ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

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カブトムシと進化論―博物学の復権  

カブトムシと進化論―博物学の復権
河野 和男



進化という概念が定着した時代と国にあって、つくづく良かったと思う。

例えば目の前にいるスズメを理解するだけでも、進化という認識は欠かせない。
鳥類というグループ、その中で、種子食の野鳥として在る意味。
スズメの色、鳴き声、形態、生態-そして、現在の日本に生息していること。全てに必然性がある。
進化という概念抜きで、その必然性を理解するのは困難だ。

また、特定の生物の進化史を辿ることは、歴史時間の間に、その生物種に与えられた外部要因を調べることに直結する。外部要因とは即ち、気候変動や生物種との競争等だ。
そして、複数種に共通する気候変動や生存競争を読み解けば、それは地球の歴史に繋がっていく。

ただ、ダーウィンの「種の起源」が1859年だから、まだ進化論という学問は150年程度しか経過していない。だから、「進化」というメカニズムは歴然としてあるにも関わらず、そのメカニズムを理解する「進化論」はまだまだ未解明な点も多い。

それでも、というか、だからこそ「進化論」は面白い。

ただ、「進化論」の最新の知見や最先端の成果は、様々な研究者によって発表されているものの、ついつい陥りがちなのが自己流の進化論解釈に陥り、既に否定された(されつつある)研究こそ真実、と思ってしまうことである。
「進化論」がいかなる展開を辿ってきたのかという点は、やはり押さえておく必要がある。

本書は、「カブトムシと」というタイトルではあるものの、
第1章のダーウィンから第7章の木村資生の分子進化の中立説に至るまで、1/3は進化論史の解説に充てられている。凡百な概説ではなく、非常に丁寧な解説である。
(木村資生の中立説については、「生物進化を考える (岩波新書)」を。レビューはこちら。)

また、第8章からは「種」という概念や、「門」等の高位分類の実在性に関する議論の紹介。
そして第18章からは、種の多様性の解説と、
1冊を通して、進化論史の教科書のような丁寧な内容となっている。

もちろん、その解説の実例として、随所に甲虫類の実例を多数紹介するとともに、種間変異と種内変異の関係、それの進化における意味等を説明する。カラープレートも37図収録されており、著者の説明がビジュアルに理解できるのはありがたい。

最終章までで300pを超えるものの、「進化」についてベーシックかつスタンダードな知識を得るにあたり、この本はとても有用な一冊になるだろう。

【目次】
カブトムシとダーウィン
リンネまでの静的自然観
流転のラマルク理論
至高の銀メダリスト:ウォレス
進化論は進化しないのか?―ネオダーウィニズムと「バベルの図書館」
主体性の進化論:今西錦司
分子進化の中立説:木村資生
進化と進歩、偶然と必然―人間の測り間違い
ゆっくリズム対断続平衡―グールドの異議申し立て
大進化と小進化―前途有望な怪物、ゴールドシュミットの挑戦
進化は末広がり、それとも先細り?
たくさんある種の定義-奇人ホールデンとマイヤーの種概念
地理的隔離と生殖隔離、種分化の仕組み-ドブジャンスキーの見識
種の実在性
高位分類群の定義:分岐分類と進化分類
高位分類群の実存性:系統発生制約
似ているということ-相同と相似そして並行進化
生物多様性:熱帯と温帯
地球上に生物は何種類いるのか?
進化にセカンドチャンスはあるのか? -目下、六回目の大絶滅中
甲虫類の性的異型 -カブトムシの角はどこからきたのか?
カブトムシの角はなぜ長い?
人はなぜ虫を集め、進化を考え、それを語るのか?

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