ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

カメのきた道―甲羅に秘められた2億年の生命進化 (NHKブックス)   

カメのきた道―甲羅に秘められた2億年の生命進化 (NHKブックス)
平山 廉



我が家周辺には、ため池と田が散在している。
おかけで夏、夜に雨が降れば、道路にはカエル爆弾が溢れかえって大変である。
だいたいはアマガエル・トノサマガエル程度だが、時折りウシガエルが出現。
そして、トラクターが落とした土塊と思っていたら、いきなり動き出すのがカメである。
そのサイズ感。絶対に轢きたくないシロモノである。

また子供の頃、ため池でうどんを餌にフナを釣っていたら(今から思えば、餌が「うどん」っていうのも香川らしくて素敵である)、よくカメが釣れた。
ひっくり返してたらいつの間にか起き上がり、結構早く逃げたものだ。

しかし、全体としてはやはりカメは鈍くさい。
それなのに、なぜ恐竜が絶滅し、カメが生き残ったのか。不思議でならない。


本書は、そのカメの進化史を紐解く一冊。

まず、現生のカメ類についてすら、自分は全く知らないことに気づかされた。

現生種は大きく二種類に分類されること。
頭を真後ろに引っ込める潜頚類と、頭を横に倒し、甲羅の縁に隠す曲頚類。
映像等では何度も見ていたくせに、分類上の形質と認識していなかった。

また、現生種の特徴として、スッポン科も含めると、現生種約290種のうち1/3に相当する87種で、甲羅の可動性を獲得しているということ。特にスッポン科以外のほとんどの種類は、新第三紀の間に可動性を発達させており、進化の方向性として顕著らしい。

遥か古代のカメについては、もっと知らない。

そもそもカメは、ワニと同様、恐竜よりも早い時代から分化していた爬虫類であり、その祖先種は脚が真っ直ぐ下に伸び、四足で陸上を直立歩行していたらしい。
この体制は、歩くときに体を左右に波打たせない。
そのため体の柔軟性は失うものの、機動性に富んでいたようだ。

そしてこの「体の柔軟性がない」ということが、体に固い装甲を持つことを可能にした。
また筆者の見解では、体に柔軟性が無いからこそ、固い卵の殻を得るようになった。
なるほど体を左右に波打たせるトカゲやヘビでは、卵は軟らかい。
たかが卵の形質だけでも、進化上の意味が蓄積されているのだ。


この他本書では、カメの進化史を辿りながら、興味深い話題が続く。

著者が発見した世界最古のウミガメ類(1億1000万年前に生息)、サンタナケリスの研究から、ウミガメが海に進出する際、最初に起きた大きな変化は塩分濃度の調節のための涙腺の肥大化であり、体サイズや「鰭脚」の増大は二次的なものだったという話。

国立科学博物館にも展示されている巨大な古代カメ、アルケロン(アーケロン)の化石は、北米サウスダコタ州のごく一部の地域の白亜紀終わり(約7000万年前)の地層からしか見つかっていない。
しかも19世紀末に最初の化石が発見されてから、わずか5体しか知られていない(本書時点)ということ。

▼国立科学博物館のアーケロン
アーケロン2

白亜紀には汎世界的な分布を示すウミガメ類が見当たらず、新生代になって、ようやく現生種のように同一種が汎世界的な分布を示すが、その理由はまだ不明であること。

リクガメは遊泳能力は全くないに等しいが、肺の容積が大きいため浮力に優れており、長期の絶食にも耐え、真水の無い環境でも長期間生きられるほど水分を蓄える仕組みも持っている。
このため、長期漂流するという分布拡大の方法が可能になったということ。
絶海の孤島であるガラパゴスに、何でリクガメであるガラパゴスゾウガメがいるのか不思議だったのだが、何とアフリカから大西洋を漂流して南米に達し、更にガラパゴス諸島に漂着した個体の子孫がガラパゴスゾウガメだったのだ。ダイナミックかつ、何となくマヌケな話である。


また、日本に産出する化石カメについても詳しいが、
中でも中生代白亜紀後期(約8500万年~7000万年前)のオサガメ類、メソダーモケリスについて知ることができたのが、個人的に嬉しかった。

本書ては、メソダーモケリスは、アンモナイトも良く産出する北海道のほか、兵庫県淡路島や香川県の和泉層群でも発見されている、と記述されている。

香川県といえば、僕も化石に興味があって過去の文献を見ていたのだが、その中に塩江町のカメ化石の文献があった。

もしかしてと確認したところ、何と本書の著者が、その論文の著者の一人だった。
香川県高松市塩江町の上部白亜系和泉層群より産出したオサガメ科化石

香川県で発見されたのは、Mesodermochelys undulatus
円が閉じた、という感じである。こうした発見というか「納得」は、読書ならではの快感だ。


さて、冒頭の「なぜカメが生き残ったのか?」という疑問について。
本書では、ズバリという回答(仮説)は示されていない。

ただ、白亜紀末の大異変は、恐竜など大型爬虫類は滅ぼしたが、カメ、ワニ、トカゲなどの爬虫類、昆虫などの陸生の変温動物の多様性には影響を及ぼさなかったのではないか、という見方が提示されている。

巨大な隕石落下による気候変動という説は一般化してきているけれど、
まだまだ不明な点だらけである。それが楽しい。


【目次】
第1章 カメの体の驚異的な仕組み
第2章 多様な環境に進出したカメたち
第3章 謎だらけの起源
第4章 恐竜時代のカメたち―世界への大拡散
第5章 海ともう一つの世界へ―最古のウミガメの姿
第6章 甲羅を力に変えて―哺乳類時代のカメたち
第7章 迷惑な保護者
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