ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

コウモリの謎 哺乳類が空を飛んだ理由  

コウモリの謎 哺乳類が空を飛んだ理由
大沢 啓子,大沢 夕志



「身近な野生動物」と言えば、何だろうか。
人によっては、イノシシやサルかもしれないし、僕のように野鳥を挙げる人も多いだろう。

一方で、実は多くの方の身近にいながら、存在すら意識されていない野生動物も多い。
モグラ、ネズミ類、そしてコウモリだ。

本書に掲載されているグラフで哺乳類の種割合をみると、ネズミ目42%、コウモリ目21%、モグラ目8%、サル目7%、ネコ目5%、それ以外17%と、実はコウモリは非常に多い種を占めている。
しかも、1995年には約1000種と言われながら、2014年時点では約1300種とされているように、今なお新しい種が発見されているらしい。

その多様性の秘密は、「夜間の空中」という、とても潜在的広がりのあるニッチに進出したためだろう。

一口に空中といっても、開けた場所、森の中、崖地等、様々な場所がある。
そして餌も、昆虫、フルーツ、蜜等、いろいろある。
世界中の夜の空において、これらの、様々な組み合わせを支配するコウモリ。
いったい、どんな生物なんだろうか。

本書は、そのコウモリについて、愛ある眼差しで紹介している。
基本的な分類、形態の特徴、そして超音波によるエコーロケーション。
それぞれについて、現在分かっていること、まだ不明なことを丁寧に教えてくれ、
漠然としたイメージでしか無かったコウモリが、「生物」であることを再認識させてくれる。

例えば、超音波によるエコーロケーションについては、次のようなことが紹介されている。

まずその周波数の高さについて。
人間の聴覚は、20Hz~20kHzまでしか聞こえないが、例えばアブラコウモリは最高45kHzのエコーロケーションを発する。
もちろん、人間には聞こえない。
ところが、猫は60kHzまで聞こえるため、アブラコウモリのエコーロケーション音は聞こえているはずだ、という。
そうすると、夜間に猫がピクッと反応し、窓の外を見る行動も、
実はコウモリのエコーロケーションに反応しているのかな、と生物学的に推測できる。

次に、その周波数の使い分けについて。
高い音ほど小さなモノを識別できるが、空気に吸収されやすいため、探索範囲は狭い。
低い音だと小さなモノは識別できないが、遠くまで識別できる。
そうした特性をふまえ、開けた場所で飛び交うコウモリは低い周波数を出し、スピードが出せる細長い翼を持つ。
一方、森の中などを飛び交うコウモリは高い音を出し、素早く方向転換しやすい幅広い翼を持つという。

さらに、それによる形態への影響について。
コウモリと言えば、可愛い顔をしたタイプと、鼻のまわりがヒダになっている不細工な(失礼)タイプが思いつくが、鼻の周りに鼻葉(びよう)という突起がある種は、鼻からエコーロケーションの音波を出すとのこと。

そして、他種に及ぼす影響について。
コウモリの餌になる蛾の中には、コウモリの超音波を聞くと、自分も4000回/秒の超音波を出して攪乱する種がいたり、また鱗粉がエコーを戻りにくくする種がいるという。

こうして、エコーロケーション一つを取っても、様々な発見がある。

また、野鳥との関係においては、
昆虫食と思われていたヒナコウモリ科の一部の種が、季節によっては鳥を食べていることが明らかとなり、
2000年代以降、スペインやイタリアのヨーロッパヤマコウモリ、インドや中国のイブニングコウモリ、日本のヤマコウモリなどで、コウモリの糞から鳥の羽根や骨が出てくるという事実が明らかになっているとのこと。

一方で(これは本書には書かれていないが)、
ハンガリーの洞窟では、シジュウカラがヒナコウモリ科のコウモリを襲って食べるという行動が、1995-96年の冬と、2004-05の冬、2005-06の冬に複数回観察されているという(BIRDER,2010年2月号)。

昆虫食のコウモリと野鳥が、互いに襲っているという事実。
結局、まだまだ身近な生き物の生態すら分かっていないということだ。

夏の夕方、ねぐらに集まるツバメを見ていたら、いつのまにかコウモリが混じることも多い。

また数年に一度、コウモリの死骸に出会うが、それはスズメよりも小さくて、華奢で、世間一般のイメージとは全くかけ離れた可愛さを感じる。

もっとじっくり見てみたいと思うものの、薄暮の時刻から空を飛び交うコウモリを観察することは難しい。

でも、だからといって放置しておくには、この生き物は魅力的過ぎる。
もっと意識して、コウモリという生物に注目していきたい。

【目次】
1章 コウモリはいったい何者!?
2章 なぜ空を飛べるのか?
3章 闇夜を制覇したエコーロケーション
4章 昆虫、植物とのふしぎな関係
5章 コウモリの生活
6章 こんなところで観察しよう

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