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先生、子リスたちがイタチを攻撃しています! 鳥取環境大学の森の人間動物行動学  

先生、子リスたちがイタチを攻撃しています! 鳥取環境大学の森の人間動物行動学
小林 朋道 (著者ホームページ ほっと行動学)



先生、シマリスがヘビの頭をかじっています! 「鳥取環境大学」の森の人間動物行動学」(レビューはこちら)の続編である。数冊でているが、たぶん各号の時系列はあまり意識する必要が無いと思う。

 本書でも、シマリスの子リスの不思議な習性の意味、ヤモリ、アカハライモリ、モグラ、カヤネズミなど、様々な動物についての出会い、調査、考察が語られている。
 写真も多く、文章も軽妙であり、相変わらず安心して楽しめる一冊である。生物好き(特にフィールドワーク好き)の方には、特にお勧めしたい。

 ただ本書について1点述べておきたい。
 著者が保護した傷病鳥のヒヨドリやドバトに関する章の中で、傷病鳥・ヒナの保護について言及されている個所があった。

 鳥類のヒナは、わりと早く巣立つ場合が多い(巣そのものが無防備なため)。
その後、親鳥とつかず離れず行動するのだが、飛翔力が劣るため、よく巣立ちビナだけが地上にいることがある。
 それを見て、「ヒナがはぐれている」と拾ってしまう場合が多い。

 だが、そこには様々な問題がある。

 ①まず、それは親鳥とヒナを離す行為である。
 ②また、野鳥のヒナを育てるのは極めて大変であり(適度な加温や頻繁な餌やりが必要)、むしろ死の可能性が高まる。
 ③さらに、法律上日本の鳥類は飼えないため、できるだけ早く放鳥しなければならないが、愛着が湧くと離しがたくなる。

 よって日本野鳥の会や保護団体では(僕も)、ヒナは拾わないで、と話している。


 これに対して、著者は上記のような問題があることは理解したうえで、
 「傷ついた動物を持ち込む子どもにとって、その行為は理屈でないのである。」
 「小学校四年ごろまでに、傷ついた動物を「見て見ぬふりができず、思わず駆け寄ってしまう」子供たちの体験は、脳内に大きな影響を残し、大人になってから自然に対する気持ちに大きな影響を与えると予想することができる」
としている。その気持ちは理解できる。

 だが実際に拾ったとき、多くは自ら世話せず、都道府県等の保護施設か保護団体に持ち込まれる。
 しかし、それでも死亡する場合も多い。
 子供は「拾った、届けた」で満足するが、それが本当に「助けた」ことになっているのかという点を、きちんと大人が教えなければならないだろう。
 また、頑張って子供(とその家族)が育てあげると、「離れないから」という理由で飼い続ける場合も多い。
 美談とされがちだが、やはり違法行為であるとともに、「野生動物はペットではない」ということをきちんと説明し、放鳥するよう大人が導かなければならない。
 こうした「大人の責任ある対応」が担保できないのに、子どものためという理由で、安易に保護することは、やはり問題である。

 というのも、現に大人によって、野鳥の密猟が絶えないからだ。
 多くの場合、その目的は鳴き声を競わせるため。
 西日本では、特にメジロの密猟が多い。他にもホオジロ、オオルリ、キビタキ、ウグイスなどが密猟される。

 密猟された野鳥は、数千円で売買されるが、鳴き合わせ会で優勝すると高値が付く。
 野外で原価0円で捕獲、そのままでも数千円で売買、うまくいけば数十万単位。
 メジロなど日本の野鳥は籠内では繁殖しないため、延々と密猟は続ている。

 野鳥を捕獲してはならない、という法律は、こうした人間の自己満足のための捕獲を放置しないためのものだ。

 だから僕も、著者の言うように子供の気持ちを育てるためには保護もやむなしとは思うものの、
 尋ねられれば「そのままにしてください」と言う。
 
 実のところ、子供の気持ちを利用し、
 「拾ったヒナがいたら預かる」と言って集めていた密猟者すらいたのだ(伝聞ではなく実体験である)。

 野鳥は見た目も鳴き声も美しく、楽しませてくれる種が多い。
 だが、それだけに、人の欲に利用される場合も多い。

 本書シリーズを僕はお勧めするのだけれど、この傷病鳥やヒナの保護の点については、
 慎重に読み取っていただきたい。

【目次】
はじめに
イタチを撃退するシマリスの子どもたち
 フェレットに手伝ってもらって見事に成功した実験
張りぼての威厳をかけたヤモリとの真夜中の決闘
 「Yさんお帰り。ヤモリの世話? もちろん楽勝だったよ」
アカハライモリの子どもを探しつづけた深夜の1カ月
 河川敷の草むらは、豊かな生物を育む命のゆりかごだった
ミニ地球を破壊する巨大(?)なカヤネズミ
 ほんとうは人間がカヤネズミの棲む地球を破壊している
この下には何か物凄いエネルギーをもった生命体がいる!
 砂利のなかから湧き出たモグラ
ヒヨドリは飛んでいった
 鳥の心を探る実験を手伝ってほしかったのに

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