら同時期にルートを間違い、そのまま行方不明になった方もいる。

夏山であっても、また日本アルプスなどでなくても、遭難はあり得るということを、
週末登山者や、高山帯をフィールドとしているナチュラリストが、どれだけ覚悟と準備をしているか。
非常に気になった。

また山岳ガイドについて。
トムラウシのように、かなりビジネス寄りのツアー登山の場合、やはり問題が多いだろう。

だが、それほど大規模でないツアー登山や、スキーツアーはどうなのか。
こうした団体引率型の登山について、「ツアー会社だから危険、個人の山屋だから、地元だから安全」と鵜呑みにしていないだろうか。
本書では、地元ガイドが同行していても(また時には、同行して油断したからこそ)遭難したケースも紹介されている。

本書は、山岳遭難の「事例」ではなく、「教訓」である。
これを活かすかどうかは、山へ向かう個々人の姿勢次第だろう。
コンパクトながら、価値のある一冊である。
夏から秋にかけて、山は良い時期であるが、ぜひご一読いただきたい。
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