ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

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ワニと恐竜の共存: 巨大ワニと恐竜の世界  

ワニと恐竜の共存: 巨大ワニと恐竜の世界
小林 快次



カメ(「カメのきた道―甲羅に秘められた2億年の生命進化 (NHKブックス)」(レビューはこちら)」とくれば、ワニである。

ワニの進化史が知りたくなって、見つけたのが本書。

表紙だけ見ると子供向けのように思えるが、北海道大学博物館の平成25年度企画展示「巨大ワニと恐竜の世界-巨大爬虫類2億3千万年の攻防」をもとに作成したもの。
ワニの分岐図、様々な化石写真など、通常は目にすることができない貴重な資料が満載である。

なぜ恐竜が絶滅し、ヘビ、カメ、ワニが生き残ったのか。
恐竜が世界のどこかに生き残っていることを夢見た少年の頃から抱いている疑問だ。
その疑問が解けることを願いつつ、本書を読んだ。

本書で驚いたのは、まずワニ類は恐竜と同一の祖先-主竜類から始まり、進化史上では、恐竜に先行してワニ類が多様化し、繁栄したことだ。

正確には、まず約2億5000万年前頃に主竜類が出現。
ここからワニ類に進化するクルロタルシ類(Crurotarsi)と恐竜へ進化するアヴェメタタルサリア類(Avemetatarsalia)に分岐する。
共に四足ながら、足が体の真下に伸びる直立歩行を行い、移動速度が速く、エネルギーロスが少ないという特徴を持つ。

ただ、クルロタルシ類は元々這い歩きを行う生物から進化しており、骨格的な違いから、スムーズな歩行はアヴェメタタルサリア類の方が得意だったようだ。

ただどういう理由か、進化史では先にクルロタルシ類が多様化に成功し、多くのニッチを占めた。
その結果、アヴェメタタルサリア類はクルロタルシ類が減少するまで多様化が抑えられた。
いわば、ワニ類が衰退した結果、恐竜の多様化が可能になったのである。


クルロタルシ類の多様化については、本書に様々な化石資料、復元図があり、楽しい。
例えば獣脚類恐竜と間違えるほど巨大化した、サウロスクス(Saurosuchus)。
ティラノサウルス類との収斂進化といった感じすらある。


本種は約2億4000万年前~約2億年前まで生息しており、恐竜は約2億3000万年前に出現したので、両社は共存・競争していた。
サウロスクスを含むラウイスクス類が絶滅してから、恐竜が巨大化する。

一方、植物食に進化したワニ形類もあったという。
例えばヤカレラニ(Yacarerani)はウサギのような門歯があり、集団で行動し、掘った穴に卵を産んでいたらしい。

こうした多様化が進むものの、総体的には恐竜類に圧迫され、ワニ類は水辺に進出し、そこを支配することになる。

化石資料では、1億5000万年前には扁平な頭、その上に位置する眼・鼻・耳、背中には鱗板骨という、
現生ワニとそっくりな種が出現している。
この後の進化は、水中で餌を加えていても呼吸できるよう、内鼻孔の位置が後退するバージョンアップ程度にすぎない。
「進化が止まった」と見がちだが、実は既にこの時代には「ワニ類の生活様式」、「ワニという生物の基本デザイン」は完成していたということだ。

そして白亜紀後期までに、ワニ目は、現生の科に元となるグループが全て出揃う。
下の◯印が、現在のワニのグループの元となる上科だ。


ワニ目 --- ◯インドガビアル上科
     ---  プレヴィロストレス類 --- ◯アリゲーター上科
                          --- ◯クロコダイル上科

また白亜紀後期には、全長12m、体重8.5tという巨大ワニ、デイノスクスも出現する。
恐竜に主役の座は譲ったとはいえ、ワニ類の生物としての完成度の高さを示していると思う。



そして、恐竜が絶滅したK-pg境界(白亜紀-古第三紀境界)。
恐竜は絶滅し、ワニ形類は生き延びた。
その理由として、ワニ形類が淡水生活だったという説もあるが、白亜紀後期から新生代にかけてワニ類は多様化し、完全陸棲のセベコスクスも、完全海棲のディロサウルス科も生き延びている。
また、現代型ワニ目も生き延びている。
ただ残念ながら本書でも、なぜワニ形類が生き延びたのか、その答えはまだ不明とのことだ。


だが、数億年前から現在に至るまでのワニの繁栄は、現在もその分布等を見ることでうかがえる。
現代のワニは、北緯35度以南、南緯33度以北に生息。
特に低い温度では生息できないが、南極大陸をのぞく世界全域に分布している。

これだけの範囲に生息していながら、現存種の属別の内訳は次の通り。


◯インドガビアル上科 1属1種(インドガビアル) 長い鼻先と細い歯

◯アリゲーター上科 4属8種  頭骨を上から見ると口先がU字型
 アリゲーター属   2種
 カイマン属     3種
 ムカシカイマン属  2種
 クロカイマン属   1種

◯クロコダイル上科 3属14種 頭骨を上から見ると高さの高い二等辺三角形や鼻先が長い。口先がV字型
 ワニ属       12種
 コビトワニ属    1種
 マレーガビアル属  1種

計、たった23種。これだけの種数で、世界の淡水域で食物連鎖の頂点をカバーしているのだから、
やはり生物としての完成度が優れているのだろう。


【目次】
古代ワニは私たちに何を語るか?

第I部 ワニの進化史

ワニと恐竜のわかれ道
ワニ類への道 クルロタルシ類
ワニ型類の起源
ワニとしての一歩 原顎類
ワニのチャレンジ(1) 陸上への進出
ワニのチャレンジ(2) 水中への進出
ワニのチャレンジ(3) サルコスクス
ワニがワニになった日 半水棲生活
現代型ワニの出現
現代型ワニの起源
恐竜時代の3つのワニ目
恐竜時代の巨大ワニ デイノスクス
恐竜絶滅とワニ
恐竜絶滅後のワニ目
トミストマ亜科 マチカネワニ
現在のワニ目

第II部 ワニ型類と恐竜類の争い
約2億3,000万年前の南米大陸 ワニ型類と恐竜類の誕生
約1億5,000万年前の北米大陸 現代型ワニの誕生と恐竜の巨大化
約1億年前のゴンドワナ大陸 ワニの巨大化と恐竜の繁栄
約7,000万年前の北米大陸 巨大ワニと巨大恐竜の闘い
現在 生き延びたワニ,姿を変えた恐竜

コラム(1) 三畳紀の世界を支配していたクルロタルシ類
コラム(2) ファソラスクス(ラウイスクス類)とティラノサウルスの頭骨
コラム(3) 哺乳類のような歯を持つノトスクス類の繁栄の理由
コラム(4) 完成度の高いデザイン
コラム(5) マチカネワニの謎
コラム(6) 恐竜絶滅の原因
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