ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

サンゴの生物学  

サンゴの生物学
山里 清



あるサンゴの識別方法について知る必要があり、専門の方に教えを乞う。
その際、生物としてのサンゴの基礎知識を学ぶのなら、として推薦していただいたのが本書である。

宝石サンゴ、サンゴ礁という漠然としたイメージしか無かったが、おかげで生物としてサンゴを知ることができた。
いくつか、メモしておきたい。

まず、サンゴの種別について。
第一に、サンゴの成長速度は、光合成を行う褐虫藻が、サンゴの組織に共生しているかにより左右される。
サンゴはプランクトンも捕食するが、褐虫藻による光合成産物も成長に利用している。
そのため、褐虫藻が共生する方が成長が早い。

また、褐虫藻が共生するのが造礁サンゴだが、造礁サンゴか否かはそういう生態学的な相違であって、系統分類学的な相違ではない。

褐虫藻が共生するサンゴにとって、当然ながら褐虫藻があるかどうかは、文字通り死活問題だ。
しかし、近年よく聞く「白化減少」は、この褐虫藻が高水温によってなくなってしまう現象である。

著者の調査によれば、サンゴの種類により相違はあるものの、30℃、31℃では徐々に、32℃では急速に褐虫藻を失うとのこと。

サンゴにとって、水温が1℃異なることは重要な意味を持つのだ。

その温度差が、長い歴史時間で影響した結果が、サンゴの分布にも現れている。

太平洋において、サンゴの分布は西高東低であり、西部に多種多様なサンゴが分布する。
その主要因は、太平洋において、赤道以北の海流が時計回りであるため、西部は赤道で温められた海流が流れ込み、また浅海域であるため種分化が促進。そこから暖流となって北上するが、徐々に海水温が下がるため、種数も減少する。

本書によれば、西太平洋全体の造礁サンゴは73属、八重山諸島以北は66属、沖縄以北は59属、九州以北は43属と減少し、新たに加わる属はないという。

そしてベーリング海峡を経て、北極海の冷たい水と混り、北米大陸西岸では北から寒流として南下。
その低い海水温がサンゴの生息の制約となり、太平洋東部の種数が少ない原因となっているという。

このように、ダイナミックな海流によって種分布が左右されているというのは、生物地理学の面からとても興味深かった。

なお、本書で、脊椎動物の骨はリン酸カルシウムのヒドロキシアパタイトだが、
無脊椎動物の骨は主に炭酸カルシウム化合物であること、
その炭酸カルシウムを成分とする鉱物には方解石(calciteカルサイト)、あられ石(aragoniteアラゴナイト)、バテライト(vaterite)という3種があるが、動物のグループによりどの鉱物が骨となっているかは異なる、という。

( 大部分の無脊椎動物の骨は方解石。イシサンゴの骨格はあられ石。
 同じサンゴでも、ヤギ類の石灰石は方解石。貝殻には両方が混在することがある。
 バテライトはホヤ類の骨片などわずかの場合に限られる。)

動物の骨とサンゴ、貝の手触り等が違うのが、そのままこの成分差を反映しているのかどうかは知らないが、そもそも違う物質なのだ、というのは納得できる話だった。

【目次】
1 サンゴという動物
2 サンゴの生物地理学
3 サンゴを支える褐虫藻
4 サンゴの成長と環境
5 サンゴの生殖
6 海底の静かな果し合い
7 サンゴ群集の生態


関連記事
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 刺胞動物

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://birdbookreading.blog.fc2.com/tb.php/422-d1b261bb
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

中の人

アクセス

RSSリンクの表示

最新記事

カレンダー

アクセスランキング

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム