ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

スノーボール・アース: 生命大進化をもたらした全地球凍結 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)  

スノーボール・アース: 生命大進化をもたらした全地球凍結 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
ガブリエル ウォーカー



エポック・メーキングな知識が発見される時代に生きるのは、嬉しくもあり、怖くもある。
それが科学技術上のものならば、僕らの生活に直に影響するし、
過去の時代や遠い宇宙に関する知識であれば、それは「知識の変革」となる。

もちろん、何をエポック・メーキングな知識と捉えるか、それは人それぞれだろう。
ただ、例えば近年進行している「恐竜には羽毛があった」というのは、僕が若いころには想像もしていなかった世界だ。
今後、恐竜の復元図が、僕らの子供の頃のような姿に戻ることは無いだろう。

また、「眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く」(レビューはこちら)で示された、「眼」の誕生が、カンブリア紀に爆発的な進化を促したという説も、生物進化の研究史の中ではエポック・メーキングと言ってよいと思う。

そして、本書で示されているスノーボール・アース。
約7億3000万年前~約6億3500万年前に、全地球が凍結していたという仮説だ。

スノーボール・アースは複数回あったとされるが、いずれにしても、
「赤道あたりまで地球が凍結したことがある」という仮説は、圧倒的なインパクトを持つ。
もしそれが事実なら、その影響は地球の気候史だけでなく、生物進化史にも多大な影響を与えた筈だからだ。

本書は、そのスノーボール・アース仮説を1998年に発表したハーバード大学のポール・ホフマン教授を軸に、その仮説の構築に至るまでの先駆者の研究史から、発表後の反対論者との論争までを綴っている。

著者は中立的な立場で(ただスノーボール・アース仮説の方が妥当だろうというスタンスは窺える)、推進・反対論者双方にインタビューし、研究に同行し、それぞれの主張を紹介していく。
その対立は、学術論争というにはあまりに人間臭い。しかし、そうした人間臭さを知ることができるのも、スノーボール・アース仮説の構築が現在進行形だからだろう。

また、本書の原書は2003年に刊行されているが、訳者が2004年に翻訳した時点での論争の状況を「解説」で、
文庫化にあたり、2011年での状況を整理している。
これらによって、スノーボール・アース仮説がどのように検証されつつあるかも分かり、有り難い。

なお注意したいのは、本書はスノーボール・アース仮説の理論や証拠を学術的に整理した本ではなく(もちろん必要な情報は記載されているが)、研究者を軸として、その仮説と論争を紹介しているもの、ということだ。

そういう本だということを前提に読めば、非常に楽しめる一冊である。


【目次】
第1章 最初の生命らしきもの―生命四〇億年の歴史と氷の地球
第2章 北極―異端児ポール・ホフマンの出発
第3章 始まり―先駆者たちの業績
第4章 滋場は語る―仮説が誕生したとき
第5章 ユーリカ!―才能ある研究者たちの共同作業
第6章 伝道―論戦は始まった
第7章 地球の裏側―オーストラリアで見えてきたもの
第8章 凍結論争―過熱する議論を超えて
第9章 天地創造―カンブリア紀の大爆発へ
第10章 やがてまた
関連記事
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 地学

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://birdbookreading.blog.fc2.com/tb.php/477-8dae1f64
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

中の人

アクセス

RSSリンクの表示

最新記事

カレンダー

アクセスランキング

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム