ちょっとヨクナレ ~読書と日記~

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光る生物の話  

光る生物の話
下村脩



著者下村脩氏は、オワンクラゲの緑色蛍光タンパク質の発見により、2008年(平成20年)にノーベル化学賞を受賞した。
本書はその下村氏が、オワンクラゲだけでなく、様々な「光る生物」について、その研究状況や発光メカニズムを紹介するもの。

構成としては、まず生物発光の研究概要を紹介し、続けて第3章でその仕組みを解説。
まず、ベーシックな生物発光であるルシフェリン-ルシフェラーゼ反応について説明される。
ウミホタルなどが利用するこの反応が、生物発光の全てと考えられていたところ、
下村氏はオワンクラゲの研究から、既知のルシフェリンでもルシフェラーゼでもない発光物質、セレンテラジンを発見(この時、あわせて緑色蛍光たんぱく質GFPも発見)。
この後、他の発光生物の研究の進展により、セレンテラジンをルシフェリンとして用いるセレンテラジン―ルシフェラーゼ発光など、様々な生物発光のメカニズムが発見されている。

こうして研究史を見ると、ルシフェリンではない生物発光物質「セレンテラジン」の発見が、いかに生物発光研究でエポックメイキングだったかが分かる。

一方、ノーベル賞を受賞する理由となった「緑色蛍光たんぱく質GFP」は、その医学面での応用から価値は非常に高い。
例えば蛍光タンパク質を特定タンパク質のマーカーとすれば、容易にそのタンパク質を含む細胞を識別できる。そのため、2000年頃からその応用は爆発的に色がり、今は世界中の大学、研究所、病院などで用いられている。現在の生化学では不可欠の技術である。
しかしながら、本書でも「蛍光たんぱく質の応用」として取り上げられているものの、それはp184-188に過ぎない。下村氏にとっては、生物発光メカニズム研究の過程で「ついで」に見つかったものというのが如実に示されており、おもしろい。

それにしても、世界の発光動物のほぼ全ては海洋か陸上に棲み、その90%以上は海水中に生息するという。
実は淡水中に生息するのは、2種類の日本産ホタル(ゲンジ・ヘイケ)の幼虫とニュージーランド北島に生息するラチアという笠貝だけという。
なぜ海水中に生物発光種が多いのか。
生息環境などをふまえれば、なかなか面白い話になりそうだが、まだ定説はないようだ。

本書は生物発光メカニズムに特化しているが、そうした生物発光と生物進化の観点からの本も読んでみたい。

【目次】
はじめに

I 生物の発光は冷光である
Ⅱ 生物発光の様式について―細胞内発光と細胞外発光の違い
Ⅲ 生物発光の科学をどのようにして研究するか
Ⅳ 生物発光について今までに科学的に判っていること
 1.ホタルの発光
 2.発光バクテリア
 3.ウミホタルルシフェリン発光系
 4.オワンクラゲの発光の研究
 5.セレンテラジン―ルシフェラーゼ発光系
 6.セレンテラジンを含有するフォトプロテイン発光系
 7.前記ルシフェリン以外のルシフェリンとルシフェラーゼによる発光系
 8.セレンテラジンを含まないフォトプロテイン発光系
 9.以上のどの発光系にも属しない発光キノコ類
V 光を放つ科学反応
Ⅵ 生き物が光を放つ目的―なぜ光るのか
 1.防御的発光
 2.捕食目的の発光
 3.交信手段としての発光
 4.繁殖の促進
 5.その他―目的不明の発光
Ⅶ 発光生物の種類と特徴
 1.発光バクテリア
 2.キノコ類
 3.発光動物
Ⅷ 生物発光の応用
 1.ホタル発光反応を利用したATPの分析
 2.イクオリンによる細胞内カルシウムの可視化
 3.ルシフェリン―ルシフェラーゼ系を利用したイメージング
 4.蛍光たんぱく質の応用
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