ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

0.1ミリのタイムマシン―地球の過去と未来が化石から見えてくる  

0.1ミリのタイムマシン―地球の過去と未来が化石から見えてくる
須藤 斎



今夏に入手。国立科学博物館に行く前に読みたかった。
科博でケイソウの拡大模型があったが、その面白さを理解できず、スルーしていた。
本書を読んでいれば、少なくともキートケロス属の「つぶつぶ」を見て楽しめたろうに!!

過去には、企画展もあったらしい。「微小藻の世界」

さて、珪藻(ケイソウ)である。
これは、どこにでも分布している植物プランクトン。
約1mm~0.01mm程度の大きさで、ガラスというか、珪酸質の殻で覆われていて、その殻には微小な穴が開いている。

珪藻化石では、その殻の空隙が調質効果を発揮するため、珪藻土(珪藻の化石の塊)として、調質効果に優れた壁土材としても利用されている。
また知らなかったのだが、七輪も珪藻土製という。空隙による保温効果が良いらしい。

さて、生物としての珪藻は、最も古いものは1億8500万年前(ジュラ紀)。
現生で2万~10万種ともいわれ、この珪藻が作り出す酸素は、地球上の約25%とも言われる。
身近な生物ながら、地球の生命環境に多大な影響を与えていることが窺える。

そして、過去の生命進化にも多大な影響を与えたらしいことが、本書のテーマでもある。
遥かな古代、渦鞭毛藻や円石藻が多かったが、
約3400万年前にこれらは減少し、ケイソウ(特にキートケロス属)の数・種類が急増したらしい。

それはなぜか?
そして、それは生命進化史にどのような役割を果たしているのか?

これを研究するため、著者が取り組んだ第一歩が「ケイソウ化石の分類」だ。

より詳しく言えば、「ケイソウ化石」のうち、キートケロス属の「休眠胞子」。

キートケロス属は栄養が少なくなると、殻の中に「休眠胞子」を作る。
(休眠胞子そのものが、分厚く穴が開いていない殻で覆われる)
これは数年から長くて20年休眠するが、その構造上壊れにくく、化石として残りやすい。

ところが、このキートケロス属の休眠胞子の分類は、長らく誰もなしえていなかった。

ケイソウの特徴は、必ず大きな殻と小さな殻によるセット(弁当箱のような構造)であるのだが、
化石ではこれらが分離し、どれが蓋で底なのか、またどうセットになるのかが分からなかったのだ。

筆者は大学・大学院時代にこの分類に取り組み、
・光学顕微鏡では 縁につふつぶの列が見える ものが、
・電子顕微鏡では 縁につふつぶの列が見えない という事実に気づく。

ここから、光学顕微鏡では「透けて見えている」わけだから、内側につぶつぶの列があると理解し、
キートケロス属の休眠胞子では、「下の器の外側につぶつぶの列が一列ある」ことが特徴であるという突破口を発見する。

これにより、修士・博士課程の5年間で分類した85種のケイソウ化石を分類し、うち69種が新種であった。
そしてこれにより、キートケロス属の化石分類が可能となったのである。

こうして、誰もなしえなかった「キートケロス属の化石分類」という武器を手にした著者は、
北極で深海底コアを採取するボーリング調査にも参加することになる。

本書は、こうした著者の研究人生を、簡潔な文章と、様々な図、写真で紹介するもの。
小学生向けだろうが、テーマ、内容ともに、
大人が読んでも十分楽しめる。

特に、キートケロス属が増加した約3400万年前が、
始新世(約5580万年前~約3390万年前)と漸新世(約3390万年前~約2300万年前)の境であり、
この時代は、海流ができたり、
歯を持つ原始クジラからひげクジラへ急激に進化であることを併せて考えれば、

ケイソウ増加→オキアミの仲間が増加→原始クジラからひげクジラへの進化?

というシナリオは、とても興味深い。

約1mm未満の生物の歴史を丁寧にたどることで、
地球環境と生物進化の一端が理解できるのだ。
生物進化を研究する醍醐味と言える。

本書の全ページ左上には、ケイソウ化石の著者スケッチが挿入されている。
使い古された言葉だが、その造形の妙には驚かされるばかりだ。

【目次】
はじめに 大昔の生きものの姿を伝える「化石」
第1章 ケイソウとは、いったいなにもの?
第2章 お休みケイソウに名前をつける
第3章 ついに完成した分類
第4章 「地球の時間のものさし」を使う
第5章 北極からのレポート
第6章 北極についての新発見
第7章 研究者たちとの一か月
おわりに 地球の過去と未来をのぞくタイムマシン
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