ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

ハチはなぜ大量死したのか  

ハチはなぜ大量死したのか
ローワン・ジェイコブセン
【こんな状況は知らなかった度】★★★☆



 2006年秋から2007年にかけて、北半球で養蜂されているセイヨウミツバチの約4分の1が消失した。
 巣には死体も残っておらず、死んだかどうかもわからない。いえることは、「突然いなくなった」ということだけ。
 蜂群崩壊症候群Colony Collapse Disorder=CCDといわれるこの現象は、当時大きくニュースで取り上げられていた記憶がある。
 その現象を追いながら、現代の養蜂ビジネスと果樹栽培ビジネスが抱える問題を明確にしたのが本書。

 アメリカでは既に蜂蜜栽培のための養蜂はビジネスベースには乗らなくなっている。代わりに盛んになっているのが受粉媒介ビジネスだ。大規模・単一栽培を行なうことで、果樹園の周囲の受粉昆虫は消滅。そこで受粉時期には、養蜂されたセイヨウミツバチを大量に導入することになった。
 CCDによるセイヨウミツバチの消滅は、この受粉ビジネスの担い手が消滅したということだ。それはリンゴやアーモンドなど、虫媒果樹が受粉できなくなることであり、果実がとれなくなることである。世界の食糧事情が一変する危険性があるのだ。

 CCDそのものの原因は、不明だという。ネオニコチノイドやイミダクロプリドなどの殺虫剤説や、遺伝子組み換えしたトウモロコシの花粉を餌にしているためという説など、様々な説がある。しかしどれもその可能性はあるがそれが全てではない、という。農薬の複合汚染、複数世代にわたって蓄積された問題など、色々の要因がからみあっているようだ。

 また筆者は、同時に現在の養蜂用の巣板で作られる巣房は直径5.4mmだが、このサイズで規格化されたミツバチはダニに対する行動が妨げられることも伝えている。4.9mmの小型巣房ならダニを攻撃できる。しかも自然の巣は、5.4mmも4.9mmも、様々なサイズが混在している。これによって、自然状態ならばダニに対して適切な対応がとれていたという。人間が養蜂を行なう歴史の中で、最も子効率が良い5.4mmに統一したことが、潜在的なダニ耐性の低下を導いていたのだ。
 人間は様々なサイズの巣房を作るハチを不器用と思っていたが、そこのも理由があった。
 
 CCDがそうだ、というつもりはないが、人間が「分かったつもり」で効率化を進めることが、潜在的なリスクを増加させていることが多いようだ。そして現在、それらの蓄積されたリスクが複数相まって、様々なかたちで爆発している。
 
  
 本書はCCDを題材にしているが、実際は現在の効率性・経済性を追求した世界が、どんなに危ういバランスの上にたっているかを明らかにする重要な一冊である。

 今のところ日本ではCCDの爆発的な蔓延はないようだが、本書を読み、その日が来ないよう、小さなところからでも意識を変化させていきたいものだ。
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category: 昆虫

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