ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

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人類大移動 アフリカからイースター島へ (朝日選書)  

人類大移動 アフリカからイースター島へ (朝日選書)
印東 道子ほか



2015年1月下旬、台湾の海底から、新たな原人の化石が見つかったことが報じられた。
これまでアジアでは、ジャワ原人、北京原人、そしてホモ・フローレシエンシスの3種の原人が発見されていた。
これに続く第4の原人の発見は、間違いなく新たな人類史の展開に繋がるだろう。楽しみである。

さて、本書はその人類史を概観するもの。2012年刊行であり、ホモ・フローレシエンシスも視野に入っている。
ホモ・フロレシエンシス
▲国立科学博物館のホモ・フローレシエンシス。小さい!

タイトルに「大移動」とあるように、本書の特筆は移動時期・移動経路を詳しく見ていることだろう。

アジア圏では、特にオセアニアでの人類の展開に詳しい。アウト・オブ・アフリカを果たした人類が、
どのように海域に進出し、どのように島々へ展開していったか。ラピタ土器や、人類と共に移入された動物(クスクスやニワトリなど)の化石のDNA分析から、島々をめぐるコース・時期を特定していく視点は、非常に興味深い。
南米・チリで出土したニワトリの骨(1304-1459年頃)のDNAが、西ポリネシアのトンガ、サモアから出土した骨(2000-1500年前)と完全一致したことなどは、DNAという武器を持つ現代ならではの研究結果である。

なお本書では移入動物としてのネズミには詳しく触れていないが、「ねずみに支配された島」(レビューはこちら)では、
ポリネシア人が船旅や移住先での食料としてナンヨウネズミを持込んでいたこと、
そしてそれが島の生態系を破壊してきたこと(近年の研究ではハワイの固有種を消滅させたらしい)が紹介されている。

また、アメリカ大陸への人類侵入についても、2万7000年前頃から1万1000年前頃まで維持されていたベーリング陸橋を渡ったのだ、という程度は知っていたが、
陸橋ができた当時は、北アメリカの北部には大氷河(ローレンタイド氷床)が広がっており、簡単には人類が南下できなかったこと、
そして1万2000年前、氷河の一部に南下できる無氷回廊が開きはじめたため、ここを南下したとの解釈もあるものの、
実際にはもっと古い時代の遺跡も氷河以南で発見されていることから、無氷回廊以外の沿岸部を南下した可能性もあるなど、より細かな移動の説が紹介されている。

この他、ネアンデルタール人とクロマニョン人の環境適応の違いとして、
ネアンデルタール人は蓄積する技術や知識を継承する脳力=社会学習力を活かしていた一方、
クロマニョン人は新たな知識やが技術を創出する脳力=個体学習能力を活かしており、
これが環境激変期において、両者の存亡に影響を与えたという視点の紹介や、

さらに、アフリカで初期人類が発達した契機として、類人猿とオナガザル科の食性や社会性に着目して論じている最終章は、生物的観点からとても興味深い。

全体として、オセアニア地域の話が多い印象があるが、
今後さらに大きな視野で続編を刊行することを望む。

【目次】
1章 ホモ・モビリタス700万年の歩み―ホモ・モビリタスの歩み
2章 アジアへの人類移動―人類のアジア進出
3章 最初のアメリカ人の探究―最初のアメリカ人
4章 海を越えてオセアニアへ―人類のオセアニア進出
5章 DNAに刻まれたヒトの大移動史―遺伝学から何をさぐるか
6章 新人に見る移動と現代的行動―本格的な移動はどうやってはじまったか
7章 移動と出会い―異なる文化段階の集団はどんな出会いをしたのか
8章 ヒトはどのようにしてアフリカ大陸を出たのか?―ヒト科生態進化のルビコン



▼人類の進化に着目したものとしては、本書がある。レビューはこちら


▼ホモ・フローレシエンシスについては、やはり本書である。レビューはこちら




▼ネアンデルタール人が発見された場所は、消滅していた! レビューはこちら
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