ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

自然科学、歴史、ノンフィクション等の読書記録

武装解除 -紛争屋が見た世界  

武装解除 -紛争屋が見た世界
伊勢崎 賢治



職業は武装解除」(レビューはこちら)の著者である瀬谷ルミ子氏が、アフガニスタンで一時期一緒に仕事をしていたのが本書の伊勢崎氏。
DDR、兵士の武装解除(Disarmament)、動員解除(Demobilization)、社会復帰(Reintegration)に日本人が関与しているということも驚きだったので、それ関連の本を探していたら本書に巡り会った。

著者である伊勢崎氏は、瀬谷氏にも勝る経歴の持ち主である。
その経歴をどう整理すべきかもよく分からないが、インド留学中にスラム住民を組織化し、デモ、法廷闘争、公共投資などを要求する住民活動を主導するプロとなる。その結果国外退去。
その経験を活かし、今度は国際国際NGOに参加し、シエラレオネでの公共インフラ整備に携わる。
今度はその活動を見込まれて、今度は東チモールのPKOミッションの責任者に。そこでDDRを実践し、今度はシエラレオネでのDDR責任者に。
そしてアフガニスタンでもDDRを指揮と、日本人にはたぶんあまり知られていないが、想像もできない世界で活動している。

瀬谷氏がNGO畑を中心に、また自ら選択的にDDRの道に進んできたのとは異なり、伊勢崎氏は「住民統治」のプロとして進み、その結果、紛争地における住民統治の出発点であるDDRのプロとなったと言えそうだ。

その点、国連PKOのような大組織の統治機構の仕組み、その中での大規模なDDRなどの経験が語られており、瀬谷氏とはまた異なる視点を得ることができる。

しかし、それでもやはり(というか「だからこそ」と言うべきか)、現実を見る目は厳しい。
伊勢崎氏は断言する。

兵士の復員は、内戦時に虐殺に加担した犯罪者へ恩恵を与えるのも、内戦終結のためにやむをえないと大衆が寛容さを保っている短時間に行わなければならない。(p111)



世間はDDRにおいて、武装解除→動員解除→復員事業という理想的な流れを求めるが、そう簡単に収まるものではない。復員中の元戦闘員は、常に危険集団であり続ける。

日本人は武装解除、和解というと何となく相互理解も完了、仲良く和解というイメージを抱きがちだが、
そんな夢物語はない。
一歩間違えば、再び争いが始まりかねない。(p126)


また、武装解除に合意しても、恒久的な平和と安全、将来への豊かさが保障されるわけではない。

兵士が復員することは、一般大衆と同じ「貧困」に統合され、同じ経済的競争に参加することだと明確に理解させる必要がある。(p111)



こうした状況の中で、どのように効果的かつ適切なDDRを行うか。
そのノウハウを持つプロ、伊勢崎氏や瀬谷氏がいる日本は、やはりこの分野で世界をリードできる可能性があるだろう。

また、本書で強く指摘されているが、紛争国の「法と秩序」の回復のためには、国家の警察力と司法インフラの整備が不可欠であるということ。
具体的には警察署や留置場、刑務所等が必要だが、こうした「体制系」インフラは支援されにくいという現実だ。

確かに、様々な募金でも学校や病院などの「癒し系」インフラを対象としたものが多い。

しかし現実には、「小学校よりも刑務所の方が大事」ということが、日本でも理解されるべきだという主張には、目を啓かれた。

確かに、紛争終了直後の貧困国では、治安の回復・維持が最重要である。

安全な社会でなければ、病院などいくら作っても足りない。
子どもたちが安全に歩ける環境でなければ、学校も役に立たない。

病院建設、学校建設なども良いが、こうした現場に立脚したニーズを見失わないようにしたいものである。


【目次】
・魑魅魍魎の日本のNGO業界
・政治家なんて恫喝させておけ
・紛争屋という危ない業界
・後方支援は人道支援ではない
・米国が醸し出す究極のダブル・スタンダード
・テロを封じ込める決定的解決法
・和解という暴力
・紛争解決の究極の処方箋?――DDR
・多国籍軍の体たらく
・戦争利権としての人道援助
・日本の血税で買ったトラックが大砲を牽引する
・改憲論者が護憲論者になるとき

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