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化石の分子生物学――生命進化の謎を解く (講談社現代新書)  

化石の分子生物学――生命進化の謎を解く (講談社現代新書)
更科 功



DNAの二重らせん構造が明らかにされたのが1953年。
キャリー・マリスによってPCR法が発表されたのが1987年。
人類がDNAを効率よく読み解くようになってまだ50年も経っていないが、その技術進歩と応用は凄まじい。

その一端、DNA分析を過去の生物に応用していこう、という試みを紹介するのが本書。


第1章、ネアンデルタール人と人類の混血については、
人類進化700万年の物語 私たちだけがなぜ生き残れたのか」(レビューはこちら)や「ネアンデルタール人 奇跡の再発見 (朝日選書)」(レビューはこちら)でも触れられており、DNA分析という手法がもたらした一大発見である。最近では「ネアンデルタール人は私たちと交配した」が話題だ。

ただ本書ではその舞台裏、化石のDNA分析におけるコンタミネーション(試料汚染)の問題が紹介される。
化石から採取したDNAの信頼性をどこまで担保するか、という点は大きな問題であり、
混在するDNAとしては、化石化の過程で侵入する微生物のDNA、
そして分析の過程で混入するヒトDNAだ。
これらをどこまで除外し、うまく化石DNAを増幅するかというのが「化石の分子生物学」のポイントであり、
以降、これを念頭に置いて読み進めることをお勧めする。

第2章以降、ルイ17世、ミイラ、縄文人と、やや近い年代の化石DNA。
これらの章を通して、DNA分析の技術発展、DNAの保存性の問題などの基礎知識が得られる。

例えば、アミノ酸には鏡像関係にあるd体とℓ体があるが、生物はℓ体のみを選択的に利用する。
しかし死によって生化学反応が停止すると、ℓ体がd体に変化し、最終的には半々になる(ラセミ化)。
ラセミ化が進んでいるとDNAが破壊されている可能性も高くなるため、このラセミ化の程度(D/L比)によって、
残存している化石DNAがどれだけ保存されているか、という見当もつく。
(ラセミ化が進んでいるのに長い化石DNAが抽出された場合は、コンタミの可能性が高い、など。)

※鏡像やアミノ酸のD体、L体については、「生命世界の非対称性―自然はなぜアンバランスが好きか (中公新書)」(レビューはこちら)や「右?左?のふしぎ」(レビューはこちら)などが詳しい。

そして第5章以降。化石DNAと言えばジュラシックパークである。
取り上げられる話題は昆虫入り琥珀だけでなく、数年前にニュートン誌でも紹介されていた、
恐竜の骨を適切に処理すると、内部に赤血球のような構造が残っていた、というものも取り上げる。

実際のところ、著者は上記のコンタミの問題と再現性の問題から、
現時点では恐竜化石からのDNA抽出「実績」には否定的である。
だがその視点は全く冷静な科学的見地に立つものであって、
むしろ無邪気にジュラシックパーク的技術を期待し、現実世界にもそれを求め、トンデモ研究を鵜呑みにする方が問題であろう。

いずれにしても、人類のDNA研究は始まったばかり。今後の発展に期待である。


【目次】
第1章 ネアンデルタール人は現生人類と交配したか
第2章 ルイ十七世は生きていた?
第3章 剥製やミイラのDNAを探る
第4章 縄文人の起源
第5章 ジュラシック・パークの夢
第6章 分子の進化
第7章 カンブリア紀の爆発
第8章 化石タンパク質への挑戦

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