ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

イワナの謎を追う (岩波新書 黄版 272)  

イワナの謎を追う
石城 謙吉
【知的冒険度】★★★★ 【殿堂入り】

イワナの謎を追う (岩波新書 黄版 272)イワナの謎を追う (岩波新書 黄版 272)
(1984/07/20)
石城 謙吉

商品詳細を見る




 香川県に住んでいると、渓流という言葉はちょっとよそよそしく感じられるし、イワナは縁遠い魚である。
しかし他県では、渓流釣りも盛んだし、イワナももっと身近なようだ。この点はうらやましい限り。
 そのため、本書のタイトルを見てもあまりピンとこなかった。そもそもイワナじたいがよく分かっていないのだから、謎ってなんだ?という感じである。

 本書は北海道で、ふと釣りの際に見た二つの河川でのイワナの斑点の色の差から、それまで分類が混乱していたイワナについて、少なくともこれらは別種だ、と明確な解を示した研究過程を明らかにしている。

 章立ては著者の研究発展の流れをふまえている。例えば分布調査一つにしても、特定地域の平面的な分布から垂直的な分布、そこから北海道全域での分布調査と広がっていく。
 また稚魚の捕獲の苦労話からスタートし、2種の生育段階の違い、河川型と降海型の存在などに発展していく。
本書は分類学のケーススタディとして、知的冒険に満ちた一冊である。

 また研究過程で、河川の形態分類、生存競争、食いわけ、すみわけ、K・r淘汰など、様々な観点からの検討もあり、生態研究の基礎を学ぶこともできる。

【目次】
第1章 不思議な淡水魚
 幽谷の華/世界のイワナ/原野の雑魚/熱い論争
第2章 二つのイワナ
 根釧原野/赤い斑点と白い斑点/戸籍調べ/細分主義と統合主義/種とは何か
第3章 原野の王国
 二つの陣営/山の川と湿地の川/共存河川の分布関係/変異か、すみわけか
第4章 同じ川の中で
 稚魚はいずこ/それぞれの生い立ち/発育の過程/帰ってきた降海型/清流の純血主義
第5章 旅立つ者と残る者
 降海型と河川型/分かれ道/ゆきつ、戻りつ/幽谷の鞍馬天狗
第6章 食いわけとすみわけ
 円卓の騎士/ガウゼの仮説/形質の分化/干渉の手段
第7章 水槽の稚魚たち
 秩序ある社会/二つの制度/弱者の位置/種間競争の論理
第8章 壮大なドラマ
 北海道における分布/上下の拮抗/道南の落人部落/壇の浦の戦い/古き者、新しき者
あとがき


【メモ】
※本書にはかなり有益な記述が多い。下記はごく一部。

p15
・イワナはサケ科の中でも特に冷水性が強いため、分布は北方域に偏る。また同じ水系では最も上流を好む。
・イワナ属は多様な形態の変異を持ち、分類に役立つ客観的な形質的差異がなかなか見つからないため、魚類の中でも特に分類が混乱している。

p16
・イワナ属は大きく三つ。
 カワマス(1種)、レイクトラウト(1種)、それ以外のアルプスイワナ群。

p30-
・筆者は北海道の忠類川では斑点が赤いイワナ、当幌川では斑点が白いイワナを得た。
これらの分類はかっても議論された。
著者の研究:
・両者は生息域、繁殖形態に明確な差異があり、赤点型はオショロコマSalvelinus malma、白点型はアメマスS.leucomaenisとなる。
オショロコマは河川型のみ。アメマスは降海型もある。
ある個体が河川型か降海型かになるのは水温も影響。オショロコマはより冷水温に適応。そのため低水温の同環境化では、アメマスは成熟が進まず河川型が生じにくい(降海型が増える)が、オショロコマは河川型が増える。オショロコマはより北方種。
北海道はアメマスとオショロコマが生存競争を行なっている場所。水温の高い北海道の西南部ではアメマスが主。中央部では標高が高い場所にのみオショロコマ。
特別なのが知床半島付近。冷涼な気候、河川が急で河口付近まで山岳渓流の形態であることなどから、オショロコマが優位。→北海道での最後の砦。
関連記事
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 魚類

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://birdbookreading.blog.fc2.com/tb.php/48-a1785ff8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

中の人

アクセス

RSSリンクの表示

最新記事

カレンダー

アクセスランキング

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム