ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

MAKINO―牧野富太郎生誕150年記念出版   

MAKINO―牧野富太郎生誕150年記念出版
高知新聞社



どの分野にも偉大な先人、伝説として語られる先人がいる。
野鳥の世界だと日本野鳥の会創始者の中西悟堂だろうが、
一般の認知度としては、残念ながら牧野富太郎の比ではないだろう。

僕はさして植物に執着してはいないが、それでも「植物と言えば牧野富太郎」、いつの間にかそう刷り込まれていた。

しかし、牧野については、植物学の先駆者というイメージしかない。
いったい、牧野富太郎とはいかなる人物で、何を成したのかという興味は、ずっと燻っている。

本書は、牧野の出身地である高知の新聞社による記念出版。
たぶん牧野の悪い面は書いていないだろうけれど、入門としては良いかと思って手に取った。

結論から言うと、面白かった
牧野の、特に社会人として傍若無人さも面白いが、
それをフォローする著者の記述の苦労が、何といっても面白い。

さて、牧野とはどのような人物だったのか。

植物学者としては、圧倒的、伝説的だ。
高校や大学といった専門教育を受けてはいない。
しかし、誰にも真似できない植物への情熱と、調査や執筆における行動力。

今に続く「植物学雑誌」の創刊。
日本で初の植物図鑑とも言える「日本植物志図篇」の自費出版。
当時は海外雑誌へ投稿することが主流だった記載論文(新種の報告)を、初めて日本国内の雑誌に発表。
当時世界的に希少だった「ムジナモ」の国内での発見。

調査し、学術論文を書き、植物図も描き、図鑑としてまとめる。
いわば、一人だけで植物学を完結できるのだ。

卓越した体力・才能の全てを、植物に捧げた人物。それが牧野である。

一方、牧野の面白さ(と言うのも何だが)も、「全てを植物に捧げたこと」にある。

裕福な実家の財産を、自身の植物研究と生活に湯水のごとく費やし、ついに没落。
それでも生活を顧みないため、多大な借金を負う。
実家には結婚していた妻がおり、彼女が家業を任せていたが、何の手助けもしないまま、別に出会った女性と結婚。
借金を支援してくれた(数億円の支援だった)人や、自身を引き立ててくれた教授との確執。

社会的にはとんでもない人物だったようだ。

だが、それでも牧野は植物学の父として尊敬され、世間の人々に愛され続けている。

それは彼が、純粋に日本の植物研究のみに邁進したからだろう。

日本に産する植物の全てを研究すること。
多くの人々ができなかった、しかし日本にとっては絶対に必要な途方もない事業を、
牧野は、その生涯の全てを捧げて成した。

江戸時代末期に生まれ、昭和32年に没するまで、近代日本の成立・発展史において、植物分野を担った人物。
日本にこんな人物がいたことは、もっと語り継がれるべきだろう。

【目次】
プロローグ
利尻
屋久島
東京
神戸
仙台
晩年の東京
佐川、そして今

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category: 植物

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コメント

こんにちは。牧野博士は破天荒というか何というか、
お友達になると大変そうな方ですね。
ただ、明治から昭和という近代日本を構築する時代に、こんな規格外の方が、まるで巨木のように植物学分野に存在したというのは、日本と日本人にとっては幸せだったのだと思います。
牧野氏の懐具合や病状を報道したり、亡くなられた時の高知の人々の対応を見ると、みんな牧野博士が好きだったんだなあと実感しました。

BIRD READER #- | URL
2014/12/18 19:25 | edit

おもしろそうですね。2月に出版されていたものなんですね。
ぜひ注文したいと思います。牧野富太郎は読んではいましたが,学会とは相容れなかったことは有名です。開拓者の魅力に溢れた人だったんですね。

nitta245 #- | URL
2014/12/18 06:07 | edit

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