ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

世界はなぜ月をめざすのか (ブルーバックス)   

世界はなぜ月をめざすのか (ブルーバックス)
佐伯 和人



僕が生まれた年、アポロ計画は終了した。
物心ついた時には人類は月に行っており、「次に人類が月を歩くのはいつだろう」と楽しみにしていた。
特に、PC(初めて買ったのはX1Gだったなあ)を初めとした技術発展を見ると、
人類が宇宙に進出する時代はもう目の前のように感じたものだ。

だが、人類が再び月を歩る姿を見ることは、未だできない。

冷戦、不況、テロ、感染症など、様々な問題。
また、火星や小惑星への新たなミッション。

そうした「大人の事情」は理解できるものの、やはり月は特別だ。

その月探査が、近年活発化してきているという。

さて、まず本書で驚いたのが、
僕が感じていた「大人の事情」が、実はNASAによる印象操作の結果であることだ。

p19
「今さら月に行っても」という雰囲気があるが、アメリカは他国の月探査の価値を小さく見せ、月におけるアメリカの優位が揺るぎないものと印象付ける広報を行っている。

確かに、暗黙のうちに「月探査といえばアメリカ」と思っていた。

しかも一方で、NASAは「月面史跡保護ガイドライン」を定め、
人類最初の月面着陸を行ったアポロ11号では半径75m以内を立ち入り禁止、
最後の月面着陸を行った17号については半径225m以内を立ち入り禁止とした。
しかも、半径2kmの上空は飛行禁止、という。

これは法的拘束力はないとしているが、2012年には民間の月面探査コンテストをしている「X賞財団」と合意している。
これは遺跡保護としては妥当であり、おそらく各国が反対する筋もないのだが、
特定の国が月面を実効支配できる道を開いたことになる。
アルリカは、月の資源を支配することを現実化しつつあるのだ。

月は特定の国のものではないだろう、と思っていたが、
この印象は、1979年に国際連合総会が定めた「月協定」のことらしい。

「月の表面や地下、天然資源は、いかなる国家・機関・団体・個人にも所有されない(抜粋)」

ところがこの協定は、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、チリ、カザフスタン、メキシコ、モロッコ、パキスタン、ペルー、フィリピン、ウルグアイ、レバノンの13国しか批准していない。

アメリカ、中国はもちろん、我らが日本も、実はこの協定には批准していない。

そこまでして、月の「資源」は重要なのだろうか。

その点についても本書が詳しい。

まず宇宙空間ならではの資源が、月にはある。
それは、特定の「場所」だ。

120℃の昼と、-170℃の夜が、それぞれ15日続く世界。
ます、温度差が少ない場所の確保が、人間・機械にとって非常に重要となる。

また、太陽光発電が最も重要なエネルギー源になることを考えれば、
長時間の日照が得られる場所も重要だ。

そして、地球と隔絶された世界にあっては、
地球と常に通信できる場所も重要となる。

ところが、日本の「かぐや」が精査した結果によると、
日照期間が80%以上の場所はたった5個所。それぞれ数百m四方しかない。
しかもこのうち、地球と電波交信できる表側に位置するのは、たった2か所だ。

また、温度差や宇宙放射線が緩和される地下への縦穴構造も発見されているが、
この「自然の地下トンネル」として相当の規模があるのは、たった3か所だ。

また、物理的な資源として、チタンやウラン、トリウムが考えられるが、
これらも特定の場所に濃集している可能性があるらしい。

現在アメリカを初めとする各国は、この月資源の重要性に気づき、
月探査を活発化している。
中国やインドは、決して学術的に月を探査しているのではない。

実際は、月の資源を支配する方法を探査し、
実効支配する既成事実を作ろうとしているのだ。

こうした中で、日本はどのような立場であるべきか。
もちろん国益も考える必要がある。
ただ、日本は「はやぶさ」で示したとおり、
良くも悪くも学術的興味のみに、純粋に盛り上がれる国でもある。

日本も月へ行くこと。
世界にとって(特に独力では月に行けない国々にとって)、それは必要なことだと思う。

【目次】
月探査のブーム、ふたたび到来!
人類の次のフロンティアは月である
今夜の月が違って見えるはなし
月がわかる「8つの地形」を見にいこう
これだけは知っておきたい「月科学の基礎知識」
「かぐや」があげた画期的な成果
月の「資源」をどう利用するか
「月以前」「月以後」のフロンティア
今後の月科学の大発見を予想する
宇宙開発における日本の役割とは
月と地球と人類の未来
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category: 地学

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