ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

コメットハンティング 新彗星発見に挑む  

コメットハンティング 新彗星発見に挑む
えびな みつる



小学校から中学校にかけて、星を見ようとしていた時期がある。
手元にあったのは、藤井旭氏の「星雲・星団ガイドブック」、
野尻抱影氏の「新星座巡礼 (中公文庫BIBLIO)」、
山川静氏の「ギリシャ神話」。
ラインナップから分かる通り、星座のロマンに惹かれての星空だった。
また、自宅が本屋だったこともあり、雑誌「天文ガイド」を読むこともできて、有り難いことに反射望遠鏡を買ってくれたこともあって、しばらく夜空を見ていた。

ただ、残念ながら小・中学生の独学。
メジャーな星座は何とか覚えたものの、望遠鏡では月を見るだけ。
意味もわからず星を見ても、小さな光の点が見えるだけで、いつしか星空から遠ざかった。
今思えば、僕は星よりも星座に惹かれていたのだろう。

だが、星の世界への興味を失ったわけではない。
むしろ、「楽しむことすらできなかった」という悔しさが残っている。

たから、インターネット上で美しい星空や、日食を見せてもらうと、子供の頃の憧れが叶えられたようで、とても嬉しい。
(主に星空は「星と写真の部屋」、例えば「星」カテゴリ、日食は「M氏の幸福研究室 ~a Scientist's Life in the Voynich lab.~」、例えば「取り敢えずの日食画像集@2013.11.03、於アカンヨ小学校校庭・ネビ・ウガンダ」で楽しませてもらっている。)

ところでその頃、「天文ガイド」には「反射望遠鏡の作り方」が載っていた記憶がある。
こんなものが作れるんだ、という驚き。
そして、自作の反射望遠鏡で、何を見ているんだろうと疑問に思った。

その中の何人かは、彗星を探していたのだ。

「池谷・関彗星」という名前は何となく見た覚えがある。
また、「百武彗星」も話題になった。
これら彗星の名前は、発見者の名前である。
すなわち、これらの彗星を発見したのは日本人ということだ。
本書によれば、彗星に名前が付いた日本人は50人程もいて、これほど多くの人々が彗星を発見している国は、実はとても珍しいという。

その発見は、偶然ではない。

自作の反射望遠鏡や、様々な工夫を凝らした屈折望遠鏡。
アマチュアだから、探すのは仕事が終わって以降。
探索に適した夜、自宅で、あるいは観察に適した場所まで出かけて、夜空を探す。
眼視探索を行う人。
冷却CCDを用いて、パソコン上で彗星を探す人。

彼らに共通してるのは、「見つけよう」という欲ではなく、「探すことを楽しむ」ことだ。
そうした、彗星を探す人々を、コメットハンターと呼ぶ。
とても素敵な言葉だ。

本書は、その日本が世界に誇るべき、コメットハンター列伝である。
登場するのは、20人(19人のインタビューと、故百武氏)。
実績が示す通り、その手法は極めて高度で、それぞれ独創的だ。
だが、その多くはアマチュアであり、限られた時間を工夫しながら(もしくは情熱によって)探索に充てている。

全国のコメットハンターは、いつもはライバルだ。
時には、ほんの数分差で発見することもある。
(例えば1975年10月に発見された鈴木・三枝・森彗星(1975k)。
最初の発見者、鈴木氏から、五人目の発見者古山氏(彗星には最初の3人までの名前が付いている)まで、何と30分の間の出来事だったという。)

だが、一度発見すれば、ライバルは仲間に変わる。
発見した一の情報がハブのような役割の組織・人に伝えられると、全国の熱心な観測者に伝えられ、各地で確認観測が行われる。確認されると、スミソニアン天文台の天文電報中央局へ報告される。

1961年からの10年間、発見された44個の彗星のうち、何と4割以上の19個が日本人が発見したもの。
世界では、「日本の夜空に彗星が現れたら、間違いなく発見される」と評判になったという。

切磋琢磨するライバル、そして仲間がいたからこそ、日本はコメットハンターの国となった。

現在、大規模な組織が、高度にシステム化・自動化された観測機器を用いて、「全天サーベイ」と呼ばれる探索を行っている。かつてのように、アマチュアが活躍できる場は無くなっていきつつあるようにも見える。

だが、2008年に板垣氏が再発見したジャコビニ彗星は、数多の全天サーベイの、わずかな隙間で発見された。
日本のコメットハンターの夢は、まだ絶たれていない。

実際、本書の末尾では、今後の彗星探索の手引きが詳しく説明されている。
全天サーベイの時代にあって、どのような探索が有効か。コメットハンターたちは、次の時代を楽しんでいる。

東洋の島国でありながら、そして幾多の混乱の時代を経ながらも、日本は「コメットハンターの国」として世界に認められている。
物質のみでない豊かさが、そこにはあるように感じる。

本書によって、もしかしたら新しいコメットハンターが生まれ、そして新しい彗星を発見するかもしれない。
本書を読めば、次の、日本人による彗星発見の報が、もっと楽しく、嬉しく感じることだろう。

ところで、本書には「香川県のベテランコメットハンター藤川繁久氏」という記述もあり(p244)、
2002年に工藤哲生氏に1日遅れで彗星を発見し、そのC/2002 X5には工藤・藤川彗星という名がついている(藤川氏の彗星発見は、このC/2002 X5で9個めらしい)。

我が家は藤川氏の在住していると思われる地域とは全く別だが、近くに自宅に天文台を設置している家が2軒ある。
もしかしたら、そこの方もコメットハンターなのだろうか。そう思いながら通り過ぎるのも、楽しい。

藤井旭氏の「星雲・星団ガイドブック」は、「星空が好き、猫も好き」で紹介されている。





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category: 地学

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

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コメント

豆太郎さま

いつもブログ拝見しています。
コメットハンターという言葉と生き方、もっと皆に知られて良いと思いました。
今年の冬は星空を見たいと思っています(寒い夜に眺めるのが好きなのです)。

BIRD READER #- | URL
2014/10/22 21:22 | edit

コメットハンター。ほんとうに素敵な言葉ですね。いつも良い記事をありがとうございます。

豆太郎@ #dtvZeFjQ | URL
2014/10/21 22:34 | edit

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# | 
2014/10/21 09:55 | edit

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