ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

ペンギンが教えてくれた 物理のはなし (河出ブックス)  

ペンギンが教えてくれた 物理のはなし (河出ブックス)
渡辺 佑基



野生動物を野外で観察するのが、スタンダードな研究方法である。
しかし魚類や水棲ほ乳類などや、鳥類では、その主たる生息環境(空中・水中)で観測することは難しく、まして厳密な測定は困難だ。
かといって、観測環境が整った飼育下では、そもそも野生状態の研究とはならない。

その限界を突破する手法が、バイオロギングである。
対象となる動物に、位置を測る測位計や深度計、速度計などを装着し、それぞれの動きの実測データを入手する、新しい研究手法である。

例えば、位置測定の手法としては、大きく3つある。

まず、一般的にもよく知られている、生物に発信器を取り付け、その電波を受信するもの。アルゴス・システムとして知られているこの手法では、コハクチョウやヒシクイなどに装着され、成果を上げている。
また「ハチクマ・プロジェクト」では、猛禽類のハチクマの渡りを日々楽しませてもらえた。
また、「ミサゴのいる谷」(レビューはこちら)のように、ミサゴの渡り(ヨーロッパでは渡り鳥である)をアルゴス・システムで調査する手法が非常に効果的に盛り込まれた児童文学まである。

一方、近年発達しているGPS。精度は高いが、測位を行うのがGPSそのもののため、データを入手するためには、どうしてもGPSを回収する必要がある。

そしてジオロケータ。日の出・日の入りを記録する照度計と時計の組み合わせのシンプルな機器で、そこから得られる昼の長さや南中時刻等で測位が可能となる。ただ、これも機器を回収する必要がある。
近年、機器の小型化と汎用化が進み、国内の鳥類の調査でも、これを用いるものが出だしたところだ。

バイオロギングで測定されるものは深度・速度など様々なものがあり、様々な生物に上手く装着・回収さえすれば、これまで得られなかったデータが、まさに「手に取る」ことかができる。

本書は、このバイオロギングの第一線で活躍する研究者が、バイオロギングの概要と、自身の研究結果を紹介するもの。

単なる調査報告ではなく、多難なフィールド・ワークの話も盛り込まれ、生物調査好きには非常に面白い一冊である。

特に、魚や魚類における、遊泳速度と代謝速度の関係、
深く潜る生物の生理学、
高々度を飛翔する鳥類の揚力と代謝速度の関係など、
バイオロギングという「武器」を持つ著者ならではの理論は、これまでの「観察」では決して得られなかった知見である。

デジタルベースのバイオロギングが、内藤靖彦による世界初のデジタル式データロガー(1991年)からまだ20年程度しか経過していないこと、そして近年のコンパクト化・高容量化を考えれば、これから更にバイオロギングの力が発揮されるだろう。

【目次】
第1章 渡る―ペンギンが解き明かした回遊の謎
「動物はどこに、何しに行くの?」
ミズナギドリの終わらない夏
第2章 泳ぐ―遊泳の技巧はサメに習う
マグロは時速一〇〇キロでは泳がない
薄気味悪いニシオンデンザメ
第3章 測る―先駆者が磨いた計測の技
バハマの悲劇
最初のひとしずく―生理学の巨人、ショランダー
第4章 潜る―潜水の極意はアザラシが知っていた
「ぺんぎんは、なんでもぐるのですか?」
ダイビング界の雄、ウェッデルアザラシ
第5章 飛ぶ―アホウドリが語る飛翔の真実
離島での飛行百景
縦横無尽の機動性―グンカンドリ

バイオロギングの成果を紹介するものとして、本書以外に次のようなものがある。
いずれも、生物学の新しい地平を拓くものであり、
こうした進歩をリアルタイムで楽しめるのは、嬉しい。

レビューはこちら


レビューはこちら


レビューはこちら

関連記事
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 動物

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://birdbookreading.blog.fc2.com/tb.php/498-43ceabea
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

中の人

アクセス

RSSリンクの表示

最新記事

カレンダー

アクセスランキング

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム