ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

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砂時計の七不思議―粉粒体の動力学 (中公新書)   

砂時計の七不思議―粉粒体の動力学 (中公新書)
田口 善弘



砂時計が、子供の頃から何となく不思議だった。
ところが、そのどこが不思議なのかが、全く分からなかった。漠然とした違和感だけあった。

で、発見したのが本書。タイトル買いであったが、アタリであった。

砂時計は、砂の粒の集まりである。液体や気体のような流体とは異なり、
このような個々の粒によって形成される「粉粒体」は、流体とは全く異なるメカニズムが働く。

粉粒体を蓄え、流す容器(簡単に言えば、砂時計を半分に切ったロート状の容器)を「ホッパー」というが、
本書冒頭で、この「ホッパーの七不思議」が紹介される。これが、本書タイトルの「砂時計の七不思議」のことだ。

1 ホッパーの側壁にかかる圧力は、ホッパー内の粉体の量によらない
  (例えば下から3cmの側壁にかかる圧力は、その上に何cm粉粒体があっても同じ)
2 ホッパーに粉粒体を貯め、ホッパーの出口を空けると、出口付近の横壁に大きな圧力がかかる。
3 粉粒体がホッパーから流れ出ている時の壁にかかる圧力、及び粉粒体が流れ出る速度は、周期的に変動する。
4 粉粒体が流れ出る速度は、出口の直径の2.5乗から3.0乗に比例する。
5 粉粒体が流れ出る速さの時間平均値はホッパー内に残っている粉粒体の量に無関係である。
6 出口にパイプをつけねと粉粒体が流れ出る速さが増大することがある。
7 出口の直径が粉粒体の直径の6倍より小さい時は、粉粒体は流れ出ずに目詰まりする。

何のことだか、という方のために本書があるのだが、
例えば「1」。
流体(水や大気)だと、こうならない。
上にある量が増せば、それだけ下の方にかかる圧力は増す。
なんてことはない、いわゆる気圧や水圧だ。
ところが、粉粒体はこうならない。上にどれだけ乗っていても、下にかかる圧力は変化しないのだ。
(だからこそ、、1000mの山(岩石の粉粒体)の麓にトンネルを掘れる。もし流体と同じように圧力がかかるとすれば、少し堀ただけで崩壊する。)

また、「5」。簡単に言いかえると、粉粒体がどれだけ入っているかは、出口(ロートの先)から流れ出る速さに影響しない。
だからこそ、砂時計が成立する。
大量にある時と、ほとんど残っていない時と、どちらも流れ出る速度は同じ。だから、少ない量で時間が測れる。

これが流体だと、容器に入っているほど、出口にかかる圧力が増し(「1」の流体のケース)、より早く流れ出す。
だから、測る時間を増すほど、入れる流体の量を増さなければならない。

そうなのだ、僕は、どうして砂時計の最初と最後が同じ速度で流れるかが不思議だったのだ。


本書では、こうした話からスタートして、粉粒体に関する様々なトピックを紹介する。
風紋であったり、雪崩であったり。話題は様々だ。

刊行が1995年といささか古いため(僕もおっさんなのでそんな気がしないのだが)、おそらくこの頃より研究は進んでいるだろう。
(特に、コンピューターの発展に伴う大規模シミュレーションなんて、この分野にうってつけである。)

だから最新知識とは異なるものの、「粉粒体」という存在について、
ベーシックな知識を持つには良いだろう。
(ただ、Amazonで調べると、あまり類書はなさそうだが。)

なお、本書では風紋のメカニズムを紹介するなかで、生物の縞模様を形成するメカニズムに触れている。
これについては、「波紋と螺旋とフィボナッチ: 数理の眼鏡でみえてくる生命の形の神秘」(レビューはこちら)が詳しく、面白い。

【目次】
第1章 流れ落ちる
第2章 吹き飛ばされる
第3章 かき混ぜられる
第4章 吹き上げられる
第5章 ゆすられる
第6章 粉粒体とは何か


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