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モグラ博士のモグラの話 (岩波ジュニア新書)  

モグラ博士のモグラの話
川田 伸一郎
【良かった度】★★★☆

モグラ博士のモグラの話 (岩波ジュニア新書)モグラ博士のモグラの話 (岩波ジュニア新書)
(2009/08/20)
川田 伸一郎

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 これもジュニア新書恐るべし、である。
 著者は国立科学博物館の研究員。モグラとはいかなる生き物であり、研究はどこまで進んでいるか、ということを始め、日本のモグラの分類について整理する。また中には著者がいかにしてモグラ研究者となったかの話もあり、読み物としても面白い。中学生頃にこれを読むと、かなれり影響されそうだ。

 さて、モグラである。僕もそれほど出会ったことはない。記憶を手繰ってみると、小学生の頃に死体を発見したことを初めとして、10回も出会っていない。しかし今年、我が家の庭にモグラが侵入し、モグラ道が形成された。それを考えると身近にいる動物である。

 ナガエノスギタケ(モグラノセッチンタケ)は、生き物の世界がどのように入り組んだ関係をもっているかを示す例。
 また分類では、形態、染色体、DNAのそれぞれの手法で、異なる分類の結論が出るとのこと。これはこの前の日本鳥類学会誌にもあったが、分岐途中の複数種について、どのような段階を「種」とするかという問題に関係するのだろう。

 なお著者は、広島県で開催されたモグラサミットが、研究者になったきっかけの一つと語る。

 実はBIRDER誌で「鳥の形態学ノート」を連載している川口敏氏は元々モグラ屋であり、川口氏もこのモグラサミットに参加していたはずだ。リアルタイムでこのサミットの話を聞いていたので、ちょっと親近感が沸いた。


【目次】
 Ⅰ モグラ博士のモグラ紹介 -生態学的モグラ入門-
 Ⅱ 僕がモグラにハマるまで -研究者への道- 
 Ⅲ 世界のモグラを探しに -フィールドワーク入門-
 Ⅳ モグラの体を調べつくせ! -分類学入門① 形態分析-
 Ⅴ モグラの来た道 -分類学入門② 染色体・DNA分析-
 おわりに
 【付録】世界のモグラ種名一覧


【メモ】
P13
・動物の毛は、後ろに向かって斜めに生える。=「毛流」
 モグラは体にほぼ垂直に生える。これによってスムーズに前後に動ける。
P14
・モグラの鼻先=「アイマー器官」 微弱な電流を感知する
P17
・モグラは北海道にはいない。理由は不明。
P18
・アズマモグラ 関東以北 約17cm
・コウベモグラ 中部以西 約20cm
・サドモグラ  佐渡島のみ
・エチゴモグラ 新潟 サドモグラに近縁
・センカクモグラ 尖閣諸島の魚釣島のみ。1匹のみ採取

身体の大きいコウベがアズマを追いやっている状況。

P30
・モグラの巣について調べた研究者 相良直彦氏=キノコの専門家
 ナガエノスギタケ=モグラの巣に近い地下数十cmの糞場から、「長い柄」を伸ばして生える。
 このキノコは、モグラの糞とブナ科の樹木が両方揃ったときに初めて菌糸を伸ばす。
 モグラの糞に含まれるアンモニア成分を分解。 
 相良氏は「モグラノセッチンタケ」と呼んでいる。

P36
モグラは人工飼育下での繁殖事例はない。

P37
モグラは1度に3~6匹産む。子どもが成長すると、母親は追い出す。この時期が分散期で、子モグラは地上に出て新しいすみかを探し回る。この時期が唯一地上でモグラを見る時期。

P40
できたばかりのモグラ塚は凸凹。

P48
モグラは、科に属する全ての種で、一度も飼育下での繁殖に成功したことがない珍しいグループ。

P78
筆者がモグラ屋になったキッカケのひとつ。
1997年の広島県比和町(現・庄原市)の町立自然科学博物館(現・庄原市立比和自然科学博物館)で開催された「モグラサミット」。この町の自然史研究家の湯川仁氏が収集した国内外のモグラの標本がある。

P142
・1960年頃までは、現在の四種の日本のモグラは同種と考えられていた。

P153
・モグラで非常に重要なのは、歯の数。モグラ科で一番多いのは44本、ヨーロッパのモグラ。
 日本のモグラはほとんどが42本。

P155
・歯の磨耗により齢査定。乳歯が生えた後、独立して行動するようになるまでに永久歯。その後は生え変わらない。だいたい4段階で、モグラの寿命は3~4年程度。ただし別の方法で齢を調べた研究者は、1個体だけ5歳のものを見つけている。

P162
・哺乳類なので、モグラも耳小骨は3つ(アブミ骨、キヌタ骨、ツチ骨)。
 ただし耳小骨の形は、どんな、どのくらいの音を利用しているかによって変わる。
 例えば日本のモグラと中国のモグラでは大きく異なる。この中国のモグラ(ニオイモグラ)は、砂漠に棲む。もしかしたら昆虫を採餌しているのではないか。

P166-
台湾のモグラ=台湾北西部の平野にいるタカサゴモグラだけでなく、山地から南東部に「ヤマジモグラ」がいる。ヤマジモグラの記載は筆者。

1985-1945頃、鹿野忠雄と岸田久吉が台湾の自然誌を研究。
鹿野が採取し、日本の岸田が台湾の高地で捕獲したモグラを見て、タカサゴモグラとは違うと気付き、「ヤマジモグラ」(「ヤマジヒメモグラ」というのものある)と書いているが、記載はしていない。
そこで筆者は、Mogera kanoana と記載。kanoanaは鹿野への献名。和名は岸田を尊重した。

P172
分類には、形態学的な手法のほか、筆者は染色体、DNA方法を採用している。
種によっては全部結果が異なる場合もある。
アカネズミ:
 形態では、日本列島アカネズミと三宅島のアカネズミ。
 染色体では、中部地方より東が48本、西が46本の2グループ。
 DNAは、検査部位にもよるが、さらに異なるデータ

P184
日本のモグラ
単腕性の染色体を八組持つコウベモグラ 最も古い
 →両腕性への変異が進み、
単腕性の染色体を七組持つアズマモグラとエチゴモグラ、
さらに単腕性の染色体を四組しか持たないサドモグラに分岐した、か。


P185
モグラは、北半球にしかいない。
北半球でも、温帯にしか分布していない。最も南方なのはマレーシア。熱帯だが、このモグラが生息しているのは1,000mを超える山で、比較的温暖で降水量も多い。

なぜ熱帯にいないか?
 熱帯は常緑のため、落ち葉が少ない。あってもすぐに分解され、土として堆積しない。そのため土壌が非常に硬い。

P202
センカクモグラ
比較的標高が高い山があって、湿潤であるため。しかしヤギによる植生破壊により、危機的状況にある。


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category: 哺乳類

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