ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

波紋と螺旋とフィボナッチ: 数理の眼鏡でみえてくる生命の形の神秘  

波紋と螺旋とフィボナッチ: 数理の眼鏡でみえてくる生命の形の神秘
近藤 滋




生物の形や模様が、なぜそのようになっているか。
ごく基本的な問題だが、それに的確に答えることは難しい。

「適応による進化」という答えは正しいが、それは実は一部分しか回答していない。
進化は、単純に言えば、突然変異で生じた形質を維持し、普遍化するシステムだ。

形や模様が種として固定化される前には、様々なバリエーションがありうる。
どの形・模様が基本型で、どのようなメカニズムバリエーションが発生するのか。

例えば貝の仲間だ。

昔よく海で拾った巻き貝-キサゴ、ツメタガイ、シドロガイなど-は、
平たいか塔のような形かという違いはあったが、巻きの先端は突出し、一方は凹んでいた。

ところがアンモナイトの化石を見ると、同じ巻き貝でも突出・凹みはない。

さらに「異常巻きアンモナイト」といわれるニッポニテスを知るに至っては、
なぜ同じ貝殻を形成するのに、こんなに異なるのかが理解できなかった。
異常巻きアンモナイト2


異常巻きアンモナイト1


そして二枚貝だ。巻貝とは一見して異なるこの形は、巻貝のバリエーションなのか、それとも全く別のシステムで生じた形なのだろうか?

また、現生の動物で言えば、例えばウシやヒツジの角。
それらが維持され、大きくなるのは、性淘汰によるものだろう。
しかし、なぜあのような円錐形や、一部は巻いた形なのだろうか?
これらの形が維持したり、巨大化することについては進化で考えるが、
そもそもこの角の形はどのようなメカニズムで決定しているのか、という問いには、
進化だけでは理解できない。

一方、生物の模様でも、
熱帯魚のカタログを見ていると(飼ってはいないが見るのは好きである)、
底生のプレコの模様が、同じ2色模様のくせに似ていないことに気付く。

Hypancistrus_zebra4305
"Hypancistrus zebra4305" by Birger A - 投稿者自身による作品. Licensed under CC 表示-継承 3.0 via ウィキメディア・コモンズ.

Bristlenose_Catfish_700
"Bristlenose Catfish 700". Licensed under CC 表示-継承 3.0 via ウィキメディア・コモンズ.

同じグループである以上、たぶん模様形成のメカニズムは類似してはずだ。
でも、なぜこうしたバリエーションになるのか、全く想像できなかった。

本書は、そうした生物の形や模様について、それらが形成されるシステムを、
明解な理論をもって教えてくれる。こんな本を求めていた。

キーワードは、タイトルにもある波紋、螺旋、フィボナッチ数列。

上記の現生の巻き貝と通常のアンモナイト、ニッポニテスは、大きく形が違うのだけれど、
実は「螺旋」形成を根本原理としている。そのパラメータを少し変化させるだけで、
様々な「形」が形成されるのだ。

そして、ニッポニテスの「異常巻き」は、
このアンモナイトの「生態」と、「螺旋」形成が密接に関係して成された必然の形であるという。

このメカニズムの解説は、ものすごく鮮やかで、シンプルで、美しい。


一方、プレコの模様、そしてシマウマの縞模様は、
「チューリング波」といわれる反応拡散波の理論をもって、これまた鮮やかに説明される。
反応拡散波って難しそうだが、著者によるシンプルかつ的確な説明により、
多くの方は直感的に理解でき、そして納得できるだろう。

そして最後のフィボナッチ数列は、植物の葉が生じる間隔がなぜフィボナッチ数列になるのか、という点を説明する。

どの項目も、基本にあるのは美しいモデルだ。

そのモデルによって、様々な形や模様が形成される。この段階では、全ての形・模様は中立的だ。

そこに環境選択や性選択などの適応圧がかかり、特定の形や模様が維持された種が形成される。これが進化だ。

その結果を、僕らは見ているに過ぎない。

進化のメカニズムはとても面白いが、
本書は、進化論の本だけでは抜け落ちてしまう生物の素晴らしいメカニズムを教えてくれる。

非常に軽やかな文章で、各章も短いながら、込められている情報量は恐ろしい可能性を秘めている。

ぜひ、一人でも多くの方にお読みいただきたい。

【目次】
1 育てよカメ、でもどうやって!?
2 白亜紀からの挑戦状
3 シマウマよ、汝はなにゆえにシマシマなのだ?
4 シマウマよ、汝はなにゆえにシマシマなのだ?(解決編)
5 吾輩はキリンである模様はひび割れている
6 反応拡散的合コン必勝法
7 アメーバはらせん階段を上ってナメクジに進化する?
8 すべての植物をフィボナッチの呪いから救い出す
9 宝の地図編
10 お宝への旅編

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category: 進化論

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