ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

三葉虫の謎―「進化の目撃者」の驚くべき生態  

三葉虫の謎―「進化の目撃者」の驚くべき生態
リチャード フォーティ



太古の時代、普遍的に生息していたのに、現在は絶滅してしまった三葉虫。
現生の節足動物踏まえて想像するものの、数億年という時代差は圧倒的である。
その「数億年」という時間を具体化したのが、化石である。
そこでつい化石を入手してしまうのも、男のロマンとして当然であろう。

僕が持っているのは、今のところ三種類。

Elrathia Kingi (エルラシア・キンギ)。
カンブリア紀、5億年前の三葉虫だ。たくさん産出するらしく、いろんな店で安価に売られている。
Elrathia Kingi エルラシア・キンギ

Peronopsis Interstricia (ペロノプシス・インテルストリクタ)。
1cm弱。これもカンブリア紀中期(約5億年前)、三葉虫らしくない三葉虫。
Peronopsis Interstricia ペロノプシス・インテルストリク

Flexicalymene ouzregui (フレキシカリメネ ウーズレグイ)。
オルドビス紀。10cm程度の個体。体節がくっきりしていていい感じ。
(僕の個体のラベルは「Flexicalymene」だが、最近は「Diacalymene」に分類されている?)
Flexicalymene ouzregui フレキシカリメネ

こうして並べてみると、やはり生物で、生物らしいバリエーションがあるなあ、と思う。

本書は、その「生物としての三葉虫の変遷」について、様々な図版とともに紹介するもの。

原始的な生物と思いがちだが、グループとしては総計で約3億年生き延びたのだから、
当時の環境下においては、やはり大成功した生物である。

その成功の原因を突き詰めるのは難しいが、本書では三葉虫の様々な形態・生態的特徴を紹介しており、
自分なりに類推していく材料が得られる。

例えば本書では、その眼が透明なカルサイト(炭酸カルシウム、方解石)でできているという事実を紹介する。
カルサイト(方解石)というと、現生生物では無脊椎動物の骨に用いられているらしい。
すなわち、他の節足動物は軟らかい眼を発達させたが、三葉虫の眼は固いのだ。

しかも、三葉虫の眼のカルサイトは、その一部がマグネシウムになることで屈折率が変化しており、
その高マグネシウム層が球面収差を修正しているという。
この眼の発達も、当時としては成功要因だったのかもしれない。

さらに、多くの三葉虫は底生だったようだが、海中を遊泳しているものもいたというのだから、
一口に「三葉虫」といっても、やはり奥が深い。


さて、本書はそんなワクワクする話題と図版が含まれているのだが、
やや著者が饒舌に脱線する部分も多い。
三葉虫に関する学術的な解説書としてではなく、三葉虫研究者による三葉虫誌、という趣で、
時間をかけてゆっくり楽しむことをお勧めする。

著者には大英博物館での勤務をつづった「乾燥標本収蔵1号室―大英自然史博物館 迷宮への招待」(本ブログを始める前に読んだためレビューはしていない)もある。

それにしても、新しい三葉虫の化石が欲しくなってしまった。
余力と財力のある方は、実物化石を購入して、実物を見ながら読ことをお勧めする。


【目次】
1章 発見―三葉虫との遭遇
2章 殻―四億年前のタイムカプセル
3章 脚―奇跡の化石が浮かび上らせた実像
4章 結晶の眼―常識をくつがえす高度の視角
5章 爆発する三葉虫―生物の多様性をめぐる大騒動
6章 博物館―化石研究の舞台裏
7章 生死にかかわる問題―断続平衡説と悲劇の古生物学者
8章 ありうべき世界―三葉虫が教える太古の地球
9章 時間―科学における時間の意味
10章 見るための眼―科学者のイメージ


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