ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

わたしのウナギ研究  

わたしのウナギ研究
海部 健三



ニホンウナギが、IUCN(国際自然保護連合)によって、絶滅危惧種に指定されることになった(2014.6.12)。
日経新聞の報道はこちら

一方、今年のシラス稚魚が豊漁あるという報道が以前あった(例えばこちら)。
土用の丑の日(2014年は7月29日)が近付くにつれ、ウナギの動向はまだまだ話題になるだろう。

素直に統計からみれば、
「ここ数年では豊漁だが、かつての状態からすれば微増に過ぎない」という程度。
むしろ、ここで自制しなければ、天然のニホンウナギは本当に絶滅するだろう。

グラフを見るとよく分かる。
ネットから拾って貼り付けるのも何なので、リンクだけだが、
ご覧いただければ見事な右肩下がりだ。
ナショナル・ジオグラフイックの「ウナギが食べられなくなる日」

今年の豊漁は、これがちょびっと上向いただけに過ぎない。
増加というほどのモノではない。

昨今の状況を見れば、もはや若干の豊漁を喜んで「増えた、捕った、安くなった」という時代でもあるまい。
シラスウナギが増えた→将来のために漁獲量は抑えよう、というのが本来の姿だろう。

しかし、シラスウナギ漁は規制されているとはいえ、
日本全体で、統一的にそうしたイニシアチブが取られているようには見られない。

漁業者やウナギ専門料理屋の死活問題だという面もあるが、ウナギがいなくなれば元も子もない。

そのウナギだが、近年になってやっと産卵場が見つかった。
しかし、まだ謎がある。
本書で、岡山県旭川をベースに著者が追求しているのが、
「具体的に、どのような場所で、何を食って成長しているのか」ということ。
逆に、それすら明確に分からないまま、
ウナギの消費量の増加にあわせて、成魚とシラスウナギを取り続けていたという事実に驚く。

さて、ウナギは海で産卵し、淡水に入る、というイメージは持っていたが、
実際のところ、1度も淡水域に入らないウナギや、
一度淡水に入って汽水域に降りるもの、しばらく汽水域にいて淡水域へ行くものと様々らしい。

ウナギの生息には、汽水域の方がたくさんエサを食べ、早く、大きく成長できる。
これは、ニホンウナギ、アメリカウナギ、ヨーロッパウナギ全てに共通している。
それなのに、なぜ成長に不利益となる淡水に入るのかは、未だ謎だという。

この点について、近年では、ウナギが競争の少ないニッチに進出しているのではないか、という考えがあるそうだ。ウナギ目の他のウミヘビ、ウツボ、アナゴなどは、言うまでもなく海水性。
ニホンウナギのように淡水に進入するものは、より新しい時代に分化した種らしい。

もしそうだとすれば、
「新天地」であるはずの淡水域への進入路を、河口堰などで遮断し、
生息場所をコンクリートで固めてしまった現在の日本では、
かつての、まだこれらの人工物が無い時代のレベルまでウナギが回復することは、
他の要因(海洋環境、ウナギ漁)が解決しても不可能ということになる。

危機に瀕している、というのは誇張ではない。
現在の個体群から少しでも増加させなければ、将来本当に天然ウナギは消えてしまうだろう。

養殖ウナギという道は拓けるかもしれないが、それはあくまでも商業構造での話。
日本の生態系からは、ニホンウナギが消滅しかねない。

既に、旭川ではウナギの主なエサはアメリカザリガニであり、
外来種であるアメリカザリガニ侵入以前に何を食べていたのかは、既にわからない。

ここから更にウナギが消滅すれば、日本の川の生態系はどうなるのか。

どうしてもウナギは漁業・商業の場で論じられがちだが、
このような状況に至った今、
必要なのは、野生生物として、生態系の面からの評価・保護体制が、漁業・商業を規制するシステムだろう。

でも正直なところ、日本では非常に困難だと思う。
「川からウナギはほとんどいなくなったけれど、完全養殖ウナギの技術が確立して良かったね」というのが
数十後の姿なのではないか。



【目次】
第1章 ウナギを研究する
第2章 ウナギ研究のいま
第3章 研究の現場から
第4章 これからのウナギ研究―ウナギを守るために
関連記事
 このエントリーをはてなブックマークに追加

category: 魚類

thread: 読んだ本の紹介 - janre: 本・雑誌

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://birdbookreading.blog.fc2.com/tb.php/415-00a829f9
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

中の人

アクセス

RSSリンクの表示

最新記事

カレンダー

アクセスランキング

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム