ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

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ナメクジの言い分 (岩波科学ライブラリー)  

ナメクジの言い分

足立 則夫
【そうだったのか!度】★★★★

ナメクジの言い分 (岩波科学ライブラリー)ナメクジの言い分 (岩波科学ライブラリー)
(2012/10/05)
足立 則夫

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 生き物好きとしては、全く知らない事実を知ることは大きな喜びである。

 これまで眼中になかったナメクジという生き物について、いったいどんな「事実」があるのか。軽い気持ちで手に取った本書だが、良い意味で期待を裏切られた。

 本書によると、日本には様々なナメクジがいるが、通常よく見られるのは通称フタスジナメクジ。
 ところが明治時代にはキイロナメクジという外来種が侵入。全国に広がりつつあったが、忽然として消滅。
 代わって侵入したのが、チャコウラナメクジ。これが米軍基地を足がかりに拡大中。
 ところが、このチャコウラも実は3種が混在しているらしい。
 詳細な分類は不明で、2種はまだ未記載。

 いや、たかがナメクジと思っていたが、ここにも外来種問題があったとは。

 移動速度が速い外来種が拡大すれば、遅い在来種を捕食していた在来の天敵種は対応できないだろう。ここがベースとなって、生態系が変化している、かもしれない。
 今後は地域の生態系を考えるうえでは、ナメクジの外来種問題も視野に入れる必要があるだろう。眼からウロコである。
 これから僕もナメクジを見る眼が変わるだろう。香川の分布について、自分自身の目で調べてみたいものである。


 なお、ナメクジなんて気にも留めていなかったが、本書の中に少し知った名前を見つけて嬉しかった。
 盛口満氏。「ゲッチョ先生」として著書多数である。ナメクジにまで手を出していたとは。
 相良直彦氏。モグラノセッチンタケとモグラ、ブナ類の樹木の共生関係を解明した人である。先日紹介した「モグラ博士のモグラの話」でも出ていた。この人もたぶん、いろんな生き物が知りたくてたまらないタイプなのではないだろうか。

 そして、香川県情報提供者 矢野重文氏。香川県の貝類研究では有名な方である。そうかナメクジも貝類だもんな。納得。ちなみのこの方は、僕が高校の頃、その学校で先生だったはずである。ニアミスしていた。今なら生き物の話でいろいろご教授いただきたいことは山ほどあるのだが、当時僕は生き物より文学であり、矢野先生に教えを乞う機会が無かった。残念である。


【目次】
1 晩秋のナメクジ
2 銀の筋は何なのだ
3 闇に包まれたライフスタイル
4 なぜ生き残ったのか
5 ナメクジに引かれた人たち
6 ナメクジに学ぶ


【メモ】
まえがき
「いみじうきたなきもの なめくぢ」枕草子、清少納言


p6
全国の大都市周辺の住宅街や農村部=和名「ナメクジ」が生息。
7、8cm。頭部に甲羅が無い。背中に筋があるので通称「フタスジナメクジ」。

○キイロナメクジ
地中海原産、明治時代に侵入。
7、8cm。頭部に甲羅があり。黄色。
「ヴヰナス」第17巻(1952)、黒田徳米
「一九二〇年より前に神戸にいたと伝え聞いた。これが東京や奈良へ。三六年には京都市内の知人の住宅厨房に出現。五二年には京都の自宅庭で発見。約五キロ攻略するのに一五年を費やしたことになる。」1年に約300m。
・キイロはフタスジより乾燥に強い。
ところが突如撤退する。
・1982年11月、香川県観音寺市大野原町の矢野重文氏の観察を最後に目撃されていない。
・なぜ絶滅したのかは不明。

○チャコウラナメクジ
イベリア半島原産。茶褐色。
5、6cm。頭部に甲羅あり。
南極・北極を除く全世界に進出。米軍基地から周辺に侵入。
乾燥に強い。

なぜキイロが絶滅し、チャコウラが増加したのかは謎。

P27
・近畿地方の海岸線はチャコウラの天下。
・京都市郊外の情報提供者
 相良直彦氏。モグラノセッチンタケとモグラ、ブナ類の樹木の共生関係を解明した人。

P29
・四国 チャコウラ、フタスジ。チャコウラが多い。
・丸亀市 鳥居耀蔵が幽閉されていた跡地でチャコウラ。
 「蛞蝓亦出で」(「鳥居甲斐 晩年日録」(1983、桜楓社))
 このころはフタスジだったはず。

P31
・沖縄/盛口満 「ゲッチョ先生のナメクジ探検記」
 与那国島 イボイボナメクジ(本州の山梨以南。2~3cm、肉食性)。


P33
・外国
 ヨーロピアンブラック、アカコウラなど。日本未侵入。山岳部に入ると、
在来のヤマナメクジが脅威にさらされる。

P42
・粘液 7機能
 カーペット機能、保湿機能、断熱機能、洗浄機能、護身機能、ナビ機能、ぶら下がり機能

P44
・移動速度(テーブル・ラップ上)
 フタスジ 3~7cm/分
 チャコウラ 8~20cm/分

P47
・ナメクジ駆除剤の成分「メタアルデヒド」
 体内でアセトアルデヒドに分解され、神経を麻痺させる。
 身体の小さいペットや野鳥が食べると痙攣を起こす可能性がある。

P63
・繁殖期 晩秋から春
  寒い季節、落ち葉を餌とすること。
  幼体が夏の高温に耐えにくいこと。
  天敵が少ない(不活発)こと

P65
・広東住血線虫 ナメクジに寄生
 沖縄県内11箇所での調査
 アシヒダナメクジ 21/281 (7.5%)
 チャコウラ    1/56 (1.8%)
 チャコウラ類似種 76/227(33.5%)
 フタスジ      0/5 (0%)
 ヤマ        0/1 (0%)

P83
・チャコウラは実は3種類いる
 狩野泰則(東京大学大学院理学系研究科准教授)

 Lehmannia valentiana
  背に二本の黒い筋がある
  ヨーロッパ・イベリア半島原産
  列島南部に多くが分布
 
 L sp.A
  背に黒くて細かい点が散らばる
  南ヨーロッパ原産か、現地でも認識されていない新種の可能性
  北海道~関東

 L sp.B
  背に模様がなく、明るい茶色
  イタリア・シチリア島原産のとよく似ている
  北海道~関東

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