ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

鳥たちの森 (日本の森林/多様性の生物学シリーズ (4))  

鳥たちの森 (日本の森林/多様性の生物学シリーズ (4))
日野 輝明



僕が野鳥を真面目に見だしたのは約20年前だが、その頃に比べ、
野鳥観察・撮影は相当普及した。
写真による詳細な全種図鑑。ネット・携帯電話の普及による情報の伝播。
デジタルカメラ等の普及による野鳥撮影の廉価化。

これだけ普及すれば、研究面のハイ・アマチュアも増加し、日本の鳥学は急速に進展するはずだが、残念ながらそうではない。
一般化といっても、残念ながら大衆化の方に進みつつある。

その要因の一つとして考えられるのが、多くの観察・撮影者が「識別」にウエイトを置いていることだ。

おおむね図鑑では、種の識別、性・齢等の識別、鳴き声、生息時期・地域・環境が短くまとめられている。
それは良いのだか、そうしたハンディな図鑑では、個々の種の生態-餌、縄張り、抱卵・育雛、換羽、群・単独行動の意味等々は欠落している。
だが、野鳥は生物であり、長い進化の歴史を経てこれ程までに分化したのは、単に「形態」のためではない。

また、鳥類が野生動物であるからこそ、他の生物との関わり(食物連鎖や共進化など)もある。

その視点無しに野鳥の識別だけに拘るのは解せないし、もったいない。
だから観察会では、目の前の個体の種(亜種)、性・齢等の識別を行った上で、そこから「なぜここにいるのか」ということを解説するよう心がけている。十分にできているかどうかは分からないが、努めてはいる。

そして、こうした観点から「鳥類」を学ぶには、ハンディな図鑑だけでは不可能である。

本書は、鳥類と「森」というテーマで、その相互作用を解説するもの。
種子散布、昆虫類の補食、縄張りや群行動(特に混群)、生息環境の変化等、扱う分野は多岐にわたっており、森林性鳥類の「生き方」を知るには良い入門書である。

図鑑の次の世界に進みたい方に、お勧めする。

なお、類書の中では、「花・鳥・虫のしがらみ進化論―「共進化」を考える 」も面白い。
興味ある方は、ぜひ。

【目次】
まえがき
1章 鳥は森で生まれた
1・1 鳥は恐竜である
1・2 森が鳥を生んだ
1・3 森が鳥を進化させた
2章 鳥が森を作る
2・1 種子をまいて森を広げる
2・2 花を咲かせて森を保つ
2・3 巣作りが森を変える
3章 鳥が森を育てる
3・1 虫を食べて木を育てる
3・2 食べられるものたちの反撃
4章 森の鳥たちの敵対関係
4・1 似た鳥どうしの競合
4・2 托卵する鳥とされる鳥
4・3 食う鳥と食われる鳥
5章 森の鳥たちの誘因関係
5・1 競い合う鳥たちの群れ
5・2 他者に依存した場所選び
6章 森が変われば鳥も変わる
6・1 地理的歴史が鳥を変える
6・2 森の形が鳥を変える
6・3 自然撹乱が鳥を変える
7章 森の鳥を守る
7・1 森の鳥を脅かすもの
7・2 鳥の多様性から生物多様性へ
あとがき
引用文献
索引
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