ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

メジロの眼―行動・生態・進化のしくみ  

メジロの眼―行動・生態・進化のしくみ
橘川 次郎



2014年、日本の鳥類の研究または鳥類保護に関し、特に顕著な功績があった人に贈られる第18回山階芳麿賞が、橘川次郎・小西正一の両氏に贈られた。

小西氏は、「小鳥はなぜ歌うのか (岩波新書)」という著書を読んだことがあるが、橘川次郎氏の名前は全く知らなかった。

そこでプレス・リリースを見ると、この両氏は海外の研究者であり、だから今回は「特別賞」として贈与するのだ、とあった。
そして橘川氏は、オーストリアでメジロの研究を行っている研究者である、と。

その方の、おそらく唯一の日本語での著書が、本書である。
古風な感じすらする、地味な装丁。タイトルも奇を衒ったものでもない。
おそらく部数も少ないだろうし、刊行当時、僕は見過ごしていたようだ。

しかし本書は、とんでもなく大規模・長期間の野鳥研究の成果が凝縮されている。

著者は、オーストラリアのヘロン島で、なんと1965年から約30年間、島のメジロ全てに標識をつけ、その巣を見つけ、親族関係を明らかにしてきた。
そして島における個体と群の生活、そして個体数の変動、進化に至る(と思われる)要因等について、極めて具体的な成果を挙げていく。

今後これほどの長期間・大規模な研究が個人の研究者によって成し遂げられるとは考えにくいし、特にそれが日本人の手によることは困難だろう。

鳥類を通した進化の研究といえば、「フィンチの嘴―ガラパゴスで起きている種の変貌 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)」が有名だ。

残念ながらメジロは、あそこまでの進化的ダイナミズムは無い。

だが、だからこそ、日本の我々の周囲にいるメジロとも共通する進化の仕組みを理解するヒントを、本書は提供してくれる。
また本書の巻末には、参考文献、引用文献、用語説明、諸索引が完備されており、この本は世界に繋がる窓となっている。

本書は、オーストラリアで活躍する大鳥類学者が、日本に残してくれた贈り物であり、その価値は、時が経つにつれてより高まるだろう。
これほどの成果が、日本語で読めることは幸せである。

【目次】
メジロとの出会い
1 メジロの社会(一) 群れ生活
2 メジロの社会(二) 順位制の役割
3 メジロの生態(一) 生活史
4 メジロの生態(二) 親の習性
5 メジロの生態(三) 個体群動態
6 メジロの生態(四) 分散と移動
7 メジロの進化
8 行動、生態、進化のしくみ







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category: 野鳥

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