ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

イチョウ 奇跡の2億年史: 生き残った最古の樹木の物語   

イチョウ 奇跡の2億年史: 生き残った最古の樹木の物語
ピーター クレイン





「生きた化石」というフレーズは良く使われるが、
植物においてならば、僕はメタセコイアが頭に浮かぶ。

それは、「発見者の三木博士は香川県出身である」という、
小学校の頃に学んだ(ような気がする)、土着の経験があるためだろう。

一方、本書の主役であるイチョウ。

遥かな古代から連綿と続いていること、
あの臭い種子を食う種子散布者が絶滅したから、分布域が減少したという説があることくらいしか、
知識としては無い。
あとは、日々の街路樹として、あまりにも身近な姿だけだ。

だが、イチョウがかつてほぼ全世界に分布していたこと、
そして数度の大量絶滅を乗り越えながら、
なぜかここ数百万年の間に激減し、中国の一部にしか自生しなくなったこと。

(種子植物との競争や気候変動などもあるらしいが、それにしても長い歴史時間を生き抜き、
全世界に分布していたイチョウが衰退するイメージが湧かない。)

そして、人との係わりによって再度分布域を拡大し、
現在は街路樹・薬効植物として世界中に再分布しているという、
植物だけでなく、全生物種においても、稀有の歴史を辿ったことを知ると、
イチョウを見る眼も変わってくる。

特に、日本では中国の影響を受け、社寺に多く植えられ、歴史的にもなじみ深い。
また、西洋社会へイチョウが再分布する窓口が、江戸時代の出島にあるということを踏まえれば、
イチョウに対する愛着もさらに増す。

本書は、そうしたイチョウの変遷について、化石時代から現代まで、
そして現代の再分布については、イギリス、ヨーロッパ、アメリカの各地域において、
多数の史料を駆使して明らかにしていく。

イチョウという「生きた化石」、特にヨーロッパ圏においては、
「アジアの植物」という魅力とあわさり、
本書のような大部な本が成立したのだろう。

ただ、生物種としてのイチョウについて、
特に人類と遭遇する以前の自然分布期のイチョウの生活史については、やや控えめな記載となっている。

イチョウを食する動物(現生種も化石種も)など、更に生物学方面に踏み込んだ記述を期待していた部分にいては、残念ながら満たされなかった。

一方では、西洋社会への導入史の部分が多い。

例えば、キュー植物園が王室の領地だった18世紀から残っている数本の樹木は「オールド・ライオン」と呼ばれること(そしてもちろん、このオールド・ライオンであるイチョウがある)など、
西洋植物史に興味がある方には、ゆったり時間をかけて楽しめるだろう。

なおメタセコイアについては、「メタセコイア―昭和天皇の愛した木 (中公新書)」(レビューはこちら)という総括的な本がある。お勧めである。
またメタセコイアそのものについては、「化石から生命の謎を解く 恐竜から分子まで (朝日選書)」(レビューはこちら)も詳しい。

【目次】
第1部 プロローグ
第2部 植物としてのイチョウの生態
第3部 起源と繁栄
第4部 衰退と生き残り
第5部 ヒトとの出合い
第6部 利用価値
第7部 植物の未来を考える





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