ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

ミクロな化石、地球を語る ~微化石に刻まれた絶滅と再生~ (知りたい!サイエンス)  

ミクロな化石、地球を語る ~微化石に刻まれた絶滅と再生~ (知りたい!サイエンス)
谷村 好洋




0.1ミリのタイムマシン―地球の過去と未来が化石から見えてくる (くもんジュニアサイエンス)」(レビューはこちら)で、珪藻の化石による古代気候史等の解明、というテーマを知った。

「0.1mmのタイムマシン」は、一人の研究者の研究内容の紹介だった。
本書は、珪藻化石の研究によって、現在どのような事実が明らかになり、どのような課題があるかを概観する。

単に化石そのものの年代史研究ではなく、まず珪藻の殻がどのように(そしてどれくらいの期間で)沈降するか、海底でどのような作用が生じているか、など、珪藻化石の年代特定の前提となる事実についても紹介されており、興味深い。

海底の「タフォノミック・アクティブゾーン」(海底下数cmを占める、その下の堆積物とは明らかに色が異なる堆積層)ではプランクトンの殻の溶解・破壊が急速に進んでいたり、
大規模な気候変動による撹拌・再堆積があるなど、単に珪藻化石は静かに沈降してできたものではない。

珪藻化石自体の年代測定と、それが積もった地層の年代評価の関係を読み解く難しさがある。

また、ある珪藻化石に注目しても、それが出現した年代と、その地域に分布を広げた年代が異なる。

こうした課題を踏まえたうえで、現在の珪藻化石などの微化石研究の概要が簡潔に紹介されている。

珪藻化石のような微化石の研究には派手さがない。
そのため、あまりTV等で紹介されることも無く、本書のようなコンパクトな概要書の価値は大きいと思う。

なお、淡水珪藻の研究として、福井県の三方五湖(三方湖、水月湖、菅湖、久々子湖、日向湖)、特に水月湖での研究成果が紹介されている。確かこの湖での珪藻化石の研究は、NHKか何かで特集していたような気がする。もっと丁寧に見ておくんだったと反省。

【目次】
第1章 深海への挑戦
1.1 謎の微小円盤
1.2 ナチュラリストのドレッジ
 ■深海探査を支えた二つのドレッジ ■無生物帯は存在しなかった
1.3 チャレンジャー号による世界周航探検航海1 二人の博物学者
 ■「チャレンジャー号」大探検航海へ出発
1.4 チャレンジャー号による世界周航探検航海2 サウンディング・マシーンで泥を採る
 ■チャレンジャーレポート

第2章 深海に降り積もったもの
2.1 海のなかの食生活
 ■食う―食われるの争い
2.2 沈降速度1――17年で3000m
2.3 沈降速度2――20日で3000m
 ■セジメント・トラップで沈降速度を割り出せ ■マリンスノーによる高速輸送
2.4 マリンスノー
 ■マリンスノーはどこへ行くのか?
2.5 堆積物になれる確率は1%!?
 ■タフォノミック・アクティブゾーン
2.6 深海に降り積もったプランクトンの殻
 ■深海底にはなにが堆積しているのか?
2.7 エスモディスクス――謎の珪藻
 ■エスモディスクス軟泥 ■陸や氷河の堆積物

第3章 地球史は深海底に記録される
3.1 1000年に0.3cm
 ■堆積速度が速い場所、遅い場所 ■海域によって違う堆積速度
3.2 海洋底を掘削する
 ■モホール計画
3.3 地球科学に革命を起こした船
 ■海底には古い・新しいがある?
3.4 微化石が語る地層の年代
 ■生層序基準面を見つけ出す ■古地磁気で年代を決める ■生層序基準面と古地磁気の極性反転を組み合わせると……
3.5 微化石に記録された小天体の衝突
 ■深海底から見つかった大事件の痕跡 ■イリジウムスパイク――戯言から定説へ
3.6 衝突と絶滅は同時に起こったのか?
 ■再堆積 ■シニョール・リップス効果 ■研究成果の見直しによる小天体衝突シナリオ
3.7 大絶滅後、プランクトンの運命
 ■植物プランクトン ■生物ポンプの停止。そして再開 ■淡水域ではどうだったのか?

第4章 微化石が語る古日本海
4.1 日本海の形成と日本列島の成立
 ■日本海は淡水湖へと変化した? ■日本海の形成
4.2 ラカストリン・アクチノキクルス 湖沼史を語るプランクトン珪藻
4.3 淡水珪藻が語る湖沼史
 ■日本列島のラカストリン・アクチノキクルス ■淡水珪藻、主役の交替 ■淡水珪藻、興味深い研究テーマ
4.4 湖沼堆積物の年輪 湖底の縞はなにを語る?
 ■三方五湖の縞々珪藻土 ■縞模様は珪藻のライフサイクルから ■緑黄色の粒の正体 ■縞の記録を読み解くと……
4.5 海底にも縞はある
 ■サンタバーバラ海盆と古仙台湾 ■貧酸素水塊のやっかいな副産物――青潮
4.6 縞に記録された100年
 ■縞を読み取る

第5章 微化石が語る日本列島の海
5.1 海の大河
 ■冷やされた海水は深海へ ■熱塩循環がストップすると……
5.2 プランクトンのプロビンス分化 微化石が語る海流の歴史
 ■コスモポリタンな珪藻「タラシオネマ」と「キャビターツス」 ■プランクトンのプロビンス分化
5.3 古黒潮と黒潮
 ■日本の亜熱帯化 ■インドネシア海路が閉じたから?
5.4 開いたり閉じたりする? 対馬海峡と対馬海路

関連記事
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 植物

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://birdbookreading.blog.fc2.com/tb.php/490-a89743c2
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

中の人

アクセス

RSSリンクの表示

最新記事

カレンダー

アクセスランキング

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム