ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

地球の声がきこえる 生物多様性の危機をさけぶ動物たち  

地球の声がきこえる 生物多様性の危機をさけぶ動物たち
藤原 幸一



RARE National Geographic Rare: Portraits of America's Endangered Species ナショナル ジオグラフィックの絶滅危惧種写真集 (P-Vine Books)」 (レビューはこちら)は、絶滅に瀕している生物を、「静」の写真で描いたものだ。
本書は、「動」の写真が持つ力を存分に生かした一冊である。


ペンギン、サンゴ礁、シロクマ、ホエザル、リスザル、アザラシ。
「これらの動物が絶滅しないよう、自然を守ろう」という映像を見ることが多い。

ただ、これらの動物の背景は、手つかずの自然のであることか多いため、
「こうした無垢な自然に生きる動物を守るために、環境を守らなきゃな」とは感じるものの、
切迫感は、生じない。
背景となった自然環境が、無意識のうちに「まだ危機は及んでいない」と過小評価させるのだ。

しかし、実際は異なる。
おそらくこうした誤解を打ち砕くため、トップは最も人里離れた地に棲み、
雪と氷だけの世界にいるというイメージが固定している南極のペンギンである。

最初の写真は、ペンギンが太腿から出血している。
「針金が刺さって怪我をしたアデリーペンギン」とのキャプションが添えられている。

左側のページには、お馴染みの白い大地を背景にしたペンギンの親子。

しかし次のページにある写真には、
「錆びたワイヤーの塊を不思議そうに眺めるアデリーペンギン。彼らの繁殖地はゴミ山の後ろにある。」
というキャプション。
その次のページは、南極のゴミ山。その間を歩くアデリーペンギンの写真だ。

「まだ危機は及んでいない」というイメージは、完全に消滅する。

もう世界中に、人間の汚染が及んでいない土地など無い。
人類の経済活動は、見事なまでに地球上の全ての生物に影響を与えるに至ったのだ。

猶予はないという現実を、本書は突きつける。

油にまみれたペンギン。漁網で溺死するアザラシ。氷が早く溶けるため、泳げないうちに海に投げ出されて溺死するアザラシ。そのために餌が激減したホッキョクグマ。

また一方では、人間が勝手に移動させることで攪乱される生物がある。

ペットのために群から離されたサル。
外来種として日本でも分布を拡大するタイワンリス。
日本でペットにするために乱獲される東南アジアの甲虫。
外来種のギンネムの葉を食ったために新陳代謝が阻害され、毛が抜け、寒さへの抵抗力や虫への防御を失いつつあるキツネザル。

これらを、「たかが動物」と思うことは、たやすい。
しかし、この狂気じみた攪乱は、必ず人間にも戻ってくるだろう。



ところで、本書でも、日本でペットにするために昆虫が乱獲されていることが紹介されている。
確か、以前は植物防疫法で昆虫の輸入はかなり制限されていたが、
「そもそも穀物を食害しない昆虫」は、「日本の農作物にダメージを与えない」という理屈で、
規制が緩和された。
その結果、以前は図鑑でしか見られなかった外国のカブトムシ・クワガタムシが輸入可能となった。

本書によると、約550種も国内で外国産カブトムシ・クワガタムシが流通しているという。

その結果、様々な問題が発生している。

逃げたり捨てられた外国種との交雑による、国内のカブトムシ・クワガタムシへの遺伝子汚染。
外国産クワガタムシに寄生していたダニの国内侵入。
原産地での乱獲。

また本書では、原産地で大量に捕獲するため、
現地の子どもたちが現金収入の方法として、学校にも行かず、児童労働の温床になっていることが指摘されている。

夏になると、大型スーパーで外国産昆虫が販売されている。
それがいかに歪な状態であり、国内外の生態系を破壊しているか、
多くの方が理解することを望む。



【目次】
南極のゴミ山のペンギンたち
喜望峰でヒヒが人間を襲う
最後の恐竜コモドドラゴンの苦境
日本の昆虫ブームが児童労働と環境破壊を生む
北極から海氷とシロクマが消える日
大仏様を悩ませる隣国のリス
オットセイの命を奪う悲しきネックレス
最後の楽園ガラパゴスの憂鬱
マダガスカルから森がなくなる
体内汚染が進むクジラが危ない
身寄りのないサルたちの保護施設
南アフリカのペンギンは油まみれ
地球からサンゴ礁がなくなる
地球温暖化がラクダの運命を変える
オゾンホールとネコの耳
10万頭のアザラシの赤ちゃんが溺死している
ヒートアイランドで生き抜く昆虫たち
世界最大の魚ジンベエザメに迫る絶滅の危機
ワオキツネザルの「禁断の木の葉」
猛暑が南極のペンギンを襲う
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