ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

アメリカ最強の特殊戦闘部隊が「国家の敵」を倒すまで NO EASY DAY   

アメリカ最強の特殊戦闘部隊が「国家の敵」を倒すまで NO EASY DAY
マーク・オーウェン,ケヴィン・マウラー



アメリカの特殊戦闘部隊と言えば、陸軍のグリーンベレー、デルタフォース、
海軍のNavy SEALsが有名で、フィクション・ノンフィクション問わず様々なメディアで取り上げられている。
近年よく聞くのがNavy SEALsだが、その中でも更に精鋭を選抜して構成されるのが著者が属していたDEVGRU。特殊精鋭部隊の更に選抜部隊なのだから、その実態には不明な部分が多い。

ところが、本書は、著者がNavy SEALsからDEVGRUに選抜されるまでの試験、DEVGRUの隊員・チームリーダーとして関わった様々な作戦を紹介する。中でビンラディン暗殺作戦については、かなり詳細な地図。作戦展開図などを付しており、詳しい。
こういう内部暴露本の常として、やはり軍の戦術、技術、手順や科学技術などは、秘すべき情報は隠されているし、時系列がぼかされてい箇所もある。
またアメリカ合衆国が本書の内容を正確という筈もないし、「秘して語らず」という伝統のあるNavy SEALs他隊員からは、むしろ「嘘だ」と言われることもあるだろう。
だから、本書が正しい・間違っているという点に拘るのは不毛と考える。現在のアメリカ特殊戦闘部隊の参考情報として読みたい。
特に、すでに著者はマット・ビソネット(Matt Bissonnette)だと特定されているようなので、全てが虚構ということはないだろう。

さて、まず本書を読んで痛感したのは、まずはその徹底した現実主義だった。
作戦において理想も期待も持たず、考えうるシチュエーションを全て試す。
また任務完了後、殺害した人物を特定するために血をぬぐった写真を撮影し、DNAを採取し、PCや資料など、持って帰れるものは全て持ち帰る(SSE)。
戦争の是非については、その立場や論点から様々な意見があることは承知した上でだが、
実際に戦争なり軍事活動を行わざるを得ないシチュエーションになれば、日本はここまで徹底したリアリズムを突き通すことができるのだろうか、と思わざるを得ない。
リアリズムなき戦争は、命の浪費に過ぎないだろう。
兵士の育成や作戦行動が日常化しているアメリカの到達点に対して、軍事アレルギーから拒否するのは簡単だが、もし日本が侵攻された時に、命を粗末にする作戦を展開されては困る。
(なお、「日本が侵攻されることはない」という考えに立つことが、すでにリアリズムの放棄だろう。)

次に、現在のアメリカの交戦規程について。
包囲したら「呼び掛け」で降伏するよう呼びかけるとか、「武装していない者は攻撃してはならない」とかいうものだ。もちろん、人道上は正しい。
だが、相手がこの交戦規定を利用すれば、単なる「逮捕」で終わる。そして数か月のちには釈放され、再びゲリラ的に戦うことになる。

この交戦規定を順守することで作戦が破綻したのが、レッド・ウィング作戦。4名のSEALs隊員が攻撃目標近くで3名の山羊飼いと接触し、前線基地との通信連絡ができなかったことから、交戦規程に従い3名を非戦闘員とみなして解放。その結果、タリバンに通報され、隊員3名が死亡、隊員を救おうとした即応部隊のヘリも撃墜され、16名が死亡した。その顛末は、「ローン・サバイバー」でも描かれている。

交戦規程は現代戦では当然あるべきだろうが、果たして日本ではどうなるのだろうか。
イラクに派遣された頃、自衛隊の交戦規程では殺されるまで応戦できないようなモノだった印象があるのだが、このあたりの議論が継続されないのもリアリズムの欠如だろう。

さて、本書では、かなり話題になった様々な作戦に著書が関与していることが触れられている。

もしお読みになる際は、デルタフォースなどが参加していたが悲惨な結果に終わったモガディシュの戦闘を描いた「ブラックホーク・ダウン」、ソマリア沖でのアメリカ人船長誘拐事件の「キャプテン・フィリップス」、先に触れた「ローン・サバイバー 」、そしてビンラディン暗殺計画を描いた「ゼロ・ダーク・サーティ 」などを見ていると、文章が映像として浮かびやすいだろう。


【目次】
プロローグ ブラックホーク・ダウン ビンラディン暗殺作戦
1 グリーン・チーム DEVGRU選抜の厚い壁
2 キル・ハウス 世界最強の特殊部隊へ
3 教訓を学ぶ SEAL5時代のイラク駐留
4 ナイト・ストーカーズ 武器商人を急襲せよ
5 3度目のイラク派遣 ターゲットを急襲する日々
6 ソマリアの海賊 人質救出作戦の顛末
7 長い戦争 ナンバー2からチーム・リーダーに
8 キル・ゾーン アフガン最悪の州にて
9 UBL 運命のオペレーションのはじまり
10 ネプチューン・スピア ”ペーサー”を倒せ
11 出撃命令 仕事そのものが報酬だ
12 お出かけ 出発数時間前
13 C1制圧 側近との銃撃戦
14 ビンラディンの息子 あっけない幕切れ
15 「3階、確保!」 ビンラディンの最期
16 タッチダウン 「やりとげちまった夜」
17 現場からの脱出 自由に向かって飛べ!
18 確認作業 そして任務は終わった
19 ろくでもない休暇 最後はオバマだと?
エピローグ








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category: 戦争

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

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コメント

ZAN様
コメントありがとうございます。
本書では、お尋ねのCH-47が撃墜された作戦については、触れられていませんでした。
残念です。

レビューではあまり触れていませんが、本書では、著者がDEVGRUに選抜されるまでの試験、トレーニングなどが詳しい描かれていまして、この点はZAN様の興味を惹くかと思います。一方的にそう感じるだけですが。

ブラックホーク・ダウンは、原作読んでいませんでした。早速Amazonの欲しいモノリストに入れました。

多摩川の水は冷たかったのではないかと思います。でも武勇伝を楽しみにしておりますので、また頑張ってください。見てたらカヤックやバイク欲しくなりますね。

BIRD READER #- | URL
2015/02/13 21:14 | edit

こんにちは。

今回ご紹介されている本は自分の興味のある内容でした。

一つ質問があるのですが、お答え頂けましたら幸いでございます。
ビンラディン殺害作戦の3ヶ月後にも、タリバンの幹部を襲撃する作戦が行われたのですが、その時にCH-47が撃墜されて38名の米兵(大半がDEVGRU)が死亡したのですが、この事については本書で触れられていますでしょうか?

そういえば、ブラックホークダウンは映画では美談になっていましたが、原作の強襲部隊は軍や兵士の負の部分が現実的に描かれて180度違う内容だったので読み応えがありました。

ZAN #- | URL
2015/02/13 10:50 | edit

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