ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

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富士山を汚すのは誰か ――清掃登山と環境問題 (角川oneテーマ21)  

富士山を汚すのは誰か ――清掃登山と環境問題
野口 健
【前向きに何かやりたくなる度】★★★★

富士山を汚すのは誰か    ――清掃登山と環境問題 (角川oneテーマ21)富士山を汚すのは誰か ――清掃登山と環境問題 (角川oneテーマ21)
(2008/05/10)
野口 健

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「①こういう課題がある。②改善策としてはこれこれがある。③だから僕はこうする。」
おそらくこれが野口氏の行動サイクルと思う。
野口氏にあるのは明確な問題意識であり、それを解決するにはどうすべきかというビジョン、そして行動力である。

過去の過ちを明らかにすることがあっても、それを非難することが目的ではない。

しかし多くの人は、「③だから僕はこうする。」だけを見て、野口氏の「勝手な」行動を憂う。
「出る杭は打たれる」という言葉で表される精神。しかしそれは、何も生み出さない。

また一部の人は、「①こういう課題がある。」と野口氏が示すことを、「問題をほじくりかえして」と思う。これもまた、何も生み出さない。

こうした見方が、かなり野口氏を誤解する風潮を生んでいるのではないだろうか。


野口氏の行動は、確かに「目的は手段を正当化する」というような、ちょっと賭け的なものもある。
しかしそれくらい荒療治でなければ、日本の大多数は動かないのも事実。

本書は、野口氏の問題意識、それへの取り組み方、清掃登山の経緯を詳しく知ることができる一冊である。
また「行動するとはどういうことか」を教えてくれるケーススタディとしても有益であり、
何らかの問題意識を抱えている人にはぜひ読んでいただきたい。
もしかしたら、自分なりの行動を始めるきっかけになるかもしれない。


【メモ】
p31
「過去にごみを捨ててきたことを、あれこれ詮索して責めようなどというつもりはない。ただ、それを知っているならば、気がついた時点で反省し、悔い改める努力をすればいいじゃないかと思った。いまからなんとかすることを考えるべきではないのか。」
→野口氏の考え方のスタンスを端的に表している。

p52
登山スタイル:
・極地法:
 ベースキャンプと上層部のキャンプを何度も往復し、ルート工作をしたり、必要な物資や食料を荷上 げする。成功率が高い。
・アルパイン・スタイル:
 少人数で、様々なものに頼らずにアタックをかける。
 日本は80年代以降、極地法でエベレストに挑んだ。大人数大規模なので、ゴミもよくでる。
 欧米隊はアルパイン・スタイル。ゴミが少ない。
 当時のゴミ意識もあるが、スタイルの違いでゴミの出る量も大きく差があった。
 現在は日本もアルパイン・スタイルが多く、ゴミが少なくなっている。一方、現在韓国隊が大規模隊で登頂している。
 なぜ大規模隊か? → その時点の当該国が、「登頂しないとならない」というプレッシャーがある。成功率の高い極地法を選択。

→山でのゴミの出し方に、登山スタイルが大きく影響していることを実感。

p84
「富士山の山頂は県境が明確になっていない。富士山は、行政区分がなされるはるか以前から山小屋の利権やら何やら綿々と続いてきたところだけに、簡単には線引きできないのだ。」


p88
「何かを伝えたい、変えたいというのに、人に共感されないやり方をやっても意味がない。伝え、広めるためにはどうしたらいいか、表現の仕方は重要だ。」
→自分の活動を振り返って、反省。

p163
「日本人がレジャーとして求めているのは、たぶん自然と触れ合うことではなくて、観光スポットなのだ。」
→強く納得。

p166-167
スウェーデンには、世界で唯一「自然享受権」という権利があるそうだ。
「なぜスウェーデンでは自然享受権が認められているか。
 環境教育を徹底させている強みがあるからだ。四歳ごろから環境教育を始めているという。だから、自然とか環境に対してどう接したらいいかをみんながしっかりと理解している。モラルを逸脱した行為をしないという大前提ができている。自分の責任の範囲内で自由にどうぞと言っても、その自然環境を傷つけるとか、過剰に採ってしまうことがない、そういう発想が国民に根付いているという自信が可能にするのである。」
→日本では自然が身近すぎるのではないか。客観的に自然と相対することはできない。

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